サプライズ・告知
俊が話し始める。
「皆、聞いてくれる。」
高崎「何だのろけ話か?」
俊「皆に言っておくことがあります。俺、癌が見つかって、余命半年くらいと医者に言われている。」
皆が一気に静かになる。
俊「実は、先月の練習帰り、ちょっと頭に異変を感じて、月曜日に病院に行ったら、そのまま入院になった。検査の結果、膵癌、脳転移が見つかった。手術も出来ない状態らしい。理佳にも話して、二人の今後も真剣に話した。そして、俺達は結婚を選択しました。両親にも祝福されて、きちんとしたプロポーズは、今日しようと思っていたので、練習が終わったら籍を入れようと思います。
そして、新居もいつでも住める様にしてあるので、今日から二人で住みます。黙ってて、ごめんなさい。」
皆は何が何だか、状況が飲み込めない様子である。
理佳が涙を流しながら、声を震わせて話し始める。
「皆、黙っててごめんね。まさか俊が・・」
声が出ない。
理佳の姿を見て、この話が本当の事で、俊が癌に侵され、そして死期が近い事を理解した。
朱莉「こんな事って・・・」
篠里の胸に顔を埋める。
高崎は、声も出ない様子である。
俊「ごめんなさい。こんな空気作っちゃって。」
荒井「俺、見守る事しか出来ない。出来る事があったら、何でも言って」
俊「最後のワガママ言っていい?出来る限りhopeに参加していいかな?」
高崎が涙を溜めて
「当たり前だ。」
と大きな声で答える。
俊「それと病人扱いしないでくれると、もっと助かる。」
高崎「分かった。皆もいいよな。」
俊「じゃあ、朱莉さんもいる事だし、文化祭でやった上を向いて歩こうでも演奏しようか。」
高崎「俺がリーダーだ。仕切るな」
ちょっとだけ空気が和む
高崎「じゃあ、上を向いて歩こう演奏するぞ」
皆で上を向いて歩こうを演奏する。
*************
上を向いて歩う
涙がこぼれないように
思い出す 春の日
一人ぽっちの夜
上を向いて歩こう
にじんだ星をかぞえて
思い出す 夏の日
一人ぽっちの夜
幸せは 雲の上に
幸せは 空の上に
上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
泣きながら 歩<
一人ぽっちの夜
思い出す 秋の日
一人ぽっちの夜
悲しみは星のかげに
悲しみは月のかげに
上を向いて歩こう
涙がこぼれないように
泣きながら 歩く
一人ぽっちの夜
一人ぽっちの夜
*************
理佳も泣きながら最後まで歌った。
曲が終わり、荒井が慌てて荷物の方に走り出す。
hopeのHPでLIVE映像を流していた事に気づく。
パソコンを取り出し、HP画面を見ると、閲覧者からのコメントが凄まじく入っているのが分かった。
コメントを見る間も無く、ノートパソコンを閉じる。
荒井「ごめん。今日のスタジオでの出来事、LIVEでHPに流してた。」
罰が悪そうに、俊達に向かって謝罪した。
俊「気にしないでいいよ。言って無かった俺も行けないんだから」
と荒井に向かって話す。
理佳「でも、皆ありがとう。本当に今日は嬉しかった。」
朱莉「住む所も決まってるの?」
理佳「うん」
高崎「じゃあ、皆で行こうか?」
俊「婚姻届出してからで、良ければ。」
高崎「場所は?」
理佳が最寄りの駅を伝える。
高崎「今日は練習終わり、2時間後に駅改札口に集合。それまでに、婚姻届出して来る様に。以上」
朱莉が理佳に向かって心配そうに尋ねる
朱莉「本当にいいの?」
理佳「うん」
朱莉「そうか、頑張ってね。既婚者の先輩として何でも聞いてね。それと今日だけど、子供も連れて行っていい?」
理佳「喜んで」




