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膨らみもないお腹を優しく撫でながらベラは愛おしそうに笑う。


すでに二人の子どもが生まれたかのような喜びようだった。


「ここにルーシャ様の子がいるのよ」


「うん、楽しみだね」


「男の子が良いわ」


「最初は女の子が良いよ。きっとベラに似た子が生まれてくるよ」


勝手に歩き回られることを嫌って部屋に軟禁しているのだが、二人にとっては晩餐会までの休憩と思っている。


「しかし父上と母上は嫌にイヴェンヌに固執していたな」


「そうね。イヴェンヌがいなければいけないというようなことが聞こえてきていたわ」


「従兄は確かに僕より年上だが立太子していない。わざわざイヴェンヌと婚約せずとも次期王であるのになぜだ?」


「イヴェンヌのお父様が無理を言ったのではないかしら?」


二人はルシャエントの立場と地位というものを何も理解していなかった。


「王家の婚約者だったからな。まったく大人しくしていれば末席にでも加われたかもしれないのにな。勿体無いことだ」


「でもイヴェンヌはプライドが高そうなお姫様だったわ。末席で我慢できるような人かしら?」


「そうだな。悪女を王家に入れずに済んだことを喜ぼう」


正式に婚約契約が無効になったことでルシャエントはイヴェンヌの後ろ盾を無くした。


つまりは次期王に最も近い位置から最も遠い位置に変わった。


さらにベラ以外を妻とすることが永遠にできないことからルシャエントにもルシャエントの子どもにも王の座は回って来ない。


継承権の強い者が次々と死に行くことになれば可能だが現実味がない。


それに気付くことなく二人は王と王妃になるものだと浮かれてもいた。


「帰ったら子どもがいることを国民に報告しないといけないわね。次期王の子が生まれるのだもの。お祝いをしないといけないわね」


「帰りのパレードでは僕たちの結婚のお披露目と新しい王族の誕生を報告しよう」


「帝国の方に新しい衣装を作っていただきましょう。帰りも同じ服では詰まらないわ」


「そうだな。神にも認められた夫婦だということをお披露目しよう」


まるで自国にいるように振る舞い、近くの侍女に採寸係を呼ぶようにと言いつける。


ついでとばかりに新しいお茶やお菓子に、王国の物を追加するようにと命令する。


これだけで帝国の侍女たちからの評価は最低になった。


下がるほどの評価を最初から持っていたのかどうかは怪しいが。


「お義父様とお義母様にお声をかけてお茶会をしましょ。帝国のお菓子など食べてみたいわ」


「そうだな」


「帝国を見て回りたいわ。いくら妊娠していても動かないと赤ちゃんに悪いわ」


「そうだな」


自分たちが新しいお茶やお菓子を用意させているが部屋を出る。


窓から目についた庭に出て散歩をする。


勝手な行動だが誰も止める者がいないのだから仕方がない。


「それにしても誰もいないのね。もっと侍女がいると思っていたわ」


「侍女を雇うことができないのであろう」


「お金があるのに?」


「金だけではない。人望というものだ。帝国に仕えたいという者が少ないのであろう」


少ないわけではない。


普段から身の回りのことを最低限は自分ですることを徹底しているため人員も少なくなる。


招かれざる王国一行を迎えるために一週間後に合わせて人員を増やす予定だったが、必要なくなった。


全てはロカルーノ王国一行が予定を繰り上げたことに起因する。


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