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◇3 パーティ結成 そして宿

 薬草の納品がちょうど終わったタイミングで話しかけられた。

 ガイさんと茶髪の男だ。

 ん?見たことあるぞ……って、朝にギルド前で話しかけてくれた子だ。


「よう、坊主。こいつがラルフだ」


 ガイさんが、隣の青年の頭の上に手を乗せて言う。


「確か……朝に会ったよな?無事登録できたんだな!」


「ああ、おかげさまで。俺はギルという。よろしくな」


「おう、よろしく!歳の近くて新人通しで組めてよかったよ」


 その青年、ラルフはニコニコとした顔でそう言うので、俺もなるべく顔を笑顔にして、短く返事をした。


 ラルフは身長百七十センチくらいで細身だ。歳は大体十六くらいで、服装は、全体が暗い緑っぽいだけで後は俺と同じような感じだ。

 首元には黒のスカーフを巻いている。


「二人とも知り合いだったんだな。それならよかった。パーティ登録は受付でできるから済ませとけよ」


「ああ、もちろんだ」


 ラルフは返事をしてガイさんに手を振った後、俺を連れて受付に向かって歩く。

 前に人がかなり並んでいる。

 このくらいの時間は日帰りで依頼をこなす冒険者がよく集まるみたいだな。


「なぁ、自己紹介でもしないか? お互いのこともあんまり分かってねぇし」


 まだ待ち時間が長そうだとみて、ラルフが話を切り出してくれた。


「そうだな。改めまして、ギル=セイクリッドだ。今日冒険者になったばかりの新人だけど仲良くしてくれると嬉しい」


「オレはラルフ。狩猟民族だから家名はない。実はオレも冒険者になったばっかりなんだけど、村に来ていた冒険者に短剣術と魔法を教わってたから、ある程度なら相手にできる。これでも、村では強い方だったんだぜ?」


 ラルフはそう言い、力こぶを作るような動作をした。

 筋肉はあまりついていない。

 ――っと、そんなことより魔法だ。

 ラルフは魔法を使えるらしい。


「俺、魔法使えないんだけど、教えてもらえないかな? 魔法使える人に憧れててさ」


「ん? 誰かに教わったりして、やってみたことはあるか?」


「いや、無い。全くの素人だ」


「そうか、じゃあ明日にでも――っと、順番が来たみたいだな」


 その言葉を聞いて俺が前に向きなおすと、あんなに長かった列はもうなくなり、目の前には受付嬢がいた。


「こいつとオレをパーティ登録してくれ」


 ラルフがカードを渡しながら言う。

 

 ラルフも新人だって言ってたから、俺と同じFランクなんだろう。

 当初はある程度知識のあって、先導してくれるような人がメンバーになると思っていたけど、よく考えればパーティメンバーが見つかってないって、俺と同じ初心者くらいだよな。

 まあ、たとえ先導してくれなくても仲間同士で楽しく生活できればそれでもいい。

 その面ではラルフと出会ったのは幸運だったかもしれないな。


「はい、パーティ登録ですね。カードをお預かりします」


 そう言った後、受付嬢は丁寧にカードを受け取り奥に入って行ったが、すぐに戻ってきて返してくれた。



名前:ギル=セイクリッド


種族:人間


歳:16


加護:なし


スペシャルスキル:【限界突破】【即死回避】


スキル:なし


パーティ名:なし


パーティランク:F


パーティメンバー:ラルフ



 おお、項目が増えてるな。


「新しく増えている項目が三つありますので、順に説明しますね」


 そういい、受付嬢は説明を始めた。

 彼女によるとパーティのランクは参加している冒険者のランクの平均で決まるらしく、そのランクでどのクエストを受けることができるか決まる。

 俺とラルフはFだからパーティランクもFだ。

 

 パーティ名はランクCになったときに決めることができる。

 みんなはどんなのに設定してるんだろうな。

 俺の封印した黒歴史ノートのような名前を出されると精神がすり減るからやめてほしいものだ。

 

「説明は以上となります。なにか質問はありますか?」


「いえ、特にないです。ありがとうございました」


 ラルフはボーっとしてたので、俺が返事をする。

 どうやら堅苦しい話は苦手なようだ。


 パーティ登録が終わった俺らはすぐに外に出る。

 もうギルドに用事があるわけでもないしな。

 外は少し暗くなってきていた。

 

 もちろんだがこの世界には電灯は無く、夜が近づいてきた今は街のメインストリートの地面に等間隔に埋められた魔法具が、淡い光を放ち始めている。

 夜になると綺麗に光り、この街の一種の見どころになっているらしい。

 

