表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/150

78

ドラノラーマのサロンでお茶を楽しむのが定番になるかどうかの瀬戸際のころに巡回兵から背筋が凍る報告がされた。

 

「・・・お茶会を開いている時間がなくなったですって?」

 

「明日に到着するようですよ、一行が」

 

「ずいぶんと無礼なことね」

 

「何でも帝国の街道で時間を使うことは無駄だと王が言われたそうですわ」

 

「そう」

 

マセフィーヌの一言で部屋の温度が下がった。

 

温かいはずの紅茶が冷たく感じた。

 

ドラノラーマの持つカップにヒビが入ったかのように見えた。

 

「マセフィーヌ姉上、まずは落ち着きになってはいかが?」

 

「ドラノラーマ、わたくしはこの上なく落ち着いていますわよ」

 

「言葉を間違えましたわ。その冷たい笑みをお鎮めいただけますかしら?兵が怯えているわ」

 

ただ報告に来ただけの兵には災難だったがマセフィーヌの氷の笑みに耐えられる者はそう多くない。

 

「報告ご苦労さま」

 

「はっ、失礼します」

 

立ち去る許可を出したレオハルクに兵は心からの感謝を敬礼にて表した。

 

「パレードをすると強行しておいて勝手だねぇ」

 

「そうですわ。勝手ですわ」

 

「マセフィーヌ、これからどうするのだい?」

 

パレードとなれば街道をゆっくりと進み五日から一週間かけて泊まりながら行うものだ。

 

これで街道沿いにお金が落ちて潤うという経済的な面も担っている。

 

つまりは帝国にお金を落とすつもりがないと暗に宣告したも同義だった。

 

側で彼らを見てきたドラノラーマは王たちの思考が手に取るように分かった。

 

街道沿いの庶民向けの宿で眠りたくないという我が儘のせいだろうということも。

 

「売られた喧嘩は言い値で買わないと失礼にあたりますわね。いいえ、倍値でも」

 

「そうとも限らないかと」

 

「ドラノラーマ、お兄様にお伝えして頂戴」

 

「はい」

 

「帝国総出でお迎えするように、と」

 

「はい」

 

怒らせたマセフィーヌは手をつけられない。

 

ドラノラーマは急いでジョゼフィッチの元に向かった。

 

執務室ではマーロと仲良く談笑しながら仕事をしている。

 

お茶を用意したあとサロンから移動していたのだが気づかなかった。

 

自分はマセフィーヌの怒りに触れて背筋が凍る思いをしているのに不公平だと感じ八つ当たりだと分かっていて怒鳴った。

 

「今すぐ準備をなさい!」

 

「どうした?ドラノラーマ」

 

「どうしたもこうしたもありません。今すぐ動くのです」

 

「かしこまりました、ドラノラーマ様」

 

マーロは何も聞かずに動いた

 

そのドラノラーマの考えを瞬時に理解する能力は脱帽ものだった。

 

「ドラノラーマ、いったい何があった」

 

「明日にはロカルーノ王国一行が到着するのです」

 

「はぁっ?」

 

「マセフィーヌ姉上が帝国総出でお出迎えするようにと」

 

「いやいや明日というだけでも驚きなのに驚く間もなく総出って」

 

「マセフィーヌ姉上の逆鱗に触れたようでしたわ」

 

総出というのは皇族だけでなく帝国の上位貴族と間に合うだけの下位貴族が集められる。

 

緊急招集とも言われている。

 

戦争になったときに行われることが多い。

 

いつもは冷静なドラノラーマが焦っているのだからマセフィーヌの怒りが凄まじいのだと理解できる。

 

「一体、マセフィーヌは何を考えているんだ?」

 

「さぁ?わたくしにも分かりませんわ。姉上には何か目的がおありのようですけれども」

 

「すぐに発布しよう。帝国総出というなら総出とするまでだな」

 

マセフィーヌの怒りを助長させるつもりはない。

 

ジョゼフィッチが動かずともマセフィーヌは扇をパチリと鳴らすだけで総出させようと思えばできてしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空家をなくそうプロジェクト参加作品
女王にならないための一仕事
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