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◇31 予選二回戦目

更新遅れました……申し訳ございません。

「『雷光』のギルさん、Bリングにどうぞ」


 レフリーから声がかかる。

 

 正直言ってさっきの戦いの疲れが抜けていないのだが……まあ仕方ないか。

 

 すっかり重くなった身体を起き上がらせ、リングの上に上がる。

 対峙したのは赤い髪の男。

 俺より少し身長の低い少年だ。

 レフリーによるとコナーというらしい。

 

「『雷光』、よろしくなっ!」

「あ、ああ、よろしく」


 腕を上げ、気楽な感じで挨拶をしてきた。

 俺も比較的友好的な感じで接することが……できたと思う。


「それでは試合開始!」


 その掛け声とともに、赤い髪の少年はこちらに向かってくる。

 どうやら速攻をかけたいらしい。

 だが、速度はそこまであるわけではない。

 体力温存のためにも雷纏は発動しなくても大丈夫だろう。


「そらあああ!」


 普通に拳で攻撃してきた。


 この大会って魔法の大会……なんだよな?

 さっきの戦いも拳と拳で語ったようなもんだった。

 ああ、でも魔法だけで戦ったらそりゃ面白くないよな。

 遠距離からの打ち合いだけじゃ盛り上がらないだろう。

 多分そういうことだ。


 向かってきた拳をこちらの手を添えて受け流す。

 このくらいなら余裕だ――


「うおっ、あぶねっ!?」


 こちらに向かって放った右手ではない、左手から小さな火球が飛んできた。

 左手の動きは最小限で、警戒していないと気づかないようなものだ。

 だが、右に転がり込むことでなんとか回避した。

 これは油断できないな。


「くそっ、外したかー」


 少年は悔しそうに言う。

 

「今の攻撃、結構危なかったよ」


「『雷光』にそう言ってもらえるなんて光栄だね!」


 そう言い、今度は正面から火の魔法を飛ばしてきた。

 バレーボールサイズのものが、継続して飛んでくる。

 当たったら――まあ火傷するだろうな。

 よし、全部避けるか。


 映画のワンシーンであるかのようなアクロバティックな動きで避ける。

 自分でもこんな動きができるなんて驚きだ。

 雷纏での動きを身体が記憶しているからこそできる技だろう。


 そして、このまま撃ち続けても意味が無いと感じたのか、コナーは火球を撃つのをやめた。

 

 ――よし、今だ。


 避けている間に構築していた雷の一閃を放つ。

 さすがに避けながら大量の魔力を集めることは困難だったため、威力、速度ともに抑え気味だが、ある程度の体力は削ることができるだろう。

 

「うっ、ぐうぅっ」


 結果はもちろん命中。 

 抑えめな速度と言っても雷であるがゆえにそれなりの速さを誇るのだ。

 そして、雷特有の痺れに襲われたコナーには大きなスキができた。

 それを見逃すわけにはいかない。


 俺の必殺の一撃を放つ。

 威力は人間に当てるように弱めてあるが、ドラゴンに大穴を開け、先日襲ってきた冒険者を気絶させるほどの一撃。

 勝利の確信を持ち、距離を速やかに詰め、コナーを殴る。

 こちらも命中。

 一瞬、ここぞという場面に魔法ではなく通常の物理的攻撃が来たことに驚いたコナーだったが、実際に受けてみて気づいたのだろう。

 『負けた』と、どこか悔しそうで、なおかつ清々しい顔をした。


 

 起爆。

 雷の爆発が起こる。

 それは威力を抑えたために、地味だ。

 だが、人を倒すには十分だったらしい。

 コニーは膝から倒れてしまった。


「勝者、『雷光』ギル選手!」


 レフリーの声が響き渡る。

 

 今回はあまり体力を使わなかったな。

 まあ、毎回アルダスクラスの実力者が出てくるなんてこともないよな。

 もし出てきたらソレはソレできつすぎる。


 そんなことを考えつつ、壇上から降りる。

 ふと、Aリングの試合が視界に入った。


 ――『斬水』のミゲル。

 彼が戦っていたのだ。

 もちろん使っているのは水魔法。

 相手の使う魔法は土魔法で、水ではその堅い守りを抜くのは困難だと普通ならば考えるのだが――

 

 ――土魔法を貫通した。

 そして、そのままの勢いで対戦相手を水で押す。

 水に吹き飛ばされた相手は倒れ込み、完全に気絶していた。

 壁を作っていた土魔法は決して脆くはなかった。

 水魔法が強すぎたのだ。


 凄まじい。

 さっきの戦いでも思ったことだが、まさかあれだけの純度の高い壁を破るなんて。

 こんな子が本当に首席でも次席でもないのか?

 シードに選ばれた子達が本当に恐ろしくなってきたぞ。


「げっ」


 目があった。

 俺も『雷光』として目立ってるから目に留まったのかも知れない。

 ミゲルは俺と目があった後、すぐにニコッとした笑みを浮かべた。

 そこには強敵と出会えることのできた喜びが写っていた。

 

 あんまり関わり会いたくないんだけどなぁ。

 あんだけ強いんだし、あの水魔法を破る方法なんて思いつかない。

 ゴリ押しになったらおそらく負けるのは俺だ。

 今一番当たらないでほしいと思う相手である。

 だからあまり接点は持たないようにしたかったのだが……


 笑顔を向けられたからには返さねばなるまい。

 俺も愛想笑いを浮かべて返した。

 そして、すぐに先程まで休憩していたスペースに戻る。

 どうやら誰も俺が使っていたスペースにいないようだ。

 落ち着いて腰を下ろす。


 予選は後一試合。

 無事越えられるといいんだが。 

 



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