 この魔法具は魔法使いが少し魔力を注ぐと軽く一週間持つそうで、燃費は確かに良いんだが、問題なのはその値段。

 一つ大金貨一枚だ。

 ざっと見ただけでもこの通りには五十以上設置されている。

 一見金の無駄遣いに見えるんだが、このイルミネーションのような光景を見るために街に人が来ることもあると考えると、結果的に良い経済効果を生んでいるだろうな。


 ちなみに魔法具を取り入れていないほかの街では、普通にランプが木の柱に掛けてあるだけだ。

 まぁ、確かに高いもんな。魔法具。


 ここで俺は気づく。

 そういえば宿をとってないな。

 しかも、まだ初日ということもあり、どこにどんな宿があるのかすらわからない。

 

「ラルフ、いい宿を知らないか? よくわからなくて」


「宿? オレが泊まってるところが二食付きで一番いいと思うぞ。案内した方がいいか?」


「ああ、頼む」


 ラルフについていくことにする。

 歩き始めて少し経ったとき、ラルフが思い出したように言う。

 

「ああ、そういえば魔法の件も含むんだけど、明日森で狩りをしないか? そのついでに教えるって感じがいいと思うんだが」


「分かった。明日にみっちり教えてくれると助かる」


 魔法か。

 明日が楽しみだ。

 

 それから歩くこと十分弱、門の近くに宿はあった。

 二階建ての木製の建物で、落ち着いた雰囲気だ。

 

 俺たちは宿の中に入る。

 すぐ目の前には受付があり、そこには三十はいってそうだがまだまだ若々しい女性が立っていた。


「あらあら、ラルフじゃない。友達でも連れてきたの?」


「ああ、ギルってんだ。今日からパーティを組むことになった」


「ギル=セイクリッドです。ここがおすすめだと聞いたので泊まりに来ました」


 ラルフの紹介に合わせて名前と要件を言う。


「礼儀正しいのね。うちの宿は一泊銀貨一枚だけどいい? 雑魚寝部屋だったら大銅貨二枚分割引できるよ」


「あー、そうですね……一人部屋でお願いします。代金の銀貨一枚です」


 そういい、銀貨を手渡すと同時に、個室のカギをもらう。

 ま、雑魚寝なんて嫌だよな。

 大銅貨二枚分だし、まあいいだろう。


「じゃ、おばさん、オレたちは部屋に行くぞ」

 

「はいよ、食事のときは食堂に来なよ」


 そこまで聞いて、俺らは受付の近くにあった階段を上る。

 居住スペースは二階にあるらしい。


「食堂は一階だから、朝と晩はそこで飯を食うことになる」


「ああ、了解」


 そうして階段を上りきって二階につくと、左に曲がる。

 鍵の番号と部屋のドアに書かれてある番号を見るに、俺はつきあたりの部屋だ。

 二人で奥に向かって歩く。


「よし、ギルはオレのひとつとなりの部屋だな。なにかあったら呼んでくれ」


 そう言い、ラルフが部屋の中に入る。

 どうやら俺の隣の部屋らしい。


 俺はラルフが部屋に入ったのを見て、自分の部屋にも入ろうと、鍵穴に鍵を差し込む。

 ドアの施錠が解かれた。

 やっぱりここで合ってたな。


 部屋の中を覗く。


 広さは大体六畳くらいであり、少し寝づらそうな板張りのベッドが一つだけ置かれている。

 まぁ、ベッドは仕方ないだろう。

 日本基準で考えたらだめだ。

 

 部屋の中を確認した後、ずっと手でもっていた袋を下す。

 

 ふう、ひと段落だな。

 明日は狩りかぁ。

 動物を殺しても大丈夫だろうか。

 吐いたりしないかな?

 あんまり耐性ないからな、俺。

 日本にいたときからホラーやスプラッターの映画はだめだった。

 友達は俺が苦手なの知ってたからからかってきたりもしたけど、最終的には俺に合わせてくれたんだっけ。

 いいやつだったな。

 

 ――と俺が物思いにふけっていると、ノックが聞こえた。


「おーい、ギル。そろそろ飯の時間だ。食堂に行くぞー」  

 

 俺はラルフの声を聞いて、部屋を出た。

 一階の食堂に向かう。


 食堂につくと、ラルフが二人掛けの席を見つけて座る。

 内装は特に目立つものもないが、ここに泊まっている人は結構いるみたいで、席はほとんど埋まっている。

 ラルフがおすすめするだけのことはあるようだ。  

 

 しばらくすると給仕の人が二人分の食事をお盆に乗せて持ってきてくれた。

 メニューは固定らしい。


 出てきた料理は簡素なもので、黒くずっしりとしたパンと腸詰、チーズだった。

 あまり食べなれたものじゃなかったけど、口に合わないというわけではない。

 でも、これから毎日食べるのかと思うと、大丈夫かな?と不安になったりもする。

 これも慣れるのかなぁ。


 食事を摂り終わったので、ラルフと就寝前の挨拶をして各自部屋に戻った。

 

 暗くなっていたので寝ようと思いベッドに横になると、すぐに睡魔が襲ってきた。

 どうやら初めての世界に興奮して、疲れてしまっていたらしい。

 俺はその心地良い眠気に抗うことはせず、眠りにつくことにした。


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