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◇2 勧誘 そしてぽよぽよのアレ


ランク:F

報 酬:十本で大銅貨一枚

内 容:薬草の採取



 とのことだ。

 おそらく異世界に来たのが朝の七時くらい。

 移動に二時間、街での移動とギルドで大体一時間くらいだから今は十時くらいだと思う。

 とりあえず、ギルドの二階に図鑑があるらしいから薬草の見た目を確認しておこう。


 休憩スペースの近くにある階段を登る。

 二階につくと、辺一面本棚だらけだった。

 なんだか図書館みたいだな。

 

 俺は手当り次第に本を探す。

 図鑑のようなものがあるといいんだけど……あっ。

 あった、植物図鑑。

 試しに手にとってパラパラめくってみる。

 これは……全部手書きだな。

 この世界には本を量産する技術がないのかな?

 だとしたらこの図鑑を書き上げるのは相当な労力を使ったはずだ。

 金もつぎ込んだだろう。

 

 周りの本棚と本の数を見るに、冒険者ギルドは大きな権力を持った団体なんじゃないか?

 金銭的においても、これだけの本を仕入れるルートにおいても。


 冒険者ギルドってすごいんだな。


 そんなことを頭で考えながらも図鑑をめくる。

 あった、薬草。

 形を記憶する。

 取りに行った頃には半分忘れてるだろうけど、とりあえず覚える。

 うーん、どうみても雑草にしか見えない。

 見分けることなんてできるのだろうか。

 一応備考欄も読み、なるべく記憶に残るようにした。


 そうだ、他の本も読んでおこうかな?

 一般常識を身につけておきたいし。


 俺は薬草をもう一度確認し、図鑑を本棚に戻す。

 そして気になったタイトルから手にとっていく――


 

 そして気がついたらかなり時間が経っていた。

 いやぁ、本当は勉強とかあんまり好きじゃないんだけど、まったく新しい知識を学ぶのが楽しくて時間を忘れてしまった。

 でも、一般常識くらいは身につけることができたかな?

 たとえば硬貨の大体の価値。


銅貨→十円

大銅貨→百円

銀貨→千円

大銀貨→一万円

金貨→十万円

大金貨→百万円


 ってことだった。

 基本十枚で桁が上がるってことだな。


 他に見たのは魔物図鑑。

 ランクの説明で出てきた下級竜とかも載ってた。

 下級竜って一括にされてるけど、種類が結構あるみたいだ。

 火、水、地とかな。

 それと、寿命が千年以上あって、寿命を迎えるたびに中級、上級と進化していくんだとか。

 Aランク四人ってのも五百年以上生きた熟練の下級竜の場合で、生まれて百年までの竜ならそこそこ実力を持ったCランク冒険者でも一応勝つことはできるらしい。

 犠牲はどうなるかは分からないけど。


 でだ、今の時間は十二時くらいになった……と思う。

 この世界に時計は無い。

 午前六時と午後六時に鐘がなるだけだ。

 つまり完全に腹時計だより。要するに腹が減った。

 うーん、本に没頭してたら、本当にあっという間に時間が過ぎてしまったな。

 街の外に出るのは昼を食べてからのほうがよかったから丁度良かったんだけど、今度から気を付けよう。


 俺は読んでいた本を本棚に片付け、階段を降りる。

 飯を食いに行こうと思い、ギルドから出ようとすると大柄な男に話しかけられた。

 男は二十代後半くらいかな? 

 金髪で彫の深い顔をしており、背中には身長ほどのおおきさの剣を背負っていた。

 高身長さも相まってかっこいい。

 異世界すげぇ。


「よう、坊主。新入りだろ? 俺はガイってんだ。一応Cランクだ」


「はい、新入りのく……ギル=セイクリッドです」


 おっとっと、口が滑って久坂って言いかけた。

 危ない危ない。


「要件はなんでしょう? 何か用があるんですよね?」


「おう、ギルか。要件はな、簡潔に言うとパーティへの勧誘だ。俺のパーティじゃないんだがな。最近知り合った奴で、パーティを組めてないのがいるんだ。ぜひ組んでやってくれないか? 坊主もまだパーティ組んでないんだろう?」


 パーティを組みたくても組めない人がいると。なるほど。


「いいですよ。右も左もわからない初心者ですので助け合える仲間がほしいと思っていたところです」


 紛れもない本心だ。なんたって薬草を見分ける自信すらないんだからな!

 それにソロなんて寂しくてまっぴらごめんだ。

 俺、ゲームとかは複数人でわいわいやるのが好きなタイプだしな。

 

 返事をしたらガイさんはほっとしたように言った。


「おお、よかった。いい奴なんだが少し危なっかしいんだ。おせっかいだとは思ったが放っておけなくてな。ギル、今日の日が暮れる頃は空いているか? その時間にここで、ラルフ――パーティメンバーになるやつの名前なんだが――そいつと正式にパーティ登録をしよう」


「はい、わかりました。日の暮れるころに冒険者ギルドですね」


「ああ、じゃあ頼んだぞ」


 そう言ってガイさんはその逞しい腕を振り、機嫌良さそうに去っていった。

 ラルフってどんな奴だろうな?

