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人が通らないと言っても立ち聞きをし続けることはできないから仕方なく扉を叩いた。


このままだとお茶が冷めてしまい立ち聞きしたことに気づかれてしまうかもしれないからだ。


「お茶をお持ちしました」


「うむ、そこにおけ」


「かしこまりました」


手紙を依頼できるような雰囲気ではなかったから諦めて部屋を出ようとした。


王妃には廊下で出会った王がお疲れの様子だったから王妃からの差し入れとしてお茶を淹れていたと言い訳をしようと考えていた。


だから王が呼び止めた内容に瞬時に反応できなかった。


「そこな侍女、年はいくつだ?」


「・・・・・・二十一になります」


「少々トウが立っておる年だから言い淀むのは目を瞑るにして、今宵、寝所に参れ」


「王様!?」


「あれもだめだ、これもだめだと、口煩いな。侍女を抱いたところで何が問題だ?わしは王だぞ」


父王が王妃に憚ることなく、お気に入りの女を見つけては寝所に連れ込んでいた。


そんな様子を見てきたから今の王妃が愛妾を作ることに目くじらを立てているのに不満を持っていた。


「失礼いたします」


ベリセーは黙って頭を下げて部屋を出た。


まさか王が好色だとは思ってもみなかった。


愛人の一人や二人くらいは王妃に気づかれないように囲っているだろうと予想はしていたが、堂々と城の中で手を出していたとは思わなかった。


急いで王妃のいる部屋に戻ると中は戦場のようになっていた。


起きた王妃が誰も世話をしに来ないことに腹を立ててベッドから離れたところにある花瓶や水差しを床に投げたことは想像に難くない。


「ベリセー、どこをほつき歩いていたのです!?」


「申し訳ございません。王様に王妃様からの差し入れのお茶を持って行っておりました」


「わたくしの?」


「はい、お疲れのご様子でございましたので王妃様が調合されましたお茶を出しておりました」


「そう」


少しだけ腹立たしさを収めた王妃はソファに座りテーブルのお菓子を食べた。


朝から何かにつけてお菓子を食べているが誰も咎めないのだから体形には如実に現れる。


「仕立て屋を呼んでございます。ドレスはこちらでよろしゅうございますか?」


「そうね。レースのリボンを胸元にあしらいなさい。如何に仕立て屋でも肌を見せるわけにはいきません」


「かしこまりました」


右往左往していた侍女たちはベリセーの顔を見るなり一目散に部屋を出て行った。


ベリセーとしては、そこまで侍女の仕事を放棄したいのなら辞職すれば良いと考えている。


「次のドレスは楽しみでございますね」


「楽しみも何も黒ばかりでは気鬱です。嫁いだころは王家のみが纏うことが許される黒に心を動かされましたが今となっては華やぐこともありません」


「王妃様くらいのものでございましょう。黒となれば喪服を思い浮かべるところを華やかに着こなしていらっしゃるのでございますから」


「王妃たるものドレスくらいは着こなせて当然です」


薔薇のような形にリボンを作ると胸の谷間の上にくるように結ぶ。


こういった趣向を好む王妃はリボンで花の形を作れない侍女を次々に首にした。


「こちらでいかがでございましょうか」


「いいでしょう。ベリセー、同席しなさい」


「はい、畏まりました」


応接室では高級なお菓子を堪能していた仕立て屋は飾っている調度品の中から小さな置物をいくつか鞄に忍ばせていた。


案内をしたときに応接室を見ているから何が無くなっているのかはすぐに分かった。


いくら贔屓にされているからと言って盗賊のような真似をしている仕立て屋に気づかないほど、王城の使用人の質は落ちている。


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