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「おい、誰か、誰か来い」


通常なら部屋にベルや呼び紐があるが無いため扉を叩く。


一応、警備のためという名目で兵が一人立っているが、中から何があっても開けないようにと命令されているので、応答はない。


開けたくても鍵を持っていないので、開けられない。


この部屋に入った王族が最期を向かえることができるようにと外との繋がりは極力断たれている。


差し出した食事に手を付けられていない場合のみ鍵を持つ者に連絡をする決まりだった。


「この扱いは何だ。食事は扉の横の小窓からパンとスープと果実だけ。これでは王族として働くことができないではないか」


「謹慎というのは食事の内容も含めてのことではありませんか?お義父様は愛する者を支えるための覚悟というものを教えてくださっているのよ」


王族としての責務を先に放棄したことに気付いていない。


部屋に監禁された状態での王族としての労働というものが何かを反対に教授願いたいと家臣たちは言うだろう。


食事の内容に文句を言っているうちは永遠に気づくことはない。


「ベラは思慮深いな。ベラのような王妃を迎えることができて僕は幸せ者だ。一生、僕が支えるよ」


「わたしも支えるわ。夫婦というのは支え合ってこそのものよ」


これが一般的な庶民だったら良かった。


ベラは庶民ではあるが商会の娘であるから裕福な部類に入る。


ルシャエントを恋人に選ばなければ男爵家くらいには持参金を積めば嫁げた。


地方であれば子爵家も夢ではなかった。


ベラの掲げる理想というものを突き進むこともできた。


だけど、王と王妃では、互いだけを支えれば良いというものではない。


民を支えるのが王と王妃だ。


「でも、お風呂に入って着替えたいわね」


「そうだな。食事を持って来た者に準備をさせよう」


「あとベッドも新しくして欲しいわ」


「それも指示せねばならんな」


この部屋にいるのが自己を見つめるための時間だということは理解しているが、そのことに気づけばあとは何をしても許されると勘違いしている。


未だに指示をすれば王族としての生活が保障されていると信じて疑っていない。


だから部屋の中を探して見つけた真っ白な便箋と封筒とペンの使い道を細かな要望を伝えるのに備え付けられているものだと勝手に思っていた。


「お義父様とお義母様に婚約発表のやり直しをお願いしなくてはいけないわ。イヴェンヌ様に台無しにされてしまったのだもの」


「そうだな。そのときは新しいドレスを仕立てさせよう」


「楽しみだわ。王のただ一人の子どもなら次期王になるのは決まっているもの。盛大にしてもらわなければいけないわね」


謹慎が解ければ自分たちの婚約発表が行われると信じて疑わない。


自分たちは必ず祝福されると思っていた。


「・・・だが、食事が遅いな。料理番は何をしている」


「そうね。お腹が空いたわ」


すでに日は登り、昼近くなっているが、王城内はそれどころではなかった。


そんな騒ぎは耳に届くはずもなく、食事を持ってこない使用人は首にしようと勝手に考えていた。



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