94話 快適な旅の始まり
短いですが章の始めということでお許しください
コウロの街を旅立ってから数日、俺達は順調に進んでいた。明るくなったら歩き出し、食事などの休憩を挟みながら暗くなったら野営をする。テントや食料なんかも全部俺特性のムゲン袋に入ってるし、快適そのものだ。
野営の時も普通は交代で見張りを立てるのが普通らしいけど、昼の間はほとんど寝てる田吾作が見張っててくれるから襲撃なんて怖くない。田吾作の警戒網を突破できる相手なんているとしたらそれこそ魔王クラスなんじゃないだろうか。
俺の影の中にはオルトロスが潜んでて、臭いでモンスターの接近を教えてくれるし至れり尽くせりだね。
徒歩での旅になるから食料も大量に買い込んである。人数多いしみんな結構食べるからな。ムゲン袋は中が外界と時間の流れが隔離されているから腐ったりすることはない。逆に熟成なんかもしないけど、そんなに知識も無いし痛まないほうが重要だ。
それに、夜の間に田吾作が倒したモンスターやオルトロスが狩って来た獲物が食卓に並ぶから、ムゲン袋の中の食料はあんまり減ってないらしい。肉ばっかり続いてるけどみんな平気そうだ。むしろ皆喜んでる気すらする。うちの女子は全員肉食系だからな。
俺たちは街道に沿って王都を目指している。それは領主の娘が死亡した場所が王都だからだ。間の村や街を経由しながら行くことになるだろう。どれくらいで着くかは正直分からない。地理に疎いのもあるけど、そうじゃない。
間に村や街があってそこを経由するってことは、何かしらのイベントがあってしかるべきだからだ。で、主人公たるジェノが颯爽と巻き込まれて、なんやかんや収束させるべきだ。そうなるように俺も頑張るし。それを考えるとどれくらいで着くかなんて分からないよね。
最悪一目だけでも会えればそれで充分だって言ってたし、一年あるなら半年後くらいに着いてもいいんじゃないかなぁと思ったりする。考え方がダメ人間なのは承知の上だ。どうにもぎりぎりになってから動き出してしまう性分なんだよね。
毎年、今年こそは毎日コツコツやろうって思うはずなのに、溜まりに溜まった宿題を夏休み最終日に片付けるような人間だ。成長しない部分ってあるよね。全部とか言われたら泣くけど。
ちなみに、進むペースは遅くないと思う。夜は寝具に包まれてぐっすり寝てるしご飯も栄養満天、全員身体能力は結構高いと条件は揃ってるからな。【弱体化】補正の掛かってる俺は正直貧弱だけど、小さな荷車に乗ってフィスタニスに引いてもらってるから早いペースでも問題はない。
「今日中には最初の村に着けそうだ」
ジェノが冒険者ギルドにもらった地図を見ながらみんなへ声を掛ける。普通は地図なんてくれないらしいんだけど、そこはコネの力で譲ってもらった。詳細って訳じゃないけどあるとないとじゃまた違うからな。
さー、何かイベントが待ってるといいんだけど。
おまけ
「姉さん、早くしてください! レルカさんも、早く起きて!」
「ううーん・・・あと五時間・・・」
「いつまで寝ぼけてるんですか! 置いていきますよ!?」
「リクちゃん、準備出来たわよー」
「姉さん、スカート履き忘れてます! ああ、その格好で出て行かないでください!」
「・・・zzz」
「レルカさん! もう、二人ともどうして昨日の夜あんなに飲んじゃったんですか!」
こうしてこの三人(+二匹)はジェノ達の見送りに遅れたのであった。