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侍女に案内されて招待された令嬢が現れた。


王妃のドレスより華美なドレスを着ている令嬢ばかりだ。


「王妃様、お招きいただきありがとうございますわ。本日は王妃様の新作ドレスの試作を着て参りましたの」


「まぁ、とても素敵だわ。良く見せてちょうだい」


「私たちでは着こなせないドレスですわ。王妃様が着てこそ映えるのです」


「こちらも見てくださいまし、南国の海でしかとれない赤珊瑚の髪飾りですの」


「今日のお菓子も南国なのよ。貴女、わたくしの考えが良く分かっているのね」


ただの偶然だ。


それでも王妃の機嫌を良くする効果はあった。


新作ドレスを作るときは生地とデザイン画を見て選ぶ。


出来上がったもので選ぶことはまずない。


それでも王妃がそれで選んでいるのは、デザイン画では分からないという一言だ。


現物を用意しろという一言から仕立屋の娘たちは試作品を着てお茶会に参加する。


貴族を相手に商売をするからには流行だけでなく、文化にも明るいことが求められていた。


だから、王妃が用意した飴細工がどういうものか理解した上で、おべっかを使う。


「どのドレスも素敵ね。全部いただこうかしら?」


「それは良いことですわ。どれも王妃様のためのドレスですもの。王妃様が袖を通されないということは二度と日の目を見ないということですわ」


「素敵なドレスが埋もれてしまうのは悲しいことだわ。すぐに仕立てるように家の者に伝えなさい」


「はい、王妃様」


王妃は試作品のドレスを見て完成品にしなかったことはない。


全部、注文してきた。


それが仕立屋の娘たちも分かっているから全員が注文を持って帰れるように結託していた。


持ってくるときは同じ物にならないように。


色が被らないように。


宝石が同じにならないように。


「この飾り飴は目で楽しむお菓子ですわ」


「まぁ、優雅ですわね」


「本当に。キラキラと輝いて宝石のようですわ」


「このような綺麗なものを知っている王妃様はさすがですわ」


「帰りにお土産に渡すので持って帰りなさい」


この飴に込められた意味を正確に知っている者には滑稽でしかないが、王妃の機嫌を損ねないために礼を言う。


お茶を飲みながら次のドレスの色は何が良いか、飾りは何が良いか、相談を始める。


そんな話をしているうちにお菓子が運ばれた。


卵白と砂糖を混ぜただけのお菓子だ。


庶民でも食べることのある簡単なもので、王妃のお茶会に出るようなものではない。


持って来た侍女は説明をすかさず入れた。


「王城でのみ飼育されております青い鳥の卵と竹砂糖をふんだんに使ったお菓子でございます。繊細な味を楽しんでいただくために他の調味料を使わないシンプルなものを選んだとのことです」


「わざわざ王城に足を運んだ令嬢には失礼でなくて?」


「王妃様のおっしゃる通りでございますが、料理長が言うには良き物を知っている王妃様や令嬢でなくては繊細な味の違いを理解できないと言うので、お持ちしました」


「つまり、わたくしたちでなくば食べるに値しないと?」


「はい、左様でございます。いくら高級な品を使っても味の違いが判る方でなくば出せぬ料理だとも」


「そう、では頂きましょう。他のお菓子は用意しているのかしら?」


「出来立てをお持ちするためにオーブンで焼いております」


機嫌が良くなり、自分たちでなければ食べられない特別なお菓子だということでお茶会が始まる。



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