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咲いている花を見ながら歩くが背の低い花が一面に咲いていてもおかまいなしに進む。

 

踏まれて花弁が散っていく。

 

「大国というのも考え物ね」

 

「そのことを考えれば帝国と縁続きにならなくて済んだことは僥倖と言えるな」

 

縁続きにならなくて済んだことを喜ぶのは帝国側も同じだ。

 

王国はイヴェンヌには後ろ盾としての役目を、血筋の帝国には資金を求めるつもりだった。

 

持参金と称して普通なら考えられない額を請求するつもりだった。

 

「そうね。ルーシャ様ならきっと帝国以上の豊かな国にできるもの」

 

「あぁそのためにはベラ、君が傍にいてくれ」

 

「もちろんよ。私だけじゃないわ。お腹の子も一緒よ」

 

勝手に歩き回っている庭には花が植えられているが切り花には向かないものが多い。

 

それを知らずに手折ると手が被れてしまうものも多かった。

 

「この花はとても綺麗ね」

 

「ベラにとても似合いそうだ」

 

赤く咲く花を手折りベラの髪に差す。

 

手折ってわずかな時間に花びらが枯れ落ちて茎は髪に絡まった。

 

ルシャエントの手は真っ赤に腫れ上がり一回りも大きくなった。

 

「いつっ」

 

「ルーシャ様!誰か!誰か来て!」

 

「何なんだ!この花は!」

 

「いかがなされました?」

 

世話係として付いているイヴェンヌが書物庫に籠りきりになっているため手が空いているイリーダが駆け付けた。

 

真っ赤に腫れた手と枯れた花を見て状況は把握したがイリーダは確認をする。

 

「何のんびりとしているのよ。ルーシャ様が怪我をされたのよ!すぐに手当てしなさいよ」

 

「アイノッシュという花には見えない棘が無数にございます。医務室にご案内します」

 

「医者をここに呼びなさいよ」

 

「治療には痛みを伴います。ここでは満足に治療ができないかと思われます」

 

「良いから呼びなさいよ。他国の王子に怪我を負わせて平然としているのはどういうことなの!」

 

ルシャエントの婚約者でも身分は変わらないから庶民のベラではイリーダに命令をすることはできない。

 

そんな当たり前のことを説明しても理解できないことは分かっているから黙って従う。

 

「大丈夫?ルーシャ様」

 

「大丈夫だ」

 

「こんな危険な花を植えているなんて何を考えているの?」

 

足元にある別の花だが全てが危険な花に見えたのだろう。

 

一本一本しっかりと踏み潰していく。

 

その様子にイリーダは眉を顰めたが咎めることはしない。

 

他国の庭に咲いている花を踏み潰すなどという行為は蹂躙以外の何物でもなかった。

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

「早くしなさいよ」

 

イリーダは急いでルシャエントとベラの視界から消えるところまで走った。

 

見えなくなったことを確認して廊下をゆっくりと歩いてロカルーノ王国一行が待機している部屋に向かう。

 

扉を叩いて訪問を知らせ、中にいる騎士に用件を伝える。

 

「何か?」

 

「第一王子様が御手に怪我をされましたのでお医者様を呼びに参りました」

 

「分かった」

 

奥から診察鞄を持った医者が出てきた。

 

怪我の状態などは何も伝えずに場所だけを告げて案内をする。

 

本当なら走ってでも案内をするべきなのだろうが医者が走らないからイリーダも走らなかった。

 

防衛のため複雑な道順で庭まで案内をした。

 

よほどの記憶力の持ち主ならば迷うことなく部屋に戻れるだろうが普通は戻れない。

 

帰りは誰かに案内をしてもらうか自力で帰るかしてもらうつもりだ。

 

そこまで親切にできるほどイリーダは王国一行を許していない。


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