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ルイーナは自分の立場というものをよく理解していた。


ヒュードリックが本気でイヴェンヌを迎え入れるつもりなら全力で叶えるだけだということも。


自分で結婚相手を選ぶこともできないと諦めて愛する人との子どもも諦めて過去の令嬢たちと同じ道を歩むのだと己の心に蓋をすることを決めた。


その蓋を開けたのはヒュードリックだった。


そして秘めた恋心を叶えてくれた。


「子どもは隠して産みますわ。ヒュードリック様の子であると周りに知られるのも問題ですが、不貞をして離縁というのも問題ですもの」


「あくまでも皇妃が決まったことによる降嫁でなければならない、か」


「わたくしは皇家の命に従ったという事実が必要ですの。実家に戻っても行き遅れの娘を嫁がせるところは下位貴族になります。あの父が下位貴族に下げ渡すなどあり得ませんわ」


「そこで背の君の家か。あそこなら伯爵家であると同時に準侯爵位を持っているからな」


「協力をしてくださいますか?」


「今まで苦労をかけたからな。協力しよう」


イヴェンヌの婚約破棄が正式に決まっていない以上、ルイーナとルイーナの子は障害になる。


本人にその気がなくても周りが勝手に持ち上げてしまう。


時間は限られていたが勝算はあった。


最悪でもルイーナを背の君への報償として降嫁させるという強引な手もある。


今は子どもを隠すことだけが優先だった。


「それと産まれた子が男子ならヒュードリック様に女子ならイヴェンヌ様に名付け親になっていただきたいわ」


「俺は良いが、イヴェンヌ嬢は難しいのでは無いか?」


「公式なものでなくて良いのです。皇家から望まれた子という事実が欲しいだけですもの」


「それならイヴェンヌにも伝えておこう」


「長らくお引き止めしてしまいましたわね。お戻りになった方がよろしいのでは?」


「そうだな。また何かあったら教えてくれ」


ルイーナを除く側室たちは会話をしたこともないくらいに顔を合わせていない。


何かあっても手紙でのやり取りくらいだ。


「それでは、マルシェンナとドボルリッテから求愛のお手紙ですわ」


「またか」


「返事はいつものようにでよろしゅうございますか?」


「あぁ」


部屋に訪ねて来てほしいという内容の手紙だ。


この手紙の願いをヒュードリックは一度も叶えたことはない。


「代筆の返事だということにお気づきにならないようでは側室失格ですわね」


「失格として家に送り返せたら良いのだけどな」


「わたくしは先に休みますわ」


「あぁ」


代筆の返信というのは求愛を受けないという意思を示すがヒュードリックの寵愛を受けることを信じて疑わない令嬢はしつこく手紙を送る。


その手紙がヒュードリックに読まれることなくルイーナの手によって代筆されていることに気づくことなく。


手紙を直接やり取りできるルイーナは後宮内では好きなように発言ができる。


それだけではなく公爵家令嬢という他の者とは違う出自というのも他の追随を許さない。


ヒュードリックとルイーナは結託をして後宮内の権力図を調整していた。


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