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◆7 作戦会議

僕たちギルドの構成員、全員がログハウスの中央に位置する、会議室に集まっていた。

長机と椅子が九つ。八つが机の広い面、そして奥に一つ。奥にあるのがギルド長の席だろう。

僕の分の椅子も用意されていた。当たり前だ。もうここに来て三週間も経っているからな。

今、席についているのは僕、姉さん、ネレイドさん、ディオネ、ござる調で食料調達のイオさん、ギルド長であるレアさん、そして仲間の危機を知って駆けつけてくれたカロンさんだ。

カロンさんは姉さんの暗殺者になったときの話に出てきた、男の人だ。

初めて見た感想は、スーツの似合うエリート、だった。


「さて、みんな席に着いたね。これよりフェーベ救出作戦の会議を始める」


席にはエウロパさんはいない。どうやら不参加らしい。


「まずは状況だ。フェーベは今、ここからすぐ近くの街、【アレロイ】の牢の中だ。今日から約一週間後、帝都に運ばれ、公開処刑される。搬送中はAランク冒険者五人パーティが三班つくことになる。フェーベはそれだけのことをしてきたからね。捕らえられている牢は帝国でも屈指の牢、【プロセロイ】だ。搬送後は一日も置かずに処刑されるだろう。搬送中、搬送前、搬送後、すべてが危険だが、君たちはどれを選ぶ?」


搬送前は屈指と言われるほどの牢の警備を潜り抜け、脱出まで完璧にしないといけない。

搬送中はAランクの冒険者を十五人も相手どらないといけない。

搬送後は一番手薄そうに見えて一番危険。首都の中心で、騒ぎを起こすのだ。何が駆けつけてくるかわからない。


絶望的じゃないか、この状況は。

それでもみんなは諦めていないようだ。


「少なくとも搬送後は無しでござるな。すぐに兵が駆けつけてきて数で押されるでござる。そうすれば必ず誰かが足止め役を務めないといけなくなる。犠牲が出るでござるよ」


「搬送前も危険だわ。隠密主体で行動すれば必然的に少数で出ることになる上、丸腰のフェーベを隠しながら脱出するのは困難。だからと言って大人数で攻めれば、それこそ数で押されるわ」


「わ、わたしも搬送前は反対です!牢に潜って脱出しなくちゃならない上に、数で押されたんじゃどうしようもありません。全滅の可能性もあります!」


「そうなると、必然的に搬送中の襲撃しか無くなるが、それで異論はないかい?」


レアさんがみんなの意見をまとめる。

異論はない。

一番生存率が高く、成功率が高い方法だ。

会議は、どのようにして冒険者を倒すか、無力化するか、という方向性に変わる。


「正直、無力化は難しいでござる。なるべく依頼対象しか殺めない方針でござるが、今回ばかりは気にしていてはこちらがやられる可能性があるでござるよ」


「そうですねぇ、私の調合毒は外で使うなら効果は薄いですし……」


滞る。話が進まない。Aランク冒険者、というただの雇われの存在を殺したくはない。かと言って相手を無力化出来るほどこちらが圧倒できるかはわからない。

あれ?無力化って、僕の得意分野じゃないか?魔法防具(マジックアーマー)による対策をされない、氷の魔法。


「あ、あの。無力化なら僕の得意分野です。少しの隙を作っていただければ、できるかもしれません」


「……ああ、そうだな。ジルの魔法ならあるいは可能かもしれん」


ネレイドさんが賛成してくれた。


「そうか、氷魔法なら”停止”させることができる」


「確かに!一発手加減するくらいならいけるかもしれないでござるよ」


「ジ、ジルくんの魔法は見たことありませんが、ジルくんなら、なんだかできるような気がします」


「私も見たことはありませんが、ジル君がエクセレントな魔法使いだということは聞いてますからね。反対はしませんよ」


みんなが俺を信じてくれた。


「みなさん、ありがとうございます。こりゃあ失敗しないようにしないとな、ははは」


僕は席から立ち、頭を下げ、冗談交じりに言う。

少し涙声になっているのは気のせいではない。


「あっはは、ジルが失敗するなんて、この中の誰も思っちゃいないよ。だって、”天才(ジーニアス)”、でしょ?」


「ジル殿は心配性でござるなぁ。なぁに、失敗しても拙者たちがもう一度チャンスを作り上げるでござるよ」


「ふふふふ、君は実に面白いな。それだけの才能を持っていながら謙虚とはね」


「ジルくんならできますよ!ドンとやっちゃってください」


「ジル=オルクス。君は神に選ばれし者だ。ここに来て、これからも歩み続けたいならば、その力を存分に振るうんだ。君ならきっと綺麗に終わらせてくれると、信じているぞ」


「うっ、ううっ、みんな、ありがとう……」


僕ってこんなに涙もろかったっけな。

ああ、いや、きっと元から涙もろかったんだろう。

元の世界じゃこんな風に泣ける機会がなくて、分からなかっただけなんだ。

きっと。




それから一週間後、僕たちは作戦を決行した。


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