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◇22 食糧


問題が発生した。

ゴブリンを倒した後、あの広場で六時間ほど浅い睡眠をとって、開いた扉から先に進んだ。

ところが、また一本道だったんだけど、三十分歩いても次の扉が見えない。

そこでだ、何が問題かと言うと、腹が減った。

食糧の入った袋はラルフの手元にあるのだ。

ミルは召喚術で豚かなにか出して食べればいいけど、俺はそんな手段をもってない。

つまり、飯が食えないのだ。


腹減った。何か食べたい。

気にすると余計に気になってきた。

あー、どこかに肉でも転がってないかなー。

―—って、あるじゃん!


目の前にあったのは蓋のあいた木箱。

中には果物と干し肉のようなもの。

これは……ダンジョンからの差し入れか!?

毒とか入ってないよな……?

食べるぞ?いいんだな?


食べる気満々である。

でも、毒は多分入ってない。

これはダンジョンに設置されている宝箱なのだ。

宝箱には、罠は仕掛けてあるが、中身に異常があった例はない。

よし、食べよう。


俺は手当たり次第に中身を取り出し、食った。

うん、美味い。いや、美味くないのかも知れないけど、半日以上何も食べてないと、美味しく感じてしまう。


あー、助かった。ここから次の扉までの距離がとんでもなく長かったりしたら、最悪餓死してたかもしれないしな。


そんなことを考えながら勢いよく食ってると、すぐになくなった。少し量が少なかったが、空腹は免れた。

さらに先に進んでみよう。


俺はまっすぐ歩く。

風景は何も変わらない。

壁がゴツゴツしているくらいだ。


さらに歩く。

先ほどの果物が入った木箱を見つけたときからさらに三十分。

前に扉が見えた。

俺が通ってきた扉と同じ大きさで、刻まれているものが、斧を持っている巨人に変わっている。


俺は扉がやっと見えたことを嬉しく感じて、駆け寄った。

――『四面楚歌の間』

おいおいおい、名前からしてやばいじゃないか。

四面楚歌って、多対一か?

雷魔法使えば一気に倒せないこともないと思うけど……


まぁ、考えてても仕方ないな。

敵の姿が分からない以上、対策しようもないんだし。

とりあえずは自分の実力を信じる――かな。


俺は意を決して扉を開いて、前に出る。

だんだんと明るくなっていく広場。

そこは前と違って、崖のような場所。

中央が円形にくりぬかれていて、それ以外は出入り口をつなぐ人ひとり通れるぐらいの細長い道があるだけだ。

魔物はいない。だが、こんな部屋で何もないわけがない。

中央に進めってことだろう。

俺が中央の円形に足を踏み入れた瞬間。

周りに鳥型の魔物が大量に出現した。

カラスのようなものから、半鳥人のようなものまで様々だ。


俺は即座に【雷纏】を発動させる。

そして後ろから飛んできたカラス型を裏拳で撃ち落とす。

よし、ダメージは通るな。

数だけでそこまで強くはないようだ。

これなら倒せる。


【雷纏】による機動力を生かして、部屋を飛び回りながら、鳥型魔物を蹴り落とす。

足の裏からは、雷魔法を放出しているため、蹴られた魔物は感電して崖の中に落ちていく。

落下ダメージでひとたまりもないだろう。

それにしても凄い爽快感だ。

自分がこんなアクロバティックな動きができるようになるなんて、思ってもみなかったな。


丁度五十体倒したあたりだろうか、魔物の湧きが止まった。

最後の魔物を蹴り落とし、中央に着地する。

さて、これで終わりかな?

そう思ったとき、俺の正面の空中に先ほどまでいたカラス型のさらに大きいサイズの魔物が出てきた。

これは……さすがに蹴り落とせないな。

雷魔法を使うか。


【雷纏】を発動したまま使うのは集中力を大きく消費してしまうため、一度【雷纏】を外す。

そして、【雷纏】で循環させていた魔力を右手に集中させる。

放つのは先のとがった一直線の雷。確実に致命傷を負わせたいため、体に大きな風穴を開けてやることにした。


右手に込めた魔力のすべてを威力に注ぎ、放つ。

それは目に見えない速度で、巨大なカラス型の魔物の心臓部を刺し貫いた。

我ながらに凄い威力だな。早い相手には当てるのが難しいけど。

っと、そうだ。肉を回収しておこう。


俺は中央に落ちた魔物が霧になって消える前に、肉をそぎ落とす。

うん、ダンジョンに入ったぶりの新鮮な肉だ。


ちなみにここに来るまでは道中にいる野生動物を狩って食ってた。

猪や兎とか、結構種類があったけど、大抵が美味しかった。


それと、魔物でも美味しい魔物は美味しい。

ミルと出会ったとき、召喚でだした牛もそうだ。

ああ、また食べたくなってきたな。

でも、ミルは召喚で出した魔物をなるべく殺したくないらしい。

自分の呼び出した魔物だから、少しでも愛着がわくのだろうか。


うん、まあそうだろうな。自分で呼び出して、無抵抗な生物を殺すんだ。

自分の生死が関わっているときや暴走しているときはともかく、大人しい魔物を一方的に殺したくはないよな。


そんなことを考えながら、食べられそうな肉を全てそぎ落とした。血は既に抜いてある。

今日の晩飯だな。時間間隔は分からないけど。





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