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「今日は、この柄のドレスの気分ではないわ。刺繍を少なくして」


「かしこまりました」


「あぁ、髪飾りは蝶にして、わたくしが軽やかに見えるように」


「かしこまりました」


王妃の部屋から着替えを運び、側妃の部屋で仕度をする。


たっぷり時間をかけたあとに朝食のために食堂へ向かった。


話をするために部屋へ襲撃した相手の側妃がすでに王城内にいないということ考えずに。


「朝食が済み次第、側妃と話をします。わたくしの部屋に来るようにと申し付けてちょうだい」


「かしこまりました」


すでに側妃が出立しているということを侍女間で共有していない。


それは王妃付きの侍女の間でも変わらない。


王妃から聞かれたことに答えるとその侍女は褒美がもらえるからだ。


だから情報は自分だけのものにしておきたい。


第一侍女長ですらそういう考えだ。


そうやって下位貴族の娘は王妃に気に入られ爵位を上げた例もある。


「今日は、肉が多いのね」


味について何か言うでもなく、食べ進める。


食べているときだけは静かなため給仕は時間をかけて準備をする。


サラダだけで三種類も用意しない。


王家の食事を知らないまま嫁いだ王妃への給仕からの嫌がらせだ。


王と共に食事をすることはあるが特別な献立だと説明されれば自分との違いに疑問を持つことはない。


「昼は少なくするように料理長に伝えてちょうだい。あと、側妃は部屋にいるのかしら?」


「料理長には伝えます。側妃様は出立されて王城にいらっしゃいません」


「わたくしを待たせた挙句に出立しているとは何事です。即刻戻しなさい」


「間に合わないかと存じます」


「何を言うのです。早馬を使いなさい。それくらい知恵を出すのです」


「いえ、すでに王国の国境を越えて帝国に入国していらっしゃいます」


「なんと、一国の妃が亡命だなどと、すぐに王様に会いに行きます」


王のいる執務室にすぐに伝達された。


食事が終わり、いつもなら服を着替えるのだが、今回は省略した。


王妃付きの侍女は黙ってついていく。


「一体、側妃は何を考えているのです」


「王妃様、気をお鎮めくださいませ」


「側妃とは王の傍にいるのが仕事であるはずです」


「王妃様、王が良きように取り計らってくださいます」


執務室に到着すると、王付きの侍女が扉を開けた。


王の執務室に王妃が出入りすることが頻繁になり過ぎてノックが無くなった。


「王妃、どうした?」


「どうしたなどと悠長に構えていてはなりません。側妃が帝国に亡命したのですよ。このような愚行を止めずしてどうするのですか?」


「止めるも何も帝国は側妃の生家、亡命ではなく里帰りではないか。それに今回はルシャエントの暴走を弁明し、帝国と対等の関係を続けるために側妃が我が国のために朝一番で向かった。なに目くじらを立てる必要がある?」


「あら、側妃の生家は帝国でしたのね。わたくし聞いても隣国の姫だと聞いていたのでてっきり小国の姫だと思っていましたのよ」


側妃が娶られるときに帝国から輿入りすると国中お祭り騒ぎだったが、妊娠中であった王妃は自分の座を脅かす存在に興味を持たなかった。


勝手に隣国の姫だと思っていたのだ。


帝国も隣国であるから間違っていないため誰も訂正しなかった。


「それでも挨拶も無しに出立するなど無礼でありますわ。わたくし昨日、寝ずに待つことになり大層疲れましたのよ」


「それはいかんな。王妃の美貌に陰りが出てしまう。側妃には戻り次第、すぐに挨拶をさせよう」


「帝国の姫ならば、わたくし側妃に土産として美容液が欲しいと伝えれば良かったですわ」


「戻ったら買いに行かせれば良いであろう」


「それは良い考えですわ」


「それで箝口令は布けたのか?」


「はい、王のご命令通り流布いたしました」


婚約発表パーティで第一王子は婚約者を傍に仲睦まじい姿を見せていたというものだ。


間違ってはいない。


婚約者というところに個人の名前を入れていないから話を聞いただけの者ならイヴェンヌだと考える。


第一王子は確かに婚約者と仲睦まじい姿を見せていた。



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