その2
「なぁおい聞いたか?この先の最前線はかなりの激戦らしいぜ」
「聞いた聞いた毎日かなりの規模で被害が出てるらしいぜ」
「そりゃあ百戦錬磨の栃木軍だぜ俺達がかなう相手じゃねぇよ」
「違ぇねぇや」
前線へ向かう輸送車両の中では帝国兵が雑談している
さっきから度々出てきている栃木軍と言う単語だが、正式名称は「栃木多国籍軍」関東にある国の殆どを征服した大国栃木の正規軍である
栃木はヒロシマ事変直後から活動を始めていた国家のため保有戦力は五本の指に入る軍事大国であり、関東では最強と言われている
恐ろしいのは、その圧倒的物量による人海戦術である
科学技術では勝る我が国でも、あの規模の物量では手も足も出ないのである
「まぁそもそも相手の物量作戦が驚異的とはいえ帝国の作戦にも問題があるよな」
「全くだ、いくら首都に近いからとはいえ絶対死守の縦深防御メインの防御ドクトリンじゃなぁ」
「いつになっても拉致があかねぇよ」
「なぁなぁ、これは俺がちょいと小耳に挟んだ話だが近々新戦法を取り入れた大規模ドクトリンが行われるらしいぜ」
「それは本当か?」
「あぁどうやら本当らしい」
車両の中は同じ部隊員の雑談で少しガヤガヤしている
「敵襲ッ!敵襲ッ!」
突然の報せに隊員の表情に緊張が走る
ババババババ
航空機のプロペラ音が聞こえてくる
「敵機直上急降下ッ!!」
航空機のエンジン音がかなり近づいてくるそして...
ガガガガガガガガガガガ
機銃の掃射音が響き耳を劈く悲鳴が聞こえる
「ギャァァァァァァ」
「ウァァァァァ」
「姿勢を低くしろ!衝撃にs」
上官が指示を言い終わらぬうちに頭をぶち抜かれ血飛沫が飛ぶ
周りの隊員達がバタバタと倒れていく
そして数時間にも思える一瞬が過ぎプロペラ音が遠ざかる
俺は幸いにも無傷だった
周りを見渡すとさっきまで雑談していた隊員達が無残な死体と化していた
自分も含め生き残りが約10人
重傷者が2人と死者が21人と我が小隊はほぼ壊滅状態だった
それでも車に損傷は無かったらしくまた進み始める
長々い沈黙が続く
「これが戦争か...」
俺はボソリと呟く
そんな呟きはトラックの騒音に掻き消されてしまう
それから20分程達トラックはかなり活気のある場所に着いた
帝国軍の前線基地だ
約8師団の人員が前線に向け出撃する拠点であり宿舎や野戦病院 小規模な娯楽施設など前線にしては充実している
しかしすぐ側には死体積み上がり山になっている
むせ返るような腐敗臭が辺り一面に漂っていた