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「夏、でございますか。それまではわたくしはいないと思いますが」


「分からないぞ。釈明が難航しているとでも言えば滞在出来るかもしれない」


「まぁ、それは王国には一大事でございますね」


「多少、慌てさせていても良いだろう。外庭というのは客人を案内するための庭でな。一番豪華だ」


「本当でございますね。綺麗な花がたくさんですわ」


庭に設置されているベンチに腰掛けると通り抜ける風を楽しんだ。


赤や黄という色だけでなく、紫や青という珍しい色彩を持つ花もある。


葉の色ですら緑一色ではなく、橙や茶という具合に変化がある。


「王国とは違う趣がありますのね」


「あとは中庭があるが客人を案内することはないな」


「それで外庭というのですね」


何とも言えない甘い空気が広がっている。


花の香りなのだが、不快な感じは全くしなった。


「わたくし婚約発表パーティにネイビーのドレスを着て行きましたのよ」


「それは屈辱的だな」


「えぇ、すごく、すごく屈辱的でしたわ」


公爵家令嬢であり王家の婚約者でもある自分が流行りのドレスを着ることも出来ず定番色のドレスでパーティに出る。


それも自身の婚約発表パーティだ。


一生忘れることのできないものとなった。


「それなら帝国の流行りのドレスを着てみないか?」


「帝国の流行り?今から仕立てるのは大変ではありませんの?」


「和装は着付けの方法で体に合わせるからな。気分転換にちょうど良いだろう」


「たしか、着物というのでしたかしら?」


「あぁ今年は蝶と牡丹の柄が流行りだ。といっても叔母の娘時代の誂えだからお下がりになってしまうが」


「構いませんわ。帝国では母から子へと受け継がれると聞いておりますもの」


歴代の皇族が着ていた服だけを収納する部屋がある。


物が良いため手入れをすると長く着ることが出来る。


着付けの仕方は男女で異なるため専門の侍女を用意する必要があるが、普段に着る分なら男女ともに着付けの方法を教えられる。


「春だからな白や黄色を基調としたものが主流だな」


「女性の流行りにお詳しいのですね」


「着物の柄で階級が分かるからな。覚えておかないと悲惨なことになる」


「王国では色だけで階級が分かるようになっていましたわ」


「それは、楽だな。それぞれに家紋を刺繍するし、刺繍の誂え方で階級を区別するのだが、意匠を崩さないようにするせいで複雑だ」


着物と帯を選び、近くにいる侍女に渡す。


侍女はイヴェンヌの身長を確認すると着物の丈を簡単に合わせる。


大きい分には何とでも出来るのが着物の利点だ。


「少し丈が長いようですが、問題ございませんか?」


「大丈夫だろう。足元を隠す生活をしていたからな」


「ヒュードリック様にお聞きしてございません。ドレスと着物では足捌きが異なるのでございます。殿方は黙ってていただきとうございます」


「悪かった」


この侍女がヒュードリックの乳母というわけではない。


ただの侍女だ。


そんな侍女が皇族に黙るようにと懇願することは不敬にあたる。


それでもヒュードリックは気分を害した様子はなく素直に謝罪して黙った。


そんな二人のやり取りを見ていたイヴェンヌは自分への問いかけに反応するのに遅れた。



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