第一話
スペースオペラのネタを考えるのに疲れた為、外伝でも書こうと思ったら意外にキーボードが進んでしまいました。
本編では40歳の後半から楠見は宇宙で大活躍しますが、その前は?
という作者の疑問から派生した外伝です。
俺、楠見 糺22歳!
今日から社会人一年生だ!
三流理工系私大卒業の俺を拾ってくれた会社には感謝してる。
徹底的に他人との争い・競争が嫌だという一歩間違えれば社会人失格になりそうな俺の性格を分かった上で合格通知をくれたのは、この会社だけだった。
今日は出社後に上司と面談。
どんな仕事が向いているのか、この面談で決定するとのこと……
あれれ?
どこで、どう違ったのやら?
俺、出向?
関連会社?
それも、ドカチン系の建設業だぁ?!
俺、体力に自信無いんですけれど……
正直に上司に言ったら。
「何?体力?あー、そんなもん要らんよ楠見くん。君のやることは現場の状況をリスト化して危険行動や作業リスクを低減させ、危険度0の職場を作ってもらうことだけだから」
え?
何ですかそれ?
えーっと……
係長、私は、そんな仕事やったこと無いんですけど……
「あー、それはそうだね。君のアルバイト歴とか学生時代の実践社会学部の成績とかを総合評価して政府が出してきた回答が、この職場だったんだよ。だから、僕も良くわからないんだけど君に一番合ってると思うんだよね」
いってらっしゃーい!
の一言で今までいた会社のデスクから追い出され関連会社のビルへ移動。
そこで、いかにも建築屋!
と見られる痩せマッチョの課長に会い、これから俺のデスクとなる仕事場へ案内される。
へー……
今の地球にも、いや日本にも、こんな大規模な建設現場があったんだ……
俺は口を開けてぽかんとしている。
俺は今、関東から北海道の原野へ来ている。
意外だ。
太陽系狭しと開発ラッシュに湧いている今の地球で、それも狭い日本で、こんな大規模開発の仕事場があるなんて。
だけど変だな?
こんな大規模開発の仕事があるのならメディアが取り上げないはずがない……
やけに大量の土木ロボットと人員を投入しているのも気にかかる。
普通の開発事業なら土木ロボットの投入は理解できるがロボットの管理と監視に人員を少数配置するだけで良いはず。
今の状態では人件費がかかりすぎて、こんな開発事業はペイしないはずだぞ……
後に宇宙に飛び出して太陽系どころか銀河系、アンドロメダ星雲も飛び越えて、ついには銀河団まで超える活躍をすることになる楠見 糺の、これは若い頃のお仕事物語。
彼が、いかにして太陽系でも屈指の(でも注目はされない不運の)トラブルバスターになったのか?
これは銀河どころか次元すら飛び越える運命を持つトラブルバスターの若き日の苦難と不運の物語となる。