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剣磨きに没頭しているジョゼフィッチはしばらく放置しておいて問題はない。


影よりもひっそりとしているマーロはいつの間にかドラノラーマの後ろに控えていた。


「サロンでお茶でもいかがかしら、マセフィーヌ姉上」


「そうね。細かい話が必要ですものね」


「マーロ」


「すでに準備はできております」


「いつも思うのだけど、ドラノラーマの従者は優秀ね」


「差し上げませんわよ」


姉妹の静かな攻防が水面下で起きていた。


マセフィーヌとエルビエーヌはマーロを手元に欲しいと思っていたがマーロのドラノラーマ至上主義は知っているから口だけだ。


無理に手元に引き寄せてもきっと最低限の動きしかしないということが分かっている。


「分かっていますよ、ドラノラーマ」


「分かっていただけて何よりですわ」


一度だけマーロをお供にしたことがマセフィーヌにはあった。


何も言わなくても動くのは良いと思った単純なことだ。


だけどマーロは直立不動に立つだけで何もしない。


なぜしないのか?と聞いたときの返答からマセフィーヌは諦めた。


わたくしめはドラノラーマ様のお考えはまさしく掌で弄ぶかのごとく分かるのでございますが、マセフィーヌ様のお考えはマーロめには考えもつかぬほどに高尚なことと存じ申し上げ奉ります。


丁寧なのか褒めているのか慇懃なのか判断に困る言い回しだったことから諦めた。


「マーロ」


「本日は珊瑚の赤が映えるように黒を基調とした扇を用意いたしました」


「いつ見ても不思議だわ」


名前を呼ばなくても手を出すだけで望みの物を差し出す。


それでもドラノラーマが傲慢なだけの姫にならなかったのはマーロのおかげと言える。


「本題に戻しましょう」


「そうですわね、姉上」


「ロカルーノ王国より正式に婚約破棄をさせたいですわね」


政略的な婚約なら別れることもよくあることだ。


それでも幼いときからの奪われた時間は取り戻せない。


その時間分くらいの償いはさせたかった。


「イヴェンヌとヒュードリックの仲は上々ですわ」


「予定を変更します。謁見に来た王国一行に対しては婚約破棄騒動の件について追及します」


「よろしいのですか?姉上」


「問題ありません。いくら王国側に償わせたいと願っても当事者はいません。ならば当事者しかいない婚約破棄騒動について終わらせるべきですわ」


レオハルクに至ってはカンディアルニア帝国とロカルーノ王国の問題に入る必要はないと傍観の姿勢だ。


元よりの目的が達成できるのならば多少の回り道は苦としないタイプだ。


溺愛している妻が生き生きとしていることが最重要事項とも言える。


「ロカルーノ王国側に四十年前の借りを追及をしても言い逃れをされては面倒です。やるのならば完膚なきまでに叩きのめすまでです」


「マセフィーヌ姉上、少々本性が出ていましてよ」


「あら、わたくしとしたことがいけませんわね」


扇を口元にあててお淑やかに微笑む。


マセフィーヌの黒い笑みを見ても耐えられる人はそう多くないだろう。


「そうと決まりましたら衣装を仕立てなくてはなりません。ドラノラーマ、反物を用意させなさい」


「かしこまりました」


何かをやり遂げると決めたマセフィーヌには逆らわないのが鉄則だ。


昔に一度だけ逆らって恐怖を見た。


あの時ほど姉を敵に回してはいけないと実感したことはない。


だけど、そんなマセフィーヌを心より愛しているレオハルクには可愛らしく見えるらしい。


ドラノラーマは侍女を探すために二人から離れた。


二人だけになるとマセフィーヌは気弱な表情を浮かべた。


「フィーヌ」


「レオ、ごめんなさい」


「構わないよ、僕もイヴェンヌ嬢を優先すべきだと思うよ」


「勝手に決めたわ」


「僕は国のことを第一に考えてくれるフィーヌだから惚れたんだ。これからも思ったことは全て行動に移して構わない」


「ありがとう、レオ」


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