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イヴェンヌが初社交界(デビュタント)を果たしてから流行りのドレスをいつも着ていて、いつも公爵令嬢として相応しい装いだった。


それを王家が婚約者のために用意していなかったということは最初に婚約者を蔑ろにしていたのはルシャエントの方だ。


その事実に驚いたのは三人のやり取りを可愛い痴話喧嘩だと思って微笑ましく放置していた王だ。


この婚約者がいながらにして別の女性と交際し、自分の浮気を正当化してしまっている状況を痴話喧嘩として微笑ましく見ている段階でかなりおかしいが、身元調査も碌にせずに婚約者の座を用意してしまうのだから当然の結果とも言える。


そんな王でも思わず席を立ち、ルシャエントを怒鳴りつけた。


「どういうことだ、ルシャエント!」


「何を驚いているのですか?父上」


「何もこうもない!今まで作ってきたドレスをどうした!」


「あぁ、婚約者のために作ったドレスですか?私の婚約者は今も昔もベラだけですから、ベラに貸していました。本当は渡したかったのですが、ベラが無駄遣いはいけないと言うので貸すことにしたんです。問題ないと思いますが、流行りが終わったドレスとアクセサリは返上しますよ?」


王の怒鳴り声で気を失っていた王妃が目を覚ました。


傍にいた侍女に気を失っている間のことを説明され、再度、気を失った。


怒鳴られているがルシャエントは何故、大声で叱責されているか理解できなかった。


王の声に驚いてベラはルシャエントにしがみつく。


そんなベラを慰めるために髪飾りに触れないように頭を撫でる。


「お前は何を考えているのだ!貸しただの渡しただのは関係ない!婚約契約書で交わしたイヴェンヌ嬢以外が受け取っていることが問題なのだ!何故、そこが理解できない!」


「婚約契約書を交わした令嬢は王家の婚約者ですから王家がドレスなりアクセサリなど用意すれば良いでしょう。私が何故、用意しなければいけないんですか?そんなことは家臣の仕事でしょう」


本気で思っているのだろう。


王家の婚約者であるのだから王族が動く必要はなく、王家の名で家臣が手配するものだと本気で考えているのだ。


「次期王である私は次期王妃となるベラに贈り物をしていたのです。父上は愛する王妃に贈り物をしていますから私もそれに倣って愛する次期王妃に贈り物をしていたのです」


「双方を婚約者であることは認めたが、ベラ嬢を次期王妃であることを認めてはおらん」


「では、今すぐベラを次期王妃だと認めてください。次期王妃の自覚があればイヴェンヌを次期王妃としても良かったんですが、側妃とばかりいて王妃としての心構えを学んでいないようでしたので、心構えをすでに持つベラを次期王妃としたいと思います」


「ならん」


「何故です!父上」


「私、立派にルシャエント様を支えて見せます!」


この押し問答に嫌気が差してきた貴族も多い。


不敬と分かっていながら飲み物や食事に手を付ける者が出だした。


給仕はどうするべきか困っていたが気付いたイヴェンヌが職務に就くように合図した。


それからは上座では茶番劇が下座では会談パーティが繰り広げられることになった。


王の怒鳴り声で再び意識を取り戻した王妃はベラの最後の言葉に反射的に返した。


「どう支えるというのだ。王妃としての教養がすでに備わっているとでも抜かすか!」


「そ、それはこれから勉強します。それから子どもを産みます」


「な、何と、汚らわしいことを申すな!気高き血の欠片も流れていない娘がおいそれと口にするでないわ」


ただでさえ面倒なやり取りがさらに面倒さを増した。


王と王妃と第一王子と庶民の娘の四人で勝手に喧嘩でも何でもしてくれという気分の側妃とイヴェンヌは会場から外に出た。


言い争いが過熱しており誰も気づいていない。



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