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95話 最初の村に着きました


 この世界の旅っていうのがどういうものかと思ったけど、ほんと快適で困っちゃうね。台車はフィスタニスがはりきりすぎた所為か車軸が折れて使えなくなっちゃったけどな。


「あ、あれが村じゃないですか?」


「おー、マジだ。今日はあそこで宿に泊まれるぜ」


「久しぶりに快適に寝れるわけだの」


 ターナの声に、談笑しながら歩いてた皆が視線を前に向ける。確かに村っぽいものが見えてジェノが嬉しそうな声をあげる。コノミも同意らしく嬉しそうにしてる。思ったよりは快適だったって言ってもやっぱり宿の方がぐっすり寝られそうだしな。


「今の状態でも普通じゃ考えられないくらい快適なんですけどね・・・」


 ターナが微妙な顔をしてる。B級冒険者としてあちこちで活動していたターナからしたら、充分に快適らしい。ペースが速い以外はそうだろうとは思うけど、ジェノの家で毎日お風呂に入ってぬくぬくと布団に入ってた俺たちからしたらこれでも快適とは程遠い。


 最初は物珍しさからまだ楽しかったけど、お湯と布で身体を拭うだけっていうのは地味に辛い。早く宿でお風呂に入りたいもんだ。


 ちなみに、身体を拭う時は俺も女性陣に混じってた。中身はおっさんでも今は美少女なわけだしセーフセーフ。役得ってやつじゃないかな。コノミに関してはよくお風呂に一緒に入ってたしな!


 というわけで俺達は村へと到着した。なんか喉かだけどそんなに小さくも無さそうだ。


「スプリお姉様、着いたので降りてくださいな」


「ん、ありがと」


 台者が壊れたから俺はフィスタニスに負ぶってもらっていた。この中で一番体力と力がありそうだったからな。お姉様っていう呼び方は敬意を篭めてそう呼ぶように指定した。なんか百合百合してていいじゃん?


「ここはレザン村っていうんだな。村ってわりにはでけぇな」


「ここはコウロに続く中継点ですから。人の行き来が盛んでその分宿や商店が充実してるんですよ」


「なるほどなー」


 ジェノの呟きにターナが大剣を振るう。ジェノは上機嫌で納得しながら腕で大剣を受け止めた。本能の一撃は速いけど単調で読みやすいらしい。ただ、素手だと貫き手の速度が速すぎて危ないとかで一度ジェノが死に掛けたから大剣を返却した。


「これからどうするんだ?」


 俺がジェノに問いかけると、ジェノは少し悩んだ後すぐに口を開いた。


「まずは宿を確保して、その後は自由行動。飯の時間までには宿に帰ってくること、でいいか?」


「私は良いと思います!」


「俺もそれで大丈夫だよ」


「スプリがそう言うなら我慢する」


「お姉様がそうおっしゃるならワタクシも構いませんわ」


「うし、じゃあとりあえず良さそうなとこ探すか。お金はあんまり無いから節約するけどな」


 ジェノの問いかけにそれぞれが了承の意を伝える。コノミとフィスタニスはジェノというよりは俺に従ってる感じだけど、それも仕方ない。この龍とドラゴンの姉妹は別にジェノに見惚れた訳じゃなくて、俺がぶちのめしたから着いてきてるだけだからな。


 二人ともどちらかと言えばジェノのこと嫌いだろうし。それでも傍目から見たらジェノのハーレムパーティだから主人公の体裁だけは整ってるはず。ハーレムはお約束だしね。俺は中身おっさんだけど。








 適当に歩き回った俺達は木造で綺麗めな宿を見つけてそこの部屋を予約した。四人部屋一つと一人部屋一つだ。ジェノが


「節約の為に四人部屋一つでいいんじゃないか?」


 なんて提案をしたけど、テレたターナに肩を強打され、怯んだ隙にコノミとフィスタニスにボコボコにされていた。ジェノも懲りないけど、嬉しそうに踏まれてたからむしろそっちが目的かもしれない。


