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理不尽に当たり散らされて部屋から出ないまま一人残るというようなことになっていればエリシアは職を失うだけでは済まなかった。


イリーダとマリーに助けられたと深々と頭を下げた。


「このたびはお力を貸していただきありがとうございました」


「良いのよ。同じ侍女でしょ?それにあの衣裳は帝国でも誰も着ないものだから」


「どういうことですか?」


「あれはね、数代前の皇帝が寵愛していた遊女が着ていた衣裳なの」


「遊女?」


「王国では娼婦というべきかしら?とにかく男性相手に商売をしていた女性の衣裳よ」


「えっ!」


「ごめんなさいね、わたしたちはイヴェンヌ様を悲しませる原因となった第一王子もその愛人も許せないのよ。だから意趣返しかしらね」


娼婦が着ていた衣装だったということも驚きだが国を統べる者が寵愛していたという相手の職業にも驚きだった。


王国では絶対にありえないということでエリシアは言葉を失った。


あの衣裳を着ているというだけで帝国内ではあの女性は遊女だということが分かり、王国の第一王子は遊女を寵愛している色好きという噂が立つ。


面白おかしく広まることはないが帝国の者が水面下で広めてくれることだろう。


さらに言えば、男を手玉にとる悪女としてベラのことも知れ渡る。


他国の王族を貶めるようなことすれば一族路頭に迷うだろうが分からないように工作するのが腕の見せ所だ。


「本当は、このようなことを帝国の侍女がされたと進言する立場であるのは分かっています」


「エリシア?」


「たった数日でしたけど、ベラ様に付いて侍女として、惨めな思いをしました」


「エリシア」


「王妃様付きになって浮かれていましたが辞めて実家に戻ろうと思います」


理不尽な主のせいで仕事を失う必要はないというのが帝国の信条だ。


わがままな主はすぐに淘汰されなければならない。


「エリシア、貴女侍女を続けたい?」


「続けたいですけれども、もう」


「王国の辺境伯に知り合いがいるわ。アンナというのよ。マリーの紹介だと言えば侍女として雇ってくれると思うわ」


「会ったばかりなのに申し訳ありません」


「会ったばかりではないわよ」


「えっ?」


エリシアはまだまだ聞きたいことがあったが、そろそろ列が動き始めた。


エリシアは深く頭を下げて列に加わった。


あの様子だと侍女の名前と顔は把握されていないようだった。


途中でいなくなっても問題にすらならない有様だ。


「マリー、急に悪かったわね」


「良いわよ。あの愛人に仕返しも出来たし。でも良かったの?」


「何が?」


「あの着物よ」


「あぁあれね。本当に誰も着なくて捨てるに捨てられなかった着物なのよね。来年の皇太后さまの出家に着せようかって話があったくらいだもの」


喜ばれることはあっても怒られることはなさそうだった。


話を聞くと金糸と銀糸で刺繍を豪華にしているだけで着物本体は安物の布を使っている。


豪華に見えるが高いものではないそうだ。


「それとエリシアと知り合いだったの?」


「知り合いってほどでもないわ。私がいないときにイヴェンヌ様の話し相手になってくれてたってだけよ。向こうは私のこと見たことないはずだもの」


「そう。それにしてもイヴェンヌ様の婚約破棄が完了して良かったわね」


「えぇこれでヒュードリック様に恋をしてくれたら良いのだけど」


「まぁなるようになるわよ」


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