64
「王子の奇行にも悩まされたが王の奇行も悩みどころではあるのう」
「仕方あるまいて、パレードをして帝国に恭順の意を示すのは悪いことではない」
「うむ、国庫を使用することで戦争をする意思はないと示すことになる」
「帝国も話くらいは聞いてくれるだろうて」
「あとは庶民の娘の処遇じゃの」
「王が婚約者にしてしまったからの実家に戻すのは、ちと体裁が悪い」
「だが庶民の身分では王家に嫁がせられんぞ」
「だからと言って公爵家と侯爵家は引き受けないだろうしな。いくら王家からの打診でも養子にでもすれば自分の子どもが無能だと宣言しているようなものだからのう」
「伯爵家で引き受けるところはあるのかのう」
「たしか流行り病で息子を亡くした伯爵がおったはずだ」
「だが孫がおるぞ」
「ならその孫の後見人に王家がなる代わりに娘を養女にするように交渉すればよかろう」
「うむ王家が後見人であれば伯爵の親族も黙るであろうから良いこと尽くめじゃ」
「あとは娘には親と断絶してもらわねばならないな」
「他国に情報を流してもらっては困るからのう」
「手紙のやり取りに里帰りも我らの息のかかった者を監視に付ける必要はあるか」
「面倒なことになったの。先代王も大概のことをしてくれたが国内で済んだからの」
「我らの目の届かぬところでは悪さはしよらなんだ」
「帝国の血を持つ娘を婚約者になどせずに王国の血だけを持つ公爵家を選んでくれたら良かったのに」
「面倒だな」
「あとはイヴェンヌ嬢が戻られたら早々に子を宿していただき、王子には退位いただこう」
「男子であれば良いが、こればかりは運だから高望みは出来ないか」
「それか、フィリョン様かオーギュスタ様に我らの中の娘を娶らせて子を宿すのも策としてはありだと思うが?」
「今回のことでイヴェンヌ嬢が王子と懇ろになってくれぬかもしれないからな」
「そのあとに、王子と庶民の娘の間に子が生まれても王位など貴族が許すはずがないからな」
「では、どちらが御しやすいと思う?」
「オーギュスタ様の方ではないか?軍隊に入団を希望されておるからの」
「早々に妻を宛がい、子を生させておくか。あとは軍で好きなようにしてもらえば良い」
「あとはフィリョン様を臣籍に下しておく方が良いかの?」
「簡単には出来ぬて、同じように軍隊に入れてはどうかの?」
「確かに、フィリョン様は女性よりも男性に興味がおありのようですからな」
「それは語弊があるのではないか?男性と気兼ねせずに話すのが好きなだけで、女性には年相応の興味はお持ちだろうて」
「まぁ同性に興味を抱いていてもいなくても我らの都合に合わせて都合の良い娘との間に子を生してくれれば良い」
「うむ、六代前の王が男色だったそうで苦労したと歴史書にあるからな」
「いつの世も臣下が苦労するのは変わらぬようですな」
「さて、パレードとなると服を新調せねばなるまい」
「国一番の針子に頼むか」
「まずは、王と王妃が最初であろう?」
「それは間違いない」
「次は、第一王子か?」
「うむ、そして付いていく我らの貴族順位で問題はないな」




