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診察をした医師が厳かに告げた。

 

カップにヒビが入ったように見えた。

 

「・・・妊娠?」

 

「はい、マセフィーヌ様、ドラノラーマ様」

 

「いつ頃のことですか?」

 

「二か月にはなっていないくらいですかな」

 

医療班で長年勤めた医師は初期の妊娠を見抜いた。

 

ざっと逆算してもイヴェンヌが最初の婚約破棄をパーティで宣言された前後のことだ。

 

婚約していれば行為に及んでも問題はない。

 

今回はこじつけのようだが婚約については王命が出されたあとのため子どもができることに問題はない。

 

ただし王はイヴェンヌを国母に据えると皇帝の前で発言した。

 

そのあとにルシャエントの手によって否定されたが王はそのつもりであったということだ。

 

そしてベラは子どもを妊娠していた。

 

この子どもの父親がルシャエントならばベラは国母となる。

 

国母になる令嬢は王妃でなくとも良かったし、側妃でも良かった。

 

さらに言えば婚約者の時点でも王位継承を持つことができる子を産みさえすれば国母となれる。

 

そして国母と名乗れるのは王もしくは次期王の最初の子を産んだ妃のみだ。

 

イヴェンヌを国母とすることは不可能になっていた。

 

それを防ぐこともせずに国母の座を交渉の材料にしたことで帝国への詐欺が発生する。

 

「あの第一王子は本当にイヴェンヌを蔑ろにしていたようですわね、ドラノラーマ」

 

「そのようですわね」

 

「それで娘の容体はどうなのかしら?」

 

「至って健康そのものでございます。多少つわりが早いようですが問題ございません」

 

「婚約破棄が為された今、帝国が希薄になった同盟で王国の者を歓迎する必要はありませんわね」

 

マセフィーヌとしては変更した第一の目的である婚約破棄が出来たことで王国の人間を退去させたいと考えていた。

 

四十年前の借りを事実だけを伝えるというような甘い考えをマセフィーヌは捨てた。

 

「ドラノラーマ」

 

「何でしょうか、姉上」

 

「母体が問題ないなら王国に戻すことに異論はありませんね」

 

最初から王国は帝国の中を土足で荒らし回っているようなものだ。

 

はいそうですかと許すようなことはしない。

 

「ございませんわ。帝国で出産ということになるまで滞在されると大変ですわね」

 

「帝国を虚仮にした王国の者の出産を手伝うほど優しくはできませんわね」

 

「すぐに出立の準備を整えてしまいなさい。あとは物見遊山に付いてきた家臣たちには帝国を謀る気だったとして開戦を申し入れても良いか確認をなさい」

 

このマセフィーヌからの伝言を受け取った医師は的確に伝えた。

 

この伝言に青ざめた家臣は急いで帰国の準備を始めた。

 

この期に及んで王と王妃はイヴェンヌを養女にして国に連れて帰れないかと思案していた。

 

ルシャエントとベラは新しい命の誕生と正式な夫婦となったことを喜んでいた。


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