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「・・・母上、手紙は読んでもらえましたか?」


「その前に言うことがあるのではありませんか?」


「そうでした。何故、イヴェンヌとの婚約を破棄してくださらないのですか?あんなにも素敵なベラが日陰の者であるなど許されるはずがありません」


手紙の前に問い質さなければいけないのはルシャエントにとってはベラとの結婚であって決定事項として完結している。


二人の頭の中には結婚生活が描かれていた。


「王と王妃であるわたくしたちがイヴェンヌを婚約者にしてあげたというのに何を考えているのです」


「何もイヴェンヌを婚約者にしてくれと頼んではいません。私の婚約者はベラだけです。初めて会ったときからずっと愛しているのです。この気持ちを蔑ろにするのは如何に父上や母上でも許されることではないはずです」


「何を言っているのです。次期王となる貴方には王妃として支えることのできる後見人が必要だったのです。イヴェンヌは公爵家令嬢であり帝国の血を持つということで貴方の継承権は盤石になったというのに」


王と王妃にとっては息子が王となることが大切なのであってルシャエントの意思は必要ない。


本人たちは蔑ろにしているつもりは全くないから間違っているとも思っていない。


ルシャエントのためにという気持ちだけで他に行動原理はない。


「よってイヴェンヌが婚約者であることは必定である。分かるな?ルシャエント」


「父上のおっしゃることは分かります。でも僕は愛する人と結婚したいのです」


「愛する者と結婚したいという思いは痛いほどに分かる」


「では・・・」


ルシャエントが言い募ろうとするのを片手を挙げて止める。


「いかに愛する者と結婚したいと言っても庶民の娘では民も納得すまい」


「ベラは確かに貴族ではありませんが王妃としての心構えは持っています」


「心構えだけでは心許無い。王としての余を支えている王妃ですら苦労したのだ。貴族としての教育を受けていない娘がどれだけできるか不安が残るところだ」


イヴェンヌとの婚姻が済んでしまえば庶民の娘を愛妾にするくらい問題ではなかった。


今はルシャエントからイヴェンヌを王妃にするという確約が必要だった。


「ベラは王妃としての務めも果たしています。この短い間に私に王としての考え方や在り方を教えてくれています」


「王妃として?」


「はい」


「王家に嫁ぐというのは他と異なります。わたくしは王妃となるために幼いころから貴族としての教育を受け、王に見初められてからは五年の歳月をかけて王妃としての心得を学びました」


王妃としての力量があるかは不明だが教育を受けたことだけは事実だ。


それが王妃の誇りでもあった。


「ルシャエント、ベラという娘が本当に王妃として振る舞えるか確認をします」


「母上?」


「貴方の軽率な行動で帝国へ他意が無いこと示す必要があります。わたくしたちは帝国へ向かいます。ルシャエントもベラを連れて一緒に来なさい。帝国への対応がきちんとできれば王もわたくしもベラという娘を王家に迎え入れる準備をしましょう」


「母上、ありがとうございます」


ルシャエントは純粋に喜んでいるが王妃は帝国への顔合わせに同席をさせるつもりはない。


再び婚約破棄というような暴挙に出ることを疑っているからだ。


「準備が出来たら使いを出します。帝国へ向かう心積もりをしていなさい」


「失礼します」


必ず王と王妃はベラを認めると確信しているルシャエントは大人しく引き下がった。


王と王妃の思惑であったイヴェンヌとの結婚の確約は話にならならいまま消えた。


「ルシャエントは分かってくれたかしら?」


「俺たちの息子だ。きちんと答えを導き出すさ。あとは帝国までパレードだな」


「これで帝国も良しと言うでしょう」


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