 仲良くなれるといいんだけど……


 まあいいや、とりあえず飯を食いに行こう。

 冒険者ギルドから外に出る。

 とりあえずメインストリートを歩いてたら何か店でも見つかるかな?

 余りがっつりじゃなくていいから、屋台でもいいし。

 どこかいい場所ないかな。


 そんなことを考えてながら歩いていると、ちょうどよく香ばしい匂いが風に吹かれてやってきた。

 これは……焼き鳥……?

 俺は匂いの発信源を探す。

 正面はただの道。右はパン屋。

 なら、左か!

 

 振り向いた先は小さな屋台だった。

 屋根もついていないオープンな店で、少し細めのおじいさんが何かの肉を串にさして焼いている。


 俺はすぐさま近寄り、声をかける。


「すみませーん、四本くださーい」


「あいよー」


 俺は代金となる大銅貨二枚を渡したあと四本受け取り、三本を左手、一本を右手に持ち、右手に持った分にかじりつく。

 あついっ!

 でも美味い!

 俺は他の客の邪魔にならないように店の少し横にそれて四本全部がっついた。


「兄ちゃん良い食べっぷりだねぇ。もう一本サービスだ。ほれ、食いな」


「おお、ありがとうございます!」


 差し出してもらった串焼きを受け取り、食べる。

 本当に美味い。

 タレとか工夫してるんだろうな。

 肉は何のものか分からないし、日本で慣れ親しんだ味じゃないけど、食べやすくて味が好みだ。

 

「兄ちゃん、冒険者かい?」


 俺が完食したのをみて、おじいさんが声をかけてきた。


「ええ。今日登録したばかりの新人ですけど、これから頑張っていくつもりです」


「そうかいそうかい。冒険者稼業は何が起こるか分からない。気を付けてな」


「はい!串焼き美味しかったです。またきますね」


 俺はおじいさんの激励を受け、手を振りながら門に向かった。


 特に露店を見て回ることもなかったせいか、先程の半分程度の時間で門につく。

 

 「おや、早速冒険者になって依頼ですか? 頑張ってくださいね」


 「ははは、薬草採集ですけどね」


 街に入るときに門番をしていた好青年と挨拶を交わし、門の外に出た。

 情報によると街道から少しそれた場所にあるらしいので、草原へと足を踏み入れる。


 そして、草原の中を歩きだして数分がたったころだった。

 

 ポヨン、ポヨン。


 突然そんな音が聞こえてきた。

 気になって音の鳴る方角である右を見ると、定番のアレがいた。


「うおおおおお!スライムだぁぁぁああ!」


 テンション上がってきた。

 ゲームでよく見るスライムが目の前でぽよぽよ跳ねてるんだ。

 興奮しないわけがない。

 

 これも魔物図鑑を見て知ったんだが、魔物はスライム、ゴブリンなどからゾンビやドラゴンまで様々であり、発生方法もそれぞれ異なる。

 例えばスライムは自然発生だが、ゴブリンは人間と同じように繁殖するのだ。

 ゴブリンやオークなどは人間を苗床にすることもあるらしい。


 俺はスライムから目を離さないまま、袋から腰に移動させていたショートソードを抜く。

 まだ気づかれていないみたいだから、後ろからゆっくり近づいていこう。

 あと八メートル……七メートル……六メートル……あっ気づかれた!

 こっちに向かって跳ねてくる。

 距離が五メートルになったあたりで俺の体めがけて突進してきた。

 俺はとっさに右に避けつつ、ショートソードを右上から左下へ斜めに振る。

 あたった!………が切れなかった!

 素人の腕じゃこんなプルプルは切り裂くことができないようだ。

 ショートソードから与えられた力によってスライムが俺の左方向にバウンドしながら飛んでった。

 幸い距離は二メートルくらいしか開かなかったので、すぐに近寄り、今度は上から突き刺す。


「っ………貫通した!」


 スライムとショートソードが重なる。


「よっしゃああ!!」


 初めて魔物を倒した感動が込み上げてきた。

 スライムはすぐに地面に溶け始めた。

 そして地面にはスライムのかけらのようなものが残る。

 スライムジェルだ。

 よく燃えるから、燃料になるらしい。

 スライムは頻繁に出るが、一度のドロップ量はたいして多くない上、ランクの高い冒険者はあまり相手にしないため、市場に出回らず燃料として使われるのは稀なようだが。


 とりあえず初・魔物討伐を果たした俺は感動を胸に薬草を採取しに行ったのだった。





―――


 ちなみに、採取した三十本のうち十本が雑草で受付の美人さんに笑われてしまった。

 恥ずかしい。


食事で使った大銅貨二枚を回収した形になります。

現在の所持金は大銅貨十枚と銀貨一枚です。



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