友の結婚
大学を卒業して1年が過ている。hopeの活動は、月に1回第3土曜日の夜に練習を行なう事となった。
大城さんとの関係は深まり、今では人前でも彼女の事を「理佳」と呼んでいる。
大城さんは私の事を「俊」と呼んでおり、恋人同士の定番の呼び方になった。
今日はhopeの練習日であり、9月で暑さが少し和らぎ、心地良くなった夜道を、理佳と二人でいつものスタジオに向かう。
スタジオに着くと、既に荒井が待合に座っている。
「よう!」
彼が私達に向かって、挨拶をする。
「仕事大変?」理佳が話掛ける
荒井はシステム開発会社に勤務しているので、プログラム作成等に夜中まで残業がある職場である。
ほぼ、平日は時間が無いみたいだ。
続いて星が篠里と一緒に待合室にやって来た。
篠里と星は、卒業後付き合っている。
約束の時間5分前に高崎がスーツを着てやって来た。
高崎「今日は出勤だから、このまま来ちゃたよ。俺はスティックだけだから、良かったよ」
と言いながら待合の椅子に座った。
皆が揃ったと同時に部屋が空き、スタジオの中に入る。
各自セッティングを行っていると
篠里が「皆、聞いてくれ!俺と朱莉 12月に結婚する」
皆が一斉に
「おめでとう」
篠里「お願いがあるんだけど、結婚式で一曲お願い出来ないかな?」
高崎「勿論、皆もいいよね?」
皆が賛同する。
篠里「もう一つ報告が・・・朱莉のお腹には、赤ちゃんがいます」
皆が驚く
大城「予定日は?」
星「2月」
皆がまたまた一斉に「おめでとう」
と二人に祝福した。
高崎「曲は、何がいい?」
篠里「未来予想図2もいいんだけど、ハナミズキがいいなあと思っているんだけど、いいかな」
高崎「hopeアレンジでいい?そうしないとドラムの出番が・・」
笑いながら篠里が「勿論、時間も余り無いので勝手にhope仕様でアレンジした、基本の楽譜作って来た。後は個々でアレンジしてくれるかな?
ただ今回はドラムは普通にして欲しいけど・・」
皆が笑う
高崎「分かったよ。今回は控えます」
皆に楽譜が配られる。
何分か個々に練習をして、軽く流す。
プロでは無いので、めちゃくちゃだったが、各々が感触を得た見たいだった。
あっという間にスタジオの時間が終わり。
スタジオを後にした、
練習終了後は、駅の近くの居酒屋で飲む習慣があり、この日も居酒屋に集まった。
朱莉は、お酒を飲まず会には参加した。
「かんぱい」
高崎の一言で会が始まる。
大学の時からの定番の始まり方である。
篠里と星の馴れ初めを中心に会が進む。
荒井が話し始める。
「皆に報告があるんだけど」
高崎がすかさず「まさか、お前もか?」
荒井「違うよ。」
皆が笑う
荒井「実はhopeのホームページを作ったんだけど、まだ一般公開はしていないんだけど、アップしていいかな?」
と言い、鞄の中からノートパソコンを取り出す。
アップ前のホームページを皆に見せた。
1年の時からの文化祭をビデオで撮ってあり、hopeが今まで行ったライブ映像が、選択して曲ごとに動画が観える仕様になっている。hopeだけのYou Tubuみたいなホームページである。
高崎「おー凄いな」
篠里「このホームページ、映像ばかりでコメントは、無いの?」
荒井「コメント書くの恥ずかしいから、映像だけ選べるホームページにした。」
高崎「荒井らしいな」
皆もホームページ公開は、賛成で早速この場で公開する事となった。
大事なアルバムが出来た様で、hopeの大事な大事な財産が出来た。
楽しい会が終了した。
帰りは理佳と二人で電車に乗る。
理佳の家がある駅で一緒に降りる。
家まで送るのが、一緒に出掛けた時の暗黙のルールとなっている。
家まで15分かかる帰路の間、理佳が話し始める。
「二人幸せそうだね。」
「うん。僕たちも生計が立てれる様になったら、結婚しよう」
「本当に?」
「理佳しか考えられない。今もこれからも」
涙ぐみならがら
「ありがとう。約束だよ」
彼女と見つめ合い、初めて道端でキスをした。
12月結婚式当日
結婚式場に理佳と二人で受付をやる事になっていたため、皆より早く式場に到着した。
ホールのスタッフに受付場所等の説明を受けていると
朱莉がウエディングドレスを着た姿で僕達の所にやって来た。
理佳に話掛ける「やけに早いね。」
理佳「遅れてはマズイと思って、早く来ちゃた。おかげで朱莉と話せて良かった」
朱莉「次は、あなた達だね」
私と理佳がうなずく。
理佳「お腹、苦しくない?」
朱莉「この頃、動きが激しくて困ってる。でも順調だよ」
お腹をさすりながら、理佳が話していると、奥から篠里がやって来た。
朱莉と同じく
「やけに早いね」
同じ言葉を聞き、3人で笑った。
篠里「何で笑ってるの」
私が説明する。
篠里「そう言う事か。次はお前達だな」
また3人が笑う
「もしかして、これも同じ?」
朱莉「でも、今日はよろしくね」
と言い、奥に下がって行った。
披露宴
主賓の話も終わり、友人からのスピーチが続く。
化粧直しがあり、友人からの出し物が再開し、最後はhopeの出番であった。
司会者が
「お互いの友人であり、2人もメンバーの一員であるhopeの演奏です。
曲はハナミズキです。ではお願いします。」
キーボードとボーカルから曲が始まる。既に朱莉は涙目になっている。曲が続くにつれ、hope皆の目に涙が溢れる。披露宴に来ている人たちも涙を流す。
最後はキーボードとボーカルに戻って曲が終了する予定だったが、朱莉は涙が止まらず、弾けない状態であり、ほぼアカペラ状態で曲が終了した。
客からは盛大な拍手がなり続けた。いつ聴いても理佳の声は、心に響く。私も涙が止まらなかった。
朱莉は、余りにも泣き過ぎて、化粧直しに一旦退席する程だった。
そして、化粧直しした朱莉は、両親への言葉、両親からの言葉でまた泣き崩れた。
そして、涙々の披露宴は終わった。
披露宴後は、朱莉の体の事もあり、二次会で終了した。
メンバー初の結婚式が終わった。
2ヶ月後には、メンバー初の親が誕生する。
そして、2ヶ月後、丈夫な女の子が誕生。名前は希美と命名した。