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神様へのプレゼント  作者: 鈴月桜
第1章 出逢い
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再会

大学の入学式が行われる4月2日、門から校舎に向かう道を、両側の桜の木が入学生を歓迎するかの様に、華やかな花によるスポットライトを道に照らす。この日の為に最高の演出を醸し出してくれているのだ。その歓迎してくれている桜を観ながら、これから始まる大学生活に期待を寄せて、校舎に向かって歩いた。


これまでの僕の学校生活は、とても楽しい学校生活とはかけ離れており、花が咲かない桜の様な学校生活であった。


入学式は、この生活に終止符を打とうと新たな気持ちになるイベントであるのだが、日が経つにつれて入学式の時に思っていた強い意志は消え失せていく。


そして気づいた時には、周りに人はおらず自分の殻に閉じ籠る寂しい自分の姿があった。


今度こそ!


僕の通う大学は、東京の名門私立大学ですが、この大学に入れたのも小中高時代に皆が友達と遊ぶ時間を勉強に費やした事で得た、報酬の様なものである。家族からの祝福の言葉も、心から受け止められない。勿論この大学に入れた事は嬉しいが、僕にとっては誇れるものでは無かった。何故ならば僕は友達と遊び、他の子の様に楽しい学校生活を望んでいたからである。人と付き合う事が出来ない僕は、その先の就職まで考える事など出来なかった。


ただひたすら、明日の事だけを無事に過ごす事だけを考えて来たからだろう。


入学式が終わり、各部活、サークルが新入生の勧誘を行う。

高校まで吹奏楽を行っていたが、大学まで続ける意欲は無かった。サークルも入ろうか躊躇していたのが本音である。

しかし、音楽を皆で作り上げる楽しみは、吹奏楽部で味わっていたため、心の何処かで音楽を続けたい気持ちもあった。

勧誘が行われている景色を楽しみながら、辺りを見渡す。

すると「軽音サークル」で目が止まる。


目が止まったのは、「軽音サークル」だからだけでは無く、勧誘を受けていた女性の後姿を見て目が止まったのである。


大城さん?


僕は心の中でつぶやく。

僕が知っている大城さんは、身長が低く体系も細い。でも頬は丸みがあり、目は大きく、少し垂れ目の可愛い顔立ちをしている女の子で、僕の中学の2大美女と言われていた子である。軽音サークルに勧誘を受けていた娘は、身長は平均的の160cmぐらいで、メガネを掛けている。彼女は中学を卒業して九州に転居したので、中学時代の大城さんしか知らない。ただ、根拠は無いが目の前にいる娘は、中学校に想いを寄せていた大城さんだと感じたのである。ただ、もし大城さんであっても、自ら話しかける事など出来ない事も分かっている。

同じ吹奏楽部ではあったが、部活でも僕から話しかける事は少なかった。

そんな僕でも一度だけ想いを伝えようとした事がある。

吹奏楽部の卒業公演の時に、彼女が九州に行く事を知り、偶然2人きりになった時に想いを伝えようとしたのだが、結局、想いを伝える事は出来なかった。

でもその時、奇跡が起こる。何故か彼女が僕に携帯番号を交換しようと言ってきたのだ。

勿論、彼女と携帯番号の交換をしたのだが、その後も彼女に連絡をした事は無かった。

僕にとっては青春の甘酸っぱい出来事であった。


僕は彼女の事が気になるが、話しかける勇気も無く、その場を離れようと背を向けて歩きだした。


その時である、ズボンのポケットに入っている携帯がバイブレーションで揺れた。

電話は、家族かたった一人の友達である加藤ぐらいしか来ないので、この時間の電話は加藤だと思い、携帯の画面を見る。


ところが携帯の画面には 「大城さん」 と表示されていた。

僕は慌てて電話に出る。

「もしもし」

「岩崎君?」

「うん」

「顔を上げて後に振り向いてを」


僕は後に振り返ると、軽音サークルの受付前に居た子がメガネを外し、携帯を耳に当てながら僕の方を見ていた。


これが大城さんとの再会であった。


そして電話を切り、彼女が僕の方に近づいてきた。

一歩一歩近づいて来る。


あまりの出来事に戸惑う。


そして今度は、直接「岩崎君?」

さらに頭はパニックに陥る

「・・・・」声が出ない

「岩崎君だよね?」

そう言うとクスッと笑い

「変わらないね」と笑顔で話掛けてきた。

増々訳が分からず、

「うん」とだけ答えた。


「もう大丈夫だよ」


更に訳が分からない事を発する。

すると会話が変わり、

「岩崎君、軽音サークルに入るの?」

僕は気を落ち着かせ

「うん」

まだ決めていなかったが、つい言葉がでてしまった。

すると「じゃあ、私も入ろうかな?」

と言った言葉に

「うん」と答えてしまった。

僕は昔から自分の表現を述べるのが苦手で「うん」としか言えない。

大学生になっても、自分の殻から脱皮出来ない自分が恥ずかしくなる。

すると大城さんは、軽音サークルの方に歩き出した。

僕はその姿を後ろから眺める。すると後ろを振り返り僕の方を見て。

「岩崎君、手続きしたの?」

その言葉に「まだ」と答えると、大城さんが僕の袖を掴み、「じゃあ一緒に行こう」と袖を引っ張った。


えっ


余りにも強引な態度に、大城さんは変わったのかな?と疑問を抱く。

僕が知っている大城さんは、確かに元気だった。ただ、ここまで男子に話しかけるようなタイプでは無かった。僕にとっては嬉しい変化なのだが。


彼女に引っ張られながらもサークルの手続きをした。

手続きが終わると後ろから女性の声がした。

「理佳」大城さんはメガネを掛け、後ろを振り向いた

朱莉「理佳サークル決まったの?」

理佳「うん。軽音サークルに入ったよ」

朱莉「じゃあ、私も入ろうかな?」

理佳「朱莉、音楽好きなの?」

朱莉「ピアノ、エレクトーンならやっていたから、キーボードでもやろうかな」

そんな、会話をしている大城さんを後に、その場から離れようとして後ろを向き、1,2歩進んだ時に大城さんの声がする


「岩崎君、じゃあ、またサークルでね」


僕は大城さんに向かって頷いた。

そしてその場から離れたのであった。


僕の大学生活は、大城さんのおかげで、今期待が膨らむ。


(神様ありがとう)

と、見えない神様に感触するのであった。

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