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「・・・イヴェンヌ嬢」


「・・・・・・はい」


「集中しているところ悪いが夕食の時間が近い」


「失礼しましたわ。すっかり読みふけってしまいました」


「楽しんでもらえたのなら何よりだ。明日も来ることにしよう」


さりげなくエスコートをして、イリーダの待つ衣裳部屋に向かう。


中では、イヴェンヌのためのドレスを用意して待ち構えていた。


「イヴェンヌ様、動きやすいようにドレスを用意いたしました。どちらになさいますか?」


「このワインレッドが綺麗ね」


「お着替えを手伝わせていただきます」


イリーダが何も言わなくてもヒュードリックは衣裳部屋を出る。


女性の着替えは伴侶であっても同席するものではないと言われ続けてきた。


ここで叔母のマナー教育が余すところなく発揮されていた。


廊下には、後宮から出てこないヒュードリックの側室がいた。


「お前は」


「殿下におかれましてはご機嫌麗しいようで」


「何のようだ、ルイーナ」


「新しく招かれた令嬢のことですわ。殿下の背の君でいらっしゃるのか。確認しに来ましたの」


「そんなことか」


「重要ですわ。側室として娶られてから一度も閨を共にしたことがございませんもの。わたくしは構いませんが他の側室は騒ぎ出しますわ」


ルイーナは公爵家令嬢だが幼馴染の騎士と恋仲となっていた。


騎士の身分は伯爵家の生まれであることと功績から、準侯爵家の身分を持っていた。


結婚するには問題がないがルイーナの父が野心家であったために叶わないと諦めていた。


そんな恋を知っていたヒュードリックはルイーナを側室として迎え、後宮をまとめ上げることを条件に騎士という恋人を持つことを容認した。


「今夜、説明する」


「お待ちしておりますわ」


ヒュードリックは側室に興味が無いということを全員に誤解させておく必要があった。


ルイーナに気があると勘違いをされれば公爵家令嬢であることで次の瞬間には次期皇妃になっている。


それでは二人の利害関係が崩れてしまう。


「・・・イヴェンヌ様のお着替えが終わりました」


「分かった」


イリーダの声が僅かにきつくなっていたのはルイーナとのやり取りを聞かれたせいだろう。


側室と親密であると勘違いされるのも困るが、側室と険悪であると勘違いされるのも困る。


その匙加減が難しいところだった。


「イヴェンヌ嬢」


「ヒュードリック様」


「その色のドレスも良く似合っている」


「ありがとうございます」


「夕食の前に説明しておかなければならないことがある」


「何でございましょうか」


帝国が帝国として力を付けた弊害であり、イヴェンヌのように貴族令嬢としての教育を受けた者には受け入れがたい光景となることが予想された。


先代皇帝マジョルードの妻アーマイトだ。


「皇族は上位貴族との婚姻で権力を強くしてきた」


「国を統べる方なら何もおかしいことはありませんわ」


「ただ、力を付けすぎた皇族を危険視する貴族から皇妃となる者を下位貴族から選ぶようにと進言された」


「ずいぶんとおかしな進言でございますわね」


皇帝が不在のときには代わりを務める存在だ。


下位貴族では問題を対処する力が足りない。


皇族への叛逆と取られてもおかしくはない。



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