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「これはドラノラーマ叔母上、無事の帝国へのご帰還大変喜ばしいことと存じ上げます」


「堅苦しい挨拶は良いです。それよりも謁見の間に来なかった理由は何です?」


「イヴェンヌ嬢のためですよ」


「どういうことです?」


茶室から自室に戻る間にドラノラーマと遭遇した。


おそらくは男女で二人きりになったままと考えたドラノラーマが迎えに来たのだろう。


その杞憂は必要なくヒュードリックはマリーを同席させていた。


「バルコニーでお茶でも如何でしょうか?星が綺麗ですよ」


「そういうところはマセフィーヌ姉上の教育の賜物というところですね」


「お褒めに預かり恐縮です」


「褒めておりません」


バルコニーにはお茶が常に用意されている。


星見を楽しむには季節も良かった。


「それでイヴェンヌのためとはどういうことです?」


「謁見の間でイヴェンヌ嬢と会えば無理にでも婚姻させようと皇帝は行動したでしょう」


王国から夜に亡命同然にドラノラーマ一行が帝国に入った。


その中に婚約破棄騒動に巻き込まれた帝国の血を持つ令嬢が入ればジョゼフィッチは王国への報復の一環として婚姻を無理にでも推し進めた。


イヴェンヌだと知らなくても予想は簡単に出来た。


「兄上なら考えつくことでしょうね」


「だから叔母上はイヴェンヌ嬢を同席させなかったのではありませんか?」


「それはどうかしら?」


「皇帝が使用人にイヴェンヌ嬢を連れて来るように指示できないようにするために昼食に品数を増やさせた」


「ふふ、面白いお話だわ。ヒュードリック」


「お褒めに預かり恐縮です」


「褒めておりませんよ」


国にとって有益なら味方であろうとも手に掛ける。


そして、敵であっても迎え入れる。


王国では軟禁状態で婚約していたイヴェンヌに対して、まったく同じことをジョゼフィッチはしようとしていた。


何としても阻止したかったドラノラーマは客室にイヴェンヌを一人残した。


「いつ気付いたのです?」


「叔母上の考えに気付いたのは先ほどです」


「それではイヴェンヌのためという理由は成り立ちませんね。まぁ王国より来た令嬢のためというのが正しい答えですね。それがイヴェンヌだったというだけのこと」


「俺は次期皇帝という立場も皇帝になることも望んでいます。でも伴侶となる者くらいは自分で選びたいのですよ」


「それで謁見の間に来なかったのですね。顔も見たことが無い令嬢と婚姻させられないために」


「はい、結婚式まで顔を見たことが無い夫婦は大勢いるでしょう。でも国を治めるのなら少しは帝王学というものに造詣が深い令嬢が良い」


ヒュードリックが迎えた側室は全員が次期皇帝という立場の妃であることを望むか、ヒュードリックの容姿を望んでいた。


このままではアーマイト皇太后の二の舞になる。


それを避けたかったからこその行動だ。


「兄上は皇妃という者の立場を甘く見ていらっしゃるようですからね」


「母上は俺を産んで儚くなりましたからね」


「見本となる皇妃が皇太后では皇妃の重要性が分からなくとも仕方ありません」


「今から皇妃教育をするのは時間がかかります。その点で言えばイヴェンヌ嬢は叔母上に教育されています」


「わたくしはイヴェンヌを政略の駒にするつもりで教育した訳ではないのですがね。それで今日はイヴェンヌとどのような話をしたのですか?」


「告白をしましたよ」


兄であるジョゼフィッチの目論見を崩せたと喜んでいたが、思わぬ伏兵が現れてお茶を飲む手を止めた。


一体、何を考えているのかとドラノラーマは持っていた湯呑を握りしめた。


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