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「しかも悪阻が酷くて食べ物の好みが変わったから男の子が生まれるだろうって噂よ」

 

「よく王国の話が手に入ったわね」

 

「私の妹が王国の城勤めなのよ。それで情報を流すために王子様と愛人の世話係になったのですって」

 

「他国のことながら、それで良いのかしら?心配になるわ」

 

「あら他国の情報を掴むために間者を送るのは常套手段よ」

 

ビルシーの一家は階級こそ庶民だが長年帝国に仕えている影の一族だ。

 

他国に侍女として潜入し情報を持ち帰る。

 

ときどき仕えた主人が侍女冥利に尽きて任務を放棄する者がいるが帝国に不利にならなければ良しと黙認されていた。

 

「今回は帝国での醜態をさらしたあとにどうなったか知りたいからだけど」

 

「これ以上は必至で隠すでしょ」

 

「それがね、城の侍女が辞めていっているらしいのよ。だから妹が側付きになれたんだけどね」

 

重鎮の側で仕事するのなら自国民を優先する。

 

さらに王国びいきの王妃が他国の出身の侍女を側に置くことは考えられない。

 

それだけ人手不足だということを示していた。

 

ビルシーの妹は混乱に乗じて世話係の座を射止めていた。

 

「ドラノラーマ様が取り仕切っていたから城勤めしていた侍女も多かったでしょうね」

 

「そこのところはどうだったの?マリー」

 

「私はお嬢様付きだから詳しくは知らないけど勢力は二分してたかな」

 

二分と言っても占める割合は平等ではない。

 

八割が王妃の機嫌取りのために入った者ばかりだ。

 

王妃の権力が危うくなれば脱兎のごとくいなくなるだろう。

 

「ドラノラーマ様に付いていた侍女は約二割ね」

 

「少ないわね」

 

「人事権はすべて王妃が握っていたもの。二割でも多いくらいよ」

 

ドラノラーマが嫁いだころには周りは敵だらけだっただろう。

 

それを長年かけて準備したのだからその手腕は脱帽ものだった。

 

「それにドラノラーマ様に付いた侍女は全て次期王妃になるイヴェンヌ様のための侍女だったから表立って勢力をつけることはできなかったのよね」

 

「そんなに前からドラノラーマ様は考えていらしたのね」

 

「王と王妃があんな感じでしょ。だからとにかく次期王妃には国を支えられるだけの令嬢を置きたかったのよね。そのために気の置けない侍女で固めていたのだけど、無駄になったわね」

 

王国の持つ薬草目当てで側室となったが、国のことを考えていなかったわけではない。

 

王や王妃に対しては情も何も持っていないが、そこに住むことになっている民のことは守るべきものだと思っていた。

 

だから次代に任せられるように水面下で行動を続けていた。

 

それら全てを無駄にしたのは、王と王妃自身ではあった。

 

「ドラノラーマ様もイヴェンヌ様もいない王国の行く末は決まったも同然ね」

 

「それに加えてマセフィーヌ様も暗躍されているみたいだし」

 

「国盗り好きな姫様たちだものね」

 

戦争だけが国盗りではないということを証明するために同盟を結んだことのない国と帝国が有利な条約を結んでしまったり、貿易をしたりと政略していくのが好きな姉妹だ。

 

ジョゼフィッチは単純に力で国盗りをしたいタイプだが、姫たちは知力でもって国盗りをしてしまう。

 

揃いも揃って好戦的ではあった。

 

「とにかく今はヒュードリック様の初恋を見守りつつ、イヴェンヌ様に心安らかに過ごしていただくだけよ」

 

「何があっても皇太后に邪魔をさせてはダメよ」

 

「帝国侍女の腕の見せ所よ」

 

マリーは何か相談をする相手を間違えたのではないかと不安になってしまった。

 

だが心強い味方ではあった。

 

王国で一人でイヴェンヌのために動いていたマリーには嬉しい出来事だった。

 

「そのためには、イヴェンヌ様には美しく着飾っていただかないといけないわね」

 

「マリー、イヴェンヌ様は何色がお好きなのかしら?」

 

「刺繍は?レースは?」

 

質問攻めになり、夜遅くまで解放されなかった。


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