表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/45

◇29 横暴な冒険者


 俺たち三人は冒険者ギルドに来ている。

 王都のギルドとだけあって、エーオスのものより三倍近く大きい。

 

「うおお、やっぱり遠目でみるのと近くでみるのじゃ違うな」


 ラルフも目を見開いている。

 

「よし、中に入って依頼を確認するか」


「おう」


 俺の声かけにラルフが答える。

 そのままギルドの扉を開け、中に入った。

 

「あ? なんだテメェは」


 扉を開けた瞬間、でかい物体にぶつかった。

 何かと思って上を見ると、目元に縦の傷が入っているおじさんだった。


「あ、すみません」


 すぐにぶつかったことを謝る――が。


「あぁ? ぶつかっておいて謝るだけかよ。 礼儀がなってねぇな。おい、小僧。金貨三枚で許してやる」


 は、はぁ!?

 金貨三枚って三十万だぞ!?

 ぶつかっただけで三十万!?


「あの、ぶつかったのはこちらですが、さすがに金は払えませんよ」


「はぁぁぁ。ほんっとうに礼儀がなってねぇな。俺様の名をしっているか?」


「いえ、知りませんけど」


「ゴルドっつうんだ。さすがにここまで言えばわかるだろ?」


「…………? ラルフ、わかるか?」


「いいや? まったく」


 よくわからなかったので、ラルフにも訊く。

 ラルフも知らないようだ。

 どういうことだ? 本当に。

 そんな感じで険しい顔をしていたら、ゴルドと名乗った男の顔がどんどん赤くなっていく。


「おい、クソガキども。テメェらは今から処刑だ。表にでやがれ!」


「は、はぁ」


 そう叫びギルド前の階段を降り始めたのであいまいな返事をしてついていく。

 俺の後ろにはラルフとミルもいる。

 はぁ、本当はギルドで依頼受けて貯金したかったんだけどなぁ。


 ゴルドについて行って一分も立たないうちに柵で囲まれた円形の広場につく。

 ここは確か……決闘に使われる場所だったっけ?

 

 王都には決闘場というものがある。

 都内でのいざこざはどうしても起こる。

 時には血気盛んなものたちが剣を抜いての殺し合いに発展することもあるらしい。

 そこで、人が死ぬことのないようにルールを設けて決闘場を作りだしたのだ。 

 そのルールとは、

 ・体術、人が死なない程度の魔法のみ

 ・一対一

 ・降参 気絶時に勝敗を決する

 と言ったものだ。

 そしてゴルドは俺たちをここに連れてきた。

 つまりだ、喧嘩を吹っ掛けられたわけだ。

 

 なんとなく厄介事に巻き込まれるかなとは思ってたけど、王都に来て二日目でこんなことをする羽目になるとはなぁ。


「おいおい、ゴルドがまた初心者を潰そうとしてるぞ」

「ほんと、クズだよな。今まで何人の心を折ってきたのか」

「かわいそうだわ。まだあんなに若いのに」


 通行人、野次馬が小さい声で話ているのが耳に入ってくる。

 そんなことを気にしていない――というか聞こえてないのか?

 ゴルドは全く気にしていないそぶりで俺を指さし話しかけてきた。


「まずはそこの黒髪赤眼のガキ! テメェだ。さっさとこいやぁ!」


「あー、できれば暴力とかいやなんですけど……」


「あああ!? なんだテメェ! まだ反抗するのか!?」


「あぁ、いえ。説得はもうあきらめることにします」


 そう一言呟いて柵を超える。

 ゴルドと十五メートルほど間隔を空けて向き合う。

 すると、合図もなしに突っ込んできて、こちらに右のストレートを入れてくる。


「うおっ、あぶねっ!」


 即座に雷纏を発動し右にそれる形で回避。

 

「開始の合図もなしかよっ……」

 

 小声で悪態をつく。

 まあいいや、これで反撃されても文句言えないよな?

 俺は頭の中のスイッチを切り替え、雷纏から迅雷へと纏う雷を変える。

 そして――加速。

 ひとまず後ろをとる。

 さらにそこから迅雷を雷纏に変える。

 行っているのはただの魔力の移動だが、普通の人間ならそれだけで精神を削られる。

 だが、スキル化しているおかげで俺には全くと言っていいほど負荷はなかった。


 後ろに回り込み、迅雷を雷纏に変えた後、右手に死なない程度の爆発する雷を纏わせ、背中に打ち込む。

 ゴルドは殴られた衝撃で少し前のめりになって数歩踏み出してしまうが、すぐにこちらに向きかえってニヤニヤとした嘲笑を浮かべている。


「クソガキにしてはいいスピードだが攻撃力が足りないなぁぁ!?」


「いや、だってまだ攻撃が発動してませんから」


「はぁ? なにをぬかして――ウガアアァァァァァアアアアア!!」


 ゴルドの言葉の途中で打ち込んだ雷が爆発する。

 奴の体が跳ねる。

 地面に伏したあともまるでコイのように跳ね続ける。

 

「えーっと、これで勝ち、だよな? 多分気絶したし」


 ラルフとミルの方に向きなおして言う。

 二人は笑顔を浮かべて、手を振ってくれているが、俺とゴルドの決闘を見ていた大量の野次馬は違った。

 

「うおおおおおお!!」

「すげぇ! あのゴルドをやっちまったぞ!」

「なんだあの雷の魔法は!? 聞いたこともないぞ!」 

「まさかアレが”雷光”か!?」

「”雷光”って……ああ! 確かエーオスの!」


 おおう? そんなに喜ばれることなのか?

 と思い耳を傾けていると、ゴルドは相当な悪だったらしい。

 Cランク冒険者で気に入らない初心者を見つけたら嬲って心を折る。

 そんなやつだそうだ。

 うん、それならやってよかったな。

 これで改心してくれるといいんだが。


「ギル、ぱっぱとギルドに行って依頼を受けるぞー」


 ラルフの声かけに応じて、冒険者ギルドに向かって歩き出す。

 その日は、ゴブリン退治や配達など簡単な依頼を三つほどこなし、宿に戻った。

 冒険者ギルドに行ったときに既に俺の雷光の話が広まってたのは驚いたけど……まあ魔闘技大会への箔付けになっていいだろう。

 そう思いながら眠りについた。



 そうしてついに、魔闘技大会予選一日目が始まった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