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「大丈夫ですわ。今から楽しみです」


「それなら良かった」


「お気遣いいただきありがとうございます」


「暇を潰すと言っても外出は難しいな。書物庫くらいしか案内できないが」


「わたくし本は好きですわ」


「そうか。それなら案内をしておこう」


優雅にエスコートをすると書物庫へと向かう。


中庭を横切るようにして歩き、多種多様な花が楽しませた。


書物庫と言っても建物の一角に存在するわけではなく、専用の建物が存在する。


そのために書物室ではなく、書物庫なのだ。


主要な書物が収められている一室は書物庫分室と呼ばれ何ともややこしいことになっている。


帝国には時々、本の虫と呼ばれるほどに本好きな者が皇族に生まれる。


ありとあらゆる分野の本を読破していき、また忘れないことから外交面で役立っている。


皇帝を基準に前後三代に見渡しても本好きがいないため外交に苦労しているというのは外務の有名な話だ。


そのために本好きな令嬢なら身分に関わらず皇族に嫁げるのではないかと実しやかに囁かれているとかいないとか。


イヴェンヌが寝食を忘れるほどの本好きでなくとも記憶力が良ければ簡単に嫁ぐことはできるだろう。


「今日は無理だろうが明日には皇帝に会うことになる」


「わたくしがお会いできるのですか?」


「寧ろ会っていないことの方がおかしいぞ。いくら傍系といえども皇族の血を持っているのだから会うことに何らおかしいことはないぞ」


「そうですのね。わたくし、直系の者だけが謁見できると教わっておりましたわ」


皇帝に会わせないための王と王妃の策略なのだろうが、逆効果にしかなっていなかった。


側妃は下手に口出しをして自分の手元から完全に離されてしまうことを危惧して黙っていた。


そもそもは口出しすら許されていなかったから黙るしかなかったのだが。


幼い頃から側妃が周辺国の常識というものを教えたが、時々、王妃の息のかかった教育係が都合の良い常識を教えるものだからいたちごっこになった。


今でも他国では常識であることを間違って覚えていることは多い。


王国で読んでいた本は大昔の物語か歴史書くらいしか許されていない。


イヴェンヌを取り巻く調度品関連は王妃が抜き打ち検査をするものだから許可されていないものを用意することが出来なかった。


側妃の部屋も同様で周りのことは側妃が口頭で教えるしか方法がなかった。


普段は凡愚としか言いようがない王もこの時とばかりに能力を発揮していた。


本当に無駄な能力の使い方としか言いようもなかった。


「ですが、今まで帝国に伺っていながら一度も謁見しておりませんわ。たいそうお怒りなのではなくて?」


「大丈夫だ。叔母が事情を説明していたし、顔を見せない程度で怒るほど器の小さい皇帝ではないさ」


「それならばよろしいのですが」


「そんなに心配なら夕食を共にしてみるか?来てすぐに晩餐では息が詰まるかと思って後回しにしていたが」


「急に予定を変えては迷惑になりませんの?」


「イリーダ」


「イヴェンヌ様のお心遣いは杞憂にございます。晩餐と申しましても夕食会にございます。マナーも気にすることなく思い思いに召し上がっていただけます」


夕食会には皇帝、ヒュードリック、前皇帝、前皇妃と遡り、前皇帝の兄弟姉妹に伴侶、子供たちに孫までの大所帯のためマナーなど気にしていられないのだ。


大皿に食事が盛られ思い思いに食べる。


全員が同じ皿から食べるから毒見係も必要ない。


むしろ育ち盛りの欠食児童が多いため出来上がりをすぐに運ばなければ厨房に突撃されかねない。


以前に何度かつまみ食いも発生しており、いかにして早く給仕するかが競争だ。


そのために品数が増えれば量も増える。


だから総出だったのだ。



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