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◇4 魔法講習(火)

 朝になった。

 ぐっすり眠れたな。

 ベッドはあまり寝やすいものじゃなかったけど。

 

 とりあえずラルフと合流して食堂に行くか。

 そう思いラルフの部屋に行くと、既にもぬけの殻だった。

 あれ? もしかして俺の方が起きるのが遅かった?

 早起きには割と自信あったんだけどなぁ。


「おはよー。よく眠れたか?」


「ああ、よく眠れたよ。おはよう」


 食堂に向かってみると、ラルフが何も食べず席に座っていた。

 待っていてくれたらしい。

 俺が席に着いたと同時に給仕さんが食事を運んできてくる。

 昨晩と同じような食事だ。

 堅く黒いパンとチーズと腸詰。

 量はたいしてなかったのでほんの数分で食べ終わる。

 

 先に食べ終わっていたラルフは、俺が食べ終わったのを見計らって話かけてくる。


「よし、じゃあ今日は森に行くぞ。鹿を一頭でも仕留めれば銀貨三枚だからな」


「ああ、了解した。魔法を教えるのも忘れないでくれよ?」


 そういうとラルフはもちろんだ、という風にうなずいた。

 

 一度部屋に戻り身支度をしてから宿の外に出る。

 門の近くの宿なので、数分歩いたらすぐに門にたどり着いた。


「もうパーティを組んだんですね。今日は何をするんですか?」


 門番は昨日と同じ人だった。


「狩りに行こうかと思いまして。仲間になった――ラルフって言うんですけど――彼についでに魔法を教えてもらえることになったんです」


「へぇ、魔法か。魔法が使えると幅が広がりますからね。是非習得まで頑張ってください」


「はい、そちらも門番、頑張ってくださいね」


 会話を終え、門番と別れる。

 

 向かったのは昨日行った正反対の森。

 鬱蒼とした雰囲気はなく、小鳥がさえずっているような場所だ。

 ラルフと二人で雑談をしながら歩いていたらすぐについた。

 さすがに浅い場所には動物は出ないので、奥に入っていく。


 少し進んだところに日が当たる過ごしやすい場所があった。

 

「ここら辺でいいんじゃないか?」


「おう、じゃあここにするか」


 ラルフに確認を取り、ここで魔法講習を行うことに決める。

 俺が近くにある切り株に腰を掛けた後、ラルフは言った。


「よーし。ではさっそく魔法を教えていこうではないか!」


 なんか口調変わってるぞ。ちょっと自慢気な顔になってるし。

 俺がちょっとジト目になっていることも気にせず、説明を始めた。


「まずは、体内の魔力を感じるんだ。それを外に放出するのが魔法だ」


 体内の魔力、それはこの世界に来た時から少しだけ感じることができていた。

 新しい体になったおかげだろうか?


「外に放出するときに魔力を火や水に変換するんだ。試しにやってみるから見てろよ?」


 そう言ってラルフは腕を上げ、手のひらを上にして集中し始める。

 するとラルフの手のひらの上にライターの火ぐらいの小さな炎が出た。


「おおお、これが魔法か!」


 俺がそう言ったのを聞いたラルフは調子に乗り、手のひらを近くにある木に向けて火を飛ばした。


 木が燃えた。

 俺は慌てて木に近寄り、蹴って火を消す。

 何考えてんだこいつ!


「あ、ごめんごめん。なんも考えてなかったわ!」


 そういってケラケラ笑いだした。

 うん、こいつ危ないわ!

 俺は心の中の危険人物リストにこいつの名前を載せておくことにした。

 

 まぁ、魔法が大体どういうものなのか分かった。

 でも――


「変換ってなんだ? どうやってんの?」


「んー……そうだなぁ、簡単に言うとイメージだな。魔力を手に集めるイメージをした後、火打石か何かで火が付くところをイメージするんだ。火そのものをイメージしてもできるんだけど、最初は難しいから着火イメージでやってみろよ」


 なるほど、少し理解できた。

 こういうことか?

 俺は全身にまんべんなく広がっている魔力を手のひらに集めるイメージをした。

 全身の熱が右腕に、右腕から手のひらに集まった……気がした。

 全身の魔力すべてが手に集まるイメージ、集中をする……


「きたっ………!」


 おそらく手に体中すべての魔力が集まった。手が熱い。

 よし、これを火に変換……変換……

 俺がイメージするのはアルコールランプ。

 小学校の時実験で使ったっけ。懐かしいな。

 そんなことを頭の隅で考えながらも集中。

 そこで俺は思い出した。

 アルコールランプってマッチで火をつけるよな?

 単体じゃ無理じゃん!ってことで、まずマッチで火をつけて、それをアルコールランプに移して火を大きくする。

 そういうイメージをした――瞬間。


 ボッ!という音が聞こえ、俺の手のひらの上には野球ボールくらいの大きさの炎ができた。


「きた! 魔法だ!」


「おお、はじめてにしては大きいな! さすがオレのパーティメンバーだ!」


 なぜかラルフも誇らしそうである。


「よし、空に向かって飛ばしてみろ。オレは弓で矢を放つようなイメージでやってる」


 なるほど、飛び道具をイメージか。

 うーん、そうだなぁ。

 ハンドガン……かな?

 俺は地球にあった拳銃をイメージすることにした。

 ゲームで使ったことあるからイメージはある程度できる。

 手のひらと炎の間で火薬が爆発、生まれた力が火球に伝わり高速で弾け飛ぶ。

 そうイメージし、手のひらを上にしたまま、腕を振り上げた。

 直後、ビュンッ!という音とともに火球が飛んで行った。

 手のひらと火球の間で本当に爆発が起こった。

 手の開いた方向に起きたので手を火傷するようなことはなかったが。

 

 弾け飛んだ火の玉を見て感動する俺と驚愕するラルフ。

 数秒たち、飛んでいた思考をこっちに戻したラルフが目を輝かせて言った。


「ギル、おまえ魔法使いに向いてるぞ! 初めての魔法でこんだけすごいのを放った奴は見たことねぇ!」


 

 どうやら俺の地球の知識はかなり役に立ってくれるようだ。




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