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ラルフの話

よっす!オレ、ラルフ。

元狩猟民族で、今はランクE冒険者をやってる。


なんで冒険者になったか?

まぁ、きっかけは村によく来た冒険者の話を聞いて、だな。

ダンジョンに潜って一攫千金……とか、ロマンじゃん?

冒険者になりたいと思ったら、すぐに行動。

村に来ていた冒険者たちから必死に魔法を教わった。

もちろん簡単なものしか身につけることはできなかったけど、弓を使わずに鹿を狩れた。

結構すごいことだと思う。

だって、ナイフ一本あれば狩れるんだぜ?

村の人からも結構褒められた。

ちなみに村の人は魔法が使えないらしい。

イメージが難しいとかなんとか……


十五歳の頃から冒険者を目指して、約一年で知識を詰め込み、十六になった日に村を出た。


道中に、ゴブリンが三体群れを組んでいた。

ゴブリンは魔物であり、人に害を与えると聞いていたから仕留めようと思いとびかかったんだが……かなりギリギリだった。

幸いゴブリンは刃物を持ってなかったから、軽い打撲で済んだ。

打撲くらいならどうということはない。

しかしだ。

一部始終を他の人に見られてた。

めっちゃ恥ずかしかったね。

ゴブリン三体に手間取る成人済の男。

まあ、その見てる人がガイさんで、後々パーティメンバーを見つけてくれたから良かったんだけど……


いろいろあったけど街についた。

目的地であるエーオスの街だ。

村では必要なかったから身分証なんて持ってない。

持ってきていた銀貨を使い、街に入った。

感動した。

人がたくさんいて、活気ある。

村はあんまり人がいなかったからな。

ギルドはまっすぐだと言われていたので、まっすぐ行ったんだが、その時のオレは凄く挙動不審だっただろう。

初めて来たんだ。

仕方ないよな?


ギルドについた。

ガイさんがいた。


「よう、ラルフ……だったか?さっそくギルドに登録するんだな」


ガイさんは、その鍛え上げられた腕を上げて、オレに手を振りながら、言ってくれた。


「ああ、そのために来たんだからな」


少し素っ気なくなったのは仕方がない。

早く冒険者登録をしたかったんだ。

オレは足早にカウンターに並ぶ。

受付はヒョロっとした男だった。

料金だと言われた銀貨を一枚渡し、説明を受けた。

ランク?とかいうのがあるらしいけど、よくわからなかった。

適当にやってたらまぁ上がるだろ。

うん。


登録が終わって、カウンターから少しずれてカードを眺めていると声がかかった。

ガイさんだ。

オレが宿をとるだけの硬貨を持っているか心配してくれたらしい。

硬貨は持ってたけど、泊まる宿は決めてなかったのでおすすめを聞いた。

ああ、それとパーティメンバーについても聞いたな。

仲間がいないとピンチの時に対応できない、って。

オレ自身も気兼ねなくやれる仲間がほしい。

適当に探すことにしよう。

その日はガイさんに教えてもらった宿に泊まって寝た。


朝が来た。とりあえず食つなぐために動物を狩ろう。

昨日の、登録やら通行料やらで大分硬貨が少なくなってたからな。

鹿くらいならその辺の森に入ったらいるだろう。


一応ギルドに依頼を見に行ったら、黒髪の人がギルド前で挙動不審になってて、オレと重ねて見えたからつい声をかけてしまった。

やっぱり新人冒険者だったらしい。

仲良くしていけるといいな。


近くの森に来たんだが、幸い鹿がたくさんいた。

ひとまず、目についた鹿を一頭狩って帰ってきてたんだが、ギルドの少し前でガイさんに声をかけられた。

どうやらオレのパーティメンバーを見つけてくれたらしい。

もうすぐギルドに来るから待っていればいいそうだ。


鹿を換金してから、十分くらい待った。

うん……?

黒髪のナイスガイが入ってきた。

なんか見たことがあるような……


「ほら、あいつだ」


ああ、思い出した。

今朝声をかけた新人だ!

コイツがパーティメンバーになるのか。

こんなイケメンと並んでて笑われないかな?オレ。

オレは大きい目で三白眼、童顔である。

身長はあるが顔が少々幼いのだ。

コンプレックスの一つである。


というか、あいつ持ってるの薬草だよな?魔物とかちゃんと狩れんのかな?

ヒョロそうには見えないけど……


あ、ガイさんが近づいて行った。

オレもついていこう。


「確か……朝に会ったよな?無事登録できたんだな」


「ああ、おかげさまで。俺はギルという。よろしくな」


「おう、よろしく!歳の近くて新人通しで組めてよかったよ」


「そうだな。俺もそう思う」


一応朝にあった人かどうか確認。

やっぱり同一人物だった。

まさか同じパーティになるなんて話しかけたときには思わなかったな。


ガイさんが外に行ったのでオレはパーティメンバーとなるギルと受付に並ぶ。

並んでいる途中に自己紹介をした。

オレは辺境の村出身、狩猟民族である程度なら武器と魔法が使える、といった。

まぁ嘘じゃないぞ?

