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「ほぉ、ドラノラーマとヘルメニアとイヴェンヌが帝国に出戻りか」


「陛下、ドラノラーマ様とヘルメニア様には出戻りで会っていますが、イヴェンヌ様は未婚です」


「さて、どうする?あの王国にコケにされたままで帝国に引き下がれと言うか?」


「陛下、ドラノラーマ様がそのような殊勝なお考えをされる方ではないのは一番ご存じではありませんか」


「いや、王国を守るためにヘルメニアあたりが俺の首を狙うか?」


「陛下、ヘルメニア様は王国よりも旦那様を愛していらっしゃるかと」


「イヴェンヌは、何をしに来たんだ?帝国の血を引いていても王国の令嬢だろうに」


「第一王子に嫌気が差したのではないですか?一度も贈り物をされたことがないそうですし」


陛下と呼ばれる男の言葉にひとつずつ丁寧に相槌を打っていた男は心が折れて打ちひしがれていた。


足元に蹲ってしまった部下に気付いた陛下は、声をかけた。


「どうした?マーロ」


「どうぞ、お気になさらないでください。このマーロ挫折というものを味わうことになっております」


「そうか」


「そうかではありません。ひとつひとつお返事をして差し上げたというのにマーロの言葉は素通りしていたのですか?」


「独り言のつもりだったからな。まさか、分かり切ったことに返事をする奴がいるとは思っていなくてな」


「しっかり聞こえていたのではありませんか」


ジョゼフィッチ陛下とその腹心マーロのやり取りだ。


幼馴染であり、乳母兄弟のため立場というものを気にした配慮はなかった。


「冗談はさておき、妹はどう言ってくると思う?」


「ドラノラーマ様でしたら宣戦布告を止めることなく推進されるかと思います」


「妹は好戦的だからな」


「はい、好戦的でありますが、同時に思慮深い方でございますから、はい、陛下と違って」


「何か言ったか?」


「はい、申しました」


「・・・そこは否定するところだろ」


「わたくしめは嘘が吐けない性格でして、何分、ご容赦を」


呆れた顔で腹心を見つめ、どこか憎めない性格にため息をついた。


気の置けない部下であるから好きなことが言えるのだが、この嘘の吐けない性格でよく渡り歩けるなとしみじみ思う。


「問題はイヴェンヌだな」


「ヘルメニア様ではないのですか?」


「ヘルメニアは今回のことが落ち着いたら公爵家に戻す。今は実家への静養だ」


「ほほぅ、ヘルメニア様の腹には、ややこがいらっしゃるのですね。めでたいですね」


「誰がそんなことを言った?」


「嫁いだ女性が実家に戻るのは妊娠したときと離縁したときと習いましたので」


「・・・実家への静養は口実だ」


「なんと、では家出でございますか!」


「ちょっとヘルメニアについては黙っておけ」


「かしこまりました」


どこか疲れるやり取りをしなくてはならない陛下は苦労性なのかもしれない。


この腹心を傍に置いておくのは、この会話のずれている感じで伏魔殿に潜む魑魅魍魎の相手にちょうどいいからだ。


「それでイヴェンヌだ」


「はい、なかなか良いお年ですので、早急に嫁ぎ先を見つけて差し上げないと行き遅れてしまいます」


「そうだな。傍系とは言え皇族の血を持ち、王国の公爵家の生まれだからな。あまり下級では持て余すな」


「もしや、陛下が娶られるのですか?」


「政略結婚でもないのに息子と年の近い娘を娶る趣味は無いぞ」


「それは良かったです。よもや陛下が小児性愛者であったら何と言い訳をしようと考えてしまいました」


「誰にだ、誰に」


こんな会話をしていると好戦的であり、宣戦布告を簡単にするように見えないが、ひとたび戦場に出れば、獅子戦鬼と呼ばれるほどに恐れられている。


恐れないのは遠方の国の戦慄の戦女神くらいだが、まだ戦ったことはない。



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