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◇14 コボルトの群れ

俺は一人で市場を歩いていた。ミルをパーティに迎え、昼食の騒動があった後だ。

二人は今宿に戻っている。もう昼だし、依頼を受けるには遅いしな。

もっぱらラルフは鍛錬でもしているのだろう。


そこで、俺は見た。

薄汚れており、綺麗に見えないが、それは確かに、鏡だった。


のぞき込む。そこには黒髪、そして髪の色に合う、暗い赤目だった。


そんな、爽やかで活発そうな、ナイスガイが鏡越しで俺を見ていたのだ。


もちろんそれは俺だ。俺はイケメンに転生していたのだ!


神様ありがとう!


鏡をずっとのぞき込んでいたら、売っている人に話しかけられたが、俺が買わないとわかると、怒鳴ってきたので、宿に逃げ帰った。


いや、だってあの鏡、異常に高いんだもん。金貨一枚だよ?とんでもないな。


—————————————————————


ミルをパーティに迎えた翌日、俺らはギルドに来ていた。もちろん依頼を受けるためだ。昨日はあの依頼以外受けなかったからな。


ミルは初めての依頼にとても興奮している。いきなり冒険者になるって言いだしたのは、やっぱり憧れとかあったからなのかな?非常に楽しそうだ。


俺らは依頼板を見る。

何々……


ランク:E

報 酬:銀貨八枚

内 容:南の洞窟に住み着いたコボルトの討伐

備 考:現在八体確認。八体より多かった場合追加報酬


お、まだコボルトの依頼貼ってあるのか。報酬と、コボルトの数が増えてるな。でも八体くらいならいける。銀貨八枚、割もいいしこれがいいかもな。


「ラルフ、コボルトの討伐でいいか?」


「ああ、オレは構わない。おーい、ちんちくりん。お前もそれでいいよな?」


ラルフは少し大きめの声で、ギルド内を興味津々に歩き回っていたミルに声をかける。


「ちんちくりん言うな!この悪人顔!」


昨日の昼からずっとこんな感じだ。確かにミルは、歳のわりにかなり小柄だし、ラルフも三白眼である瞳が、目つきが悪いととらえられるかもしれない。でも、ちんちくりんと悪人顔って……

まぁ、喧嘩するほど仲がいいっていうし、放っておいてもいいよね?いちいち仲裁するのが面倒くさいとか、そんなんじゃないよ?断じてね!


「ミル。この依頼でいいかい?」


俺は、依頼の書かれた紙を再び手に持ち、ミルに尋ねる。

ミルは、二つに結んである髪を揺らしながら、頷いた。

よし、この依頼に決定だ。




—————————————————————


俺たちはまたしても南にある森に来ていた。

どうやらこの森を抜けてすぐにあるらしい。

まぁ、この森に来ることが多くなっても仕方ないのかな?北に行けば、村をいくつか挟んで、すぐに国境らしいし。

ああ、ちなみに今俺らがいる国は、ウルカ王国。世界を二分する大勢力だ。対するのはアルバ帝国っていう国で、屈強な騎兵で知られている。

これらの話は、宿で泊まってるうちに、会えば少し話すくらいの間柄になった吟遊詩人に聞いた。いろんな街、国を周って、英雄譚、戦争についての詩をうたっているらしい。


まぁ、国については、関わり深くなることなんてないだろうな。なんたって身軽な冒険者だし。



俺らは洞窟にやってきた。ちなみに、ダンジョンではない、普通の洞窟だ。倒した魔物が霧になって消えたり、摩訶不思議な天然な罠があったり、ということはない。

どっちにしろ、暗いので、松明は必須だ。ダンジョンでの経験から、しっかりと持参している。


俺の火魔法で松明に火が付き、周囲が明るくなる。


「うわっ、なんだこれ……」


ラルフが、たまらず声を出す。

そこにあったのはゴブリンの死骸。内臓は散乱し、ところどころ腐っている。

食い荒らされたような跡が見られるあたり、コボルトにやられたようだ。


「いつ襲ってくるかわからない。いつでも戦闘に入れるように準備しておこう」


俺の呼びかけに、二人は黙って頷く。

ラルフが前、ミルが後ろで、俺が真ん中だ。俺とラルフはダンジョンと同じように戦う。コンビネーションはばっちりだろう。



ラルフが松明を持ち、奥に入る。十分ほど経ったころだろうか、目の前にいくつかの小さな影が見えた。

コボルトだ。松明の明かりで気づいたのだろう、途端にドタッドタッと足音が聞こえ、コボルトが視認できるまで近づいてきた。三体だ。


ラルフは、自身の左の、脆い土の壁に松明を突き刺し、短剣を抜いた。

最初にこちらにたどり着いたコボルトは、ラルフの首目掛けて頭を前に出し、とびかかる。首を食いちぎる気なんだろう。しかし、コボルトは最下級の魔物であり、たいして早くない。ラルフはすぐにしゃがみ、自分の上空を飛ぶコボルトの首を、逆にぶっ刺した。そして、刺した反動でさらに浮く、上空にあるコボルトの体を左手で支え、短剣を抜き、支えていた左手を外し、ローキックで後ろ、つまり俺らのほうにコボルトを蹴り飛ばした。

うん、いい判断だと思う。死体をそのまま前線に置いてたら、血で足を滑らすか、コボルトを踏んで、転んでしまったかもしれない。


実は、ラルフが短剣でコボルトを刺した直後、もう一匹のコボルトが、ラルフに飛び掛かりかけていた。

いや、既に飛び掛かっていたな。それを、ゴブリンが、タックルをして吹き飛ばしていた。

そう、召喚魔法だ。ラルフのところに二匹目が走ってきたとき、ミルは魔力を集め、ゴブリンを呼び出した。僅か一秒にも満たない召喚だったと思う。ゴブリン程度ならそのくらいの時間しかかからないらしい。

そして、コボルトがとびかかろうと体が浮いたのと、ゴブリンがまるでカタパルトに打ち出されたかのように高速で俺を横切ったのが同時。

コボルトの上に跨る体制で着地したゴブリンは、素手で、コボルトの顔面を無茶苦茶に殴り、倒した。

そして、徐に立ちあがったゴブリンは、こっちを向いてサムズアップし、霧になって消えた。正確に言えば見ていたのはミルのほうだな。ミルのほうを見ると、彼女もサムズアップしてた。


そして最後の一匹、これは俺の獲物だ。最後のコボルトの姿が見えた途端、俺は右腕を上げ、落ち着いた状態で魔法を打ち出す。打ち出したのは火の魔法。雷はまだイメージの研究ができてなかったから、怖くて使えない。

俺が打ち出したのはバスケットボールサイズの火球。込めた魔力は五だ。いつもどおり、イメージはマッチとオイルランプだ。

命中し、最後のコボルトも倒した。


「よし、とりあえず前にいたやつらは倒したか。引き続き奥を探索するぞ……ん?」


そこで聞こえたのは後ろから駆けてくる音。さっき聞いた足音と全く同じだ。それに数も多い。

後ろを振り向き、確認する。数は五体、報告にあった残り全部だな。たいして手間取ることもないだろう。


すぐに、ラルフとミルの立ち位置を変え、迎撃した。

もちろん勝利。コボルト十体くらいまでなら、一気に対応できそうだな。

ちなみに、普通ランクEの冒険者は三人パーティで七体くらいが限度らしい。

自分たちが、平均よりちょっぴり強いことに満足しながら、奥も確認し、異常もなかったので帰ることになった。



コボルトの討伐証明は牙だったから、口の中に手をいれて、むしり取った。手がびちゃびちゃになった。

うう……ばっちい。


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