 兎にも角にも部屋を予約したから自由行動ということで、俺とコノミとフィスタニスは食べ物屋を探して周ることにした。コノミがお腹を空かせてたからな。


 旅の資金とムゲン袋を管理してるジェノは素材の売却、旅に必要な物資の買出しを担当することになった。あと防具を見に行くとかで、ターナはそれに付き添っていった。武器は手入れがいらないらしいけど、ジェノが旅立ちの為に用意してた防具は旅立つ前のたったの数日でボロボロになってたからな。補修はしたけど良さそうなのがあれば買うのかもしれない。


 今は午後三時くらい。結構余裕あるから少し食べたら珍しいものが無いか探してみるもの良さそうだ。あれ、でも俺にとっては大半が珍しいんだろうから何が珍しいのか判断出来ないぞ。コノミもフィスタニスもそういうの疎そうだし、次の町ではターナに付き合ってもらった方が良さそうだ。


「スプリ、あっちから美味しそうな匂いがするぞ!」


「お姉様、急に走ると危ないですわよ!」


 コノミが走り出してフィスタニスが追いかける。完全に姉妹が逆なんだけどこういうもんなんだろうか。一人っ子だったからよく分からないな。リアクースとリクルースも妹の方がしっかりしてた気もするしなぁ。そういえばレルカも含めてあの三人見送りにいなかったけど、何してるのかな。


「スプリ、早く!」


「はいはい、今行くよ。慌てると転ぶぞ」


 コノミがくるりとこっちを向いて俺を呼ぶ。すっごいそわそわしてる。ジェノから預かったお小遣いは俺が持ってるから俺がいないと何も買えないからな。


「早く三人で美味しいもの食べたいんでの!早く早く!」


 ああ、そういえばコノミいい子だったわ。邪推してしまってなんか申し訳ないな。確かにずっと塩味の肉ばっかりだったし、美味しいもの食べよう。少し食べたくらいで夕食に響くような面子でもないし。








「これ美味しいの!」


「まぁまぁですわね」


 木の器に入ったシチューみたいなとろみのあるスープを口にして、美人姉妹はそれぞれの反応を見せた。コノミは元気一杯に全身で美味しさを表現し、フィスタニスは口ではそう言いながらもどんどん食べている。素直じゃないやつめ。


 俺達は朝露と若葉亭という宿屋兼食堂に来ていた。


 このシチューもどきはメニューには普通にシチューって書いてあったからこの世界ではシチューなんだろう。味は違うけど、普通に美味しいし。この村の食堂でも高級志向で良いところみたいだからな。コノミに美味しいもの食べさせたくて結構奮発しちゃった。


「やはりワタクシはお肉が食べたいですわね」


「どうせ旅の間は食べ放題なんだからいいじゃん」


 襲ってくる動物系の魔物なんかはそのまま食料にしてたわけだけど、フィスタニスは焼くこともなくそのまま食べてた。流石ドラゴンなんだけど、あんまりにもグロいので人の姿に相応しい食べ方をしてもらったのは記憶に新しい。


「じゃあ次はこのステーキとかいうのを頼もう!これは肉のことだの?」


 憮然とした表情のフィスタニスを見てコノミがメニューを指差しながら提案をした。食べたいだけなのか妹を思っての提案なのか判断出来ないけど、乗っておくか。人間の食べ物に慣れてもらった方がいいだろうしステーキならとっかかりとしては充分だしな。


「そうだな、フィスタニスの為に美味しいお肉も食べておくか。すみませーん」


「はい、ご注文ですか?」


「このオオウシのステーキを三つください」


「焼き方はどうなさいますか?」


 おお、焼き方まで選べるのか。俺はしっかり焼いてあるのが好きだけど、フィスタニスはレアの方がいいだろうな。コノミはどうだろう、聞くのが早そうだ。


「焼き方選べるんだってさ。しっかり焼くとか少しやくとか、どうがいい?」


「んー、じゃあしっかりめでの!」


「了解」


「ワタクシは生がいいですわ」


「二つはしっかり焼いたてもらって、一つは出来るだけレアで」


「畏まりました」


「・・・」


 注文を聞いた店員が去っていく。フィスタニスは納得いかない感じの顔をしてるけど、仕方ない。ステーキって言ってるのに生で食べるやつがどこにいるんだ。このステーキでフィスタニスが人の料理に興味を持ってくれると良いんだけど。


 俺達は期待に胸を膨らませながらステーキを待つ。




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