ゴブリンには苦戦したけど。


そんな会話をしているとオレたちの番が来た。

今は夕方の六時ごろ。

結構人が並んでたから、話し込んでしまっていたみたいだ。

そこでパーティランク?の説明を受けた。

よくわからん。

ギルが管理してくれるだろう。


ギルに宿を紹介することになった。

オレもこの街に来たばかりで良くわからなかったので、今自分が泊まってるガイさんお墨付きの宿を紹介した。


食事を摂ってるとき、自己紹介の続きみたいなものも少しした。

そんで、ギルに出身を聞くと少しハッとしたような顔になって


「えっと、そうだなぁ、俺も田舎からでてきた……?」


なんで疑問形なんだ!

怪しいなぁ……でもまあ変な奴じゃなさそうだし……


とそんな感じだった。


食事が終わり、これから寝ようとしたころギルが俺の部屋に来た……なんだろう?


「ごめん、替えの服貸してくれないか?」


えっ、持ってないのかよ。この街に来るまでどうしてたんだ?

サイズはまあ同じくらいだから大丈夫だろうけど。

とりあえず普段着を二着渡した。


再び朝が来た。

ギルの部屋に行ってノックしたが、返事がない。

もう食事を摂ってるか、それともまだ寝てるか。

いずれにしても食堂に向かうべきだな。


食堂にはギルの姿はなかった。

ははーん、ギルは朝が弱いな?

そのあと数十分が経ち、ギルが起きてきた。

挨拶を交わす。

ここで昨日の確認をした。

魔法を教えて鹿を狩る。

うん、それだけだな。



「よーし。ではさっそく魔法を教えていこうではないか!」


なんかジト目で見られた。

いいじゃないか、人に教える機会とかなかったから張り切っちゃうんだよ。

試しにオレが魔法を使うと、感動した顔でオレの魔法をじっと見つめていた。

ふふーん、どうだ。

そしてそのまま木に放つ。

燃えた。

ギルが急いで火を消しに行った。


「あ、すまん。なんも考えてなかったわ!」


うん、またジト目で見られた。

いやー失敗失敗。

森の中では火魔法は使わない、基本だったんだけど、おだてられてついやっちゃった。


魔法を教え終わった。

結論から言うと、あいつには才能があった。

だって、雷つかうんだぜ?

オレは雷が使える人間なんて聞いたことが無い。

あいつは恐らく魔法使いとして、後衛になるだろう。

だとしたら俺は前衛だ。

ちゃんと役割果たせるかな?


そのあとは鹿を仕留め、偶然会ったゴブリンも倒し、もう一頭鹿を狩って帰路についた。


「いつか名の売れる冒険者になって、買ってみたいよな!」


魔法具についての話もした。

いつかは名の売れた、富を持つ冒険者になりたいものだ。



ダンジョンに来た。

ブラントっていうおっさんと一緒にだ。

どうやら初見メンバーだけでのダンジョンは危険らしい。

オレが誘ったらすぐにオーケーを出してくれた。

案外、お人好しなのかもな?

中はゴブリンの巣窟だった。

ブラントさんの指示も厳しいが的確だった。

やっぱりオレには足りない部分が多いな。

地味なことを継続するのは苦手だけど、強くなるためだ。

素振りもがんばろう。


奥に進んだ時だった。

大きな音に気付いて後ろを振り向くと歪な見た目をしたゴブリンがいた。

とっさに短剣を構えたが、震えが止まらなかった。

ブラントさんはすぐに駆けたが、オレの足は動かない。

戦慄していたのだ。

情けない話だな。


ブラントさんとゴブリンの戦いは均衡していた。

おっさんが勝たないと、オレたち全員が死ぬ。

ブラントさんに完全に命を預けたつもりでいた。

だが、ギルは違ったようだ。


「雷魔法しかないよな……」


えっ、という声すら掠れて出なかった。

ギルは覚悟を決めたような顔をしている。

ギルの右手に出たのは雷。

彼だけが使える、特別な魔法だ。

そばから見ているオレでもわかるほど、魔力が右手に集まっていた。

何をするつもりだ?


ギルが雷を放った。

ゴブリンの動きが止まる。

ブラントさんが動きの止まったゴブリンを斬った。


勝った……。緊張が抜ける。

それと同時に、激しい自己嫌悪が襲い掛かる。

オレは何もできなかった。

それ以前にあきらめていたんだ。オレ自身の実力じゃあ、どうしようもないと。


二度とこんな思いはしたくない。

オレは強くなろう。


寝るとき、そんなことを考えた。


※ラルフの一人称を「オレ」で固定しました。


次回から二章です。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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