◇9 成果
覚醒した。
俺の視界に入るのは洞窟の天井だ。
目が覚めるまでのことははっきりと覚えている。俺の魔法が命中して、ブラントさんが攻撃を決めた。
あれからどれくらい時間がたったんだろう。体を起こしてみる。
「おお、目が覚めたか!」
ラルフが話しかけてきた。
「俺は何時間くらい寝てたんだ?」
「うーん、大体二時間くらいかな?ずっと待ってたんだぜ」
どうやら俺待ちだったらしい。ブラントさんもよってきた。
「大丈夫か?魔力切れだったようだが」
「ええ、体は少し重いですが動けます」
「そうか。じゃあ、ぱっぱとこんな洞窟出ちまうか」
「ああ、オレももうこんな洞窟うんざりだよ」
ということで、出ていくことになった。
「ああ、そういえばあのユニークがドロップをした。歩きながら話そう」
ドロップしたんだ!どんなのだろう。
帰りもゴブリンと戦いながらになった。きつかったけど、まぁ大丈夫だった。
魔力切れだけだったみたいだしね。
歩きながらいろいろなことを聞いた。ユニークとは特別個体のことで、稀に発生するらしい。普通の魔物より圧倒的に強く、賢い。今回はゴブリンがベースだったようで、あまり強くはならなかったようだが。
場合によっては大人数での討伐もあるそうだ。
ドロップは、弱い魔物が寄り付きづらくなる結界をはる魔法具を二つドロップしたらしい。
俺らとブラントさんで分けることになった。
「そういえば、お前のあの魔法はなんだ?雷にも見えたが」
歩いているときに聞かれた。やはり雷魔法は珍しいようだ。
「えーと、雷であってます。なんか、使えたんですよね。ははは」
異世界の知識があるから使えました、なんて言えるわけがない。俺はとりあえずごまかすことにした。
「そうか。お前は本当の天才だったようだな」
そういってブラントさんも笑ってくれた。
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外に出た。日は暮れかけている。大体六時頃だろうか。
幸いここから街へは一時間もない。さっさと帰ろう。
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街についた。門が閉められる直前だった。危ない危ない。
街に入ってからはまっすぐ冒険者ギルドに向かった。お互い疲れているので会話はほとんどない。
ギルドのカウンターは空いていた。
ブラントさんとラルフと俺で並んだ。
「これを頼む。後ろの二人の成果だ。ランクも上がるだろう。反映しておいてくれ」
ブラントさんが集めたゴブリンの耳を依頼書とともに出した。
集めた耳は四十個。つまり大銅貨四十枚、銀貨四枚分だ。
「それと、ゴブリンのユニークが出た。これがそいつの爪と頭だ。換金はできるか?」
あのユニークの爪と頭部分をだした。生首だ。だいぶグロッキーだな。
「少々お待ちください」
受付嬢が奥に入っていった。生首と爪をもって。
奥に鑑定できる人とかいるんだろうか?
受付嬢はすぐに戻ってきた。
「はい、確かにユニーク個体のようです。報酬は大銀貨三枚となります。爪も使い道がないようでしたら大銀貨三枚で買い取らせていただきます」
爪は武器の材料になるだろう、とブラントさんが話していた。俺らは特に武器に不自由もしてないし、とりあえず売ることにしていた。
「ああ、買い取ってくれ」
「承知しました」
そう言って大銀貨六枚を渡してくれた。一人大銀貨二枚だ。
これで俺の所持金は大銀貨二枚、銀貨四枚だ。
ちなみに前持っていた銀貨一枚と大銅貨一枚は携帯食に使っていた。
続いて俺とラルフはギルドカードを渡す。ランクアップのためだ。
受付嬢は受け取ると、また奥に行った。
しばらくすると戻って来た。俺はカードを受け取り、のぞいてみる。
名前:ギル=セイクリッド
種族:人間
歳:16
加護:なし
スペシャルスキル:【限界突破】【即死回避】
スキル:【炎魔法】【雷魔法】【魔力感知・弱】
ランク:E
パーティ名:無し
パーティランク:E
パーティメンバー:ラルフ
よし、ランクが上がってる。隣を見るとラルフもうれしそうな顔をしていた。
初めてのランクアップだ。うれしくないはずがない。
用事も済んだので、俺らは三人そろって外に出た。
「よし、これでユニークにでもあたらなければ死ぬようなことはないだろう。二人の連携もよかった。これからもがんばれよ」
そういってブラントさんと別れた。いい人だった。というかゴブリンの報酬全部もらっちゃったけど最初からこのつもりだったんだろうか?
まぁなんにせよ戦い方から鍛錬の方法まで様々なことを教わった。本当に感謝してもしきれない。
「ありがとうございました!」
気が付いたら大声で言ってた。ブラントさんはこっちを見て少し驚いたような顔をした後、達成感に満ちた笑みを浮かべて去っていった。
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そのあと俺とラルフは宿に戻り、夕食も摂らずに眠りについた。
今回のダンジョン探索でいろいろなことを学べた。
そして、冒険者としての楽しみを見つけることができたと思う。
どうやら冒険者を選択したのは正解だったようだ。
寝る前にそんなことを考えていたのであった。
これで一章が終わりです。かなりの急展開ですが、日常的なパートを入れる技量がなかったからです…すみません。次回ラルフ視点を入れます。