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手酌で新しく酒を注ぎながらアーマイトが管を巻く。


せっかくマジョルードが引き離したのだが効果は薄かった。


「あれもだめ、これもだめ、これだから皇族はだめなのよ。わたしが嫁いで庶民の暮らしを教えてあげたというのに全く出来ないのだから」


「皇太后は酔っていらっしゃるようですね」


「酔ってないわよ。酔うほど飲んでないもの。それよりもイヴェンヌちゃんの好きなお菓子は何かしら?」


「知りません。そろそろ湯浴みの時間では無いですか?」


「えっもうそんな時間?今日は薔薇のお風呂を用意させようと思ってたのに」


勝手に完結してアーマイトは食堂を出て行く。


自由であるにもほどがあるが、離縁することもできないから仕方がない。


「すまないな」


「いえ、構いませんわ」


「来年には修道院に入ることが決まっているから少しの間は目を瞑ってくれ」


「修道院に?」


「帝国の仕来りだ。食堂で話すことではないからな。茶室に行こう」


食堂から出ないと使用人たちからの視線が痛い。


今日はイヴェンヌがいるから無いだろうが、あとで小言が降ってくるのは目に見えている。


食事と言ってもほとんど同席の子どもたちに食べられてしまっていた。


夜食に何か用意が必要になるだろう。


「イリーダ」


「何でございましょうか」


「何か摘めるものを用意できるか?」


「焼き菓子と夜食用のパンでしたらご用意できます」


「茶室に頼む」


「かしこまりました」


イリーダが厨房に向かうのと交代で疲れた表情のマリーが来た。


イヴェンヌの顔を見て安堵した様子だった。


ここまで感情を顕わにするマリーは珍しかった。


「マリー、疲れた様子だけど大丈夫なのかしら?」


「お嬢様、このマリー、大根の桂剥きを習得していたこと一生の不覚でございました」


本当に疲れたのと容赦なく使われたのだろう。


普通なら侍女に同席することは許可しないが、一人にすると厨房にまた呼ばれてしまうと懸念したヒュードリックは同席するようにと指示した。


マリーはイヴェンヌの侍女だが使えると分かれば連れて行かれてしまうのは目に見えていた。


「わたくしは侍女でございますから失礼をいたします」


「未婚の男女が夜に同じ部屋にいるのは好ましくない。同席を頼めるか?」


「そのような事情でございましたら同席いたします」


茶室にはすでに準備が整っていた。


イリーダの手によって人払いも済んでいる。


本当に親しい侍女や使用人とは茶会や晩酌をすることは往々にしてある。


その点では帝国はおおらかなのだとも言える。


「さて、マリーと言ったな」


「はい」


「イヴェンヌ嬢と一緒にそちらに座ってくれ」


「しかし」


「この部屋では身分の違いを咎めるつもりはない。それにイヴェンヌ嬢との話は長くなる」


「マリー座ってちょうだい」


主であるイヴェンヌにも言われて、しぶしぶ座って小さくなっている。


王妃付きの侍女のような図々しさは持ち合わせていない。


幼い頃から一緒にいるのとイヴェンヌの数少ない話し相手だったからイヴェンヌと二人きりならば座って話したこともある。


「まずはアーマイト皇太后のことだが、皇太后と呼んでいるが実際はマジョルード先帝の愛人という立場だ」


「皇族に嫁いでいらっしゃらないの?」


「籍は入れているが男爵家という身分から愛人という立場になった」


説明をされれば納得がいく。


大抵の国では、王妃や皇妃となれば伯爵家以上になる。


国の伝統では侯爵家以上というときもある。


側妃や側室では子爵家や男爵家でも問題はないが近しい親族に伯爵家以上の縁戚があることが好ましいというような暗黙の了解というものも存在する。


庶民では愛人という形になり、生まれた子どもにも継承権はない。


あとあと問題になることから侯爵家もしくは公爵家に預けられることも多い。


本来ならアーマイトが生んだ子には継承権はないがマジョルードが他の女性との間に子どもがいなかったから特例で認められた。


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