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上座には王が座るための椅子とその両脇に、主役となるルシャエント第一王子とイヴェンヌ公爵令嬢の椅子が置かれている。


少し下がったところに王妃と側妃の椅子が置かれていた。


主賓が第一王子と公爵令嬢であるから間違いではない。


貴族に生まれた者にとって婚約発表は義務だ。


それを分かっているから招待客は、すでに会場で思い思いに会話を楽しんでいる。


豪華な扉が開かれると王が妃二人を従えて入場するところだった。


会話を止めて拍手で迎える。


貴族同士の婚約発表ならこんなことはないが、王家が絡んでいる以上、威厳というものは必要だった。


王が椅子に座り、口上を述べる。


「この社交界(シーズン)の始まりの良き日に我が息子の婚約発表をできることを感謝する。これからも貴族として、我が国を支えてくれることを願う。乾杯」


口上の内容は王に任されており、その時の王の力量というものが試される。


書記係に頼む王もいるが、この王は自分で考えたという。


口上の中に令嬢のことが一切、触れられていないことに気付いた貴族が何人いたが、数までは定かでない。


本来ならすぐに主役の二人を会場に入場させるのだが、王は貴族たちからの挨拶を優先した。


王妃も挨拶を受けることを好む質であり、諫める立場を放棄した。


側妃はすぐに気付いたが、王が側妃の言葉を聞いたことがないために放置した。


この場が、次代を担う二人のお披露目になるということは、王と王妃の頭の中にはない。


上位の貴族は主役の二人が入場して来ないことを(いぶか)しみ、下位の貴族は爵位を上げて貰おうと王と王妃に媚びを売る。


本当に婚約発表パーティなのか疑いながら扉の向こうではイヴェンヌが待機していた。


そんな思惑に気付くことなく、王と王妃は楽しんでいた。


側妃は媚を売ってくる貴族を冷めた目で見て適当にあしらう。


扇の向こうで欠伸の真似事でもして見せれば面白いように青ざめて引き下がる。


機嫌を損ねて爵位を剥奪されると危惧しているのが手に取るように分かる。


媚を売った程度で爵位を剥奪したことなど、一度もないが権力というものは、時として独り歩きをする。


そのことを知っている側妃は、煽てられて図に乗っている王と王妃が、傀儡に成り下がっていることも見ないふりをしていた。


多少の放蕩は国を傾けなれば放置するに限る。


下手に節制を強いれば反発されることは必須だった。


そして主賓がいかに若い二人であっても最高権力者である王の行動を諫めることは側妃にはできない。


王妃や宰相なら可能だが、王妃は王と同じであるし宰相は自分の立場を死守することで一杯だ。


こんな王の息子の婚約発表に招待されても喜ぶ貴族は下位くらいだ。


上位は早く終わることを望み出席したのは、公爵令嬢が婚約者だからという以外に理由はなかった。


「そろそろイヴェンヌが痺れを切らすころかしらね?」


あの王の息子であるから無事に終わるとは到底思えなかった。


何かが起きると確信できた。


扉が開かれないことに貴族たちが怪しみだしても王と王妃は自分のもとに貴族を呼び寄せた。



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