表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/130

86話 ボス戦は突然に


「まさかスキルも使えないこんな小娘に良いようにされるなんて、切り込み隊長のが聞いてあきれるな」


 あ、これダメなやつだ。ヘキサの顔に俺が始末してやるって書いてある。しょうがないから返り討ちにするか。


 そして案の定ヘキサがどこからか取り出した白っぽい槍を構えた時、俺の斜め前に立つ影があった。


「・・・何のつもりか聞くだけ聞いてやるよ」


「もう一度言うが、オレ様達は敗北した。止めとけ」


 それは漆黒の毛皮に覆われた二つの犬の頭を持つ、俺のお世話係のオルトロスだった。エプロンを剥ぎ取ったその下には獣の顔を模した光沢のある漆黒の鎧を着て、その手には海賊が持ってそうな幅のある曲剣が握られていた。サーベルっていうんだっけ?


 っていうかどいつもこいつもどこから武器出してるんだ。収納系の魔法具でも持ってるのか? 俺も後で作ろうかな。コノミの脱皮した皮とかあればいいんだけど。


「なら仕方ない、お前はそいつに殺されたことにしといてやるよ」


「お前はオレ様達の中で隠密行動に長けてはいても、その分正面からの戦闘は全然得意じゃないだろうが。オレ様に敵うとでも思ってるのか?」


 オルトロスの身体から威圧感みたいなものが放たれている。正直舐めまくってたけどこれでも幹部なんだもんな。今の状態の俺なんかよりも数十倍強そうだ。


 けど、ヘキサは隠密行動が得意な分オルトロスより戦闘力は低いのか。その割には自信満々に構えてるけど何か秘策でもあるのか?


「ああ、思ってるさ」


「何・・・っ!?」


 ヘキサが床を蹴って真っ直ぐ飛び出した。それなりに早いけどオルトロスはしっかり反応出来ているようでサーベルを構えている。しかし、ヘキサの眼が赤く輝いたかと思ったら、オルトロスは驚きの声を上げながら突然気をつけをして硬直してしまった。


「危ない!」


「ぐぁっ!」


「ちっ」


 そこへ奔るヘキサの槍。それは真っ直ぐにオルトロスの眉間に向かっていた。咄嗟に黒い毛並みの巨体に体当たりするとあっさりと転ばせることに成功した。だけどどうやらヘキサが軌道修正した槍が右の肩を貫いたようでオルトロスが呻き声をもらす。


「硬直させてたのが裏目ったか、しっかり立たせとけばよかったな」


 ヘキサが舌打ちと共に槍を引き戻し、自身の血に塗れるオルトロスにとどめを刺そうとしていた。させるか。


「【融合躍進】!!」


「っとと、スキル使えたのかよ」


 近くにリアクース達が来ていることを考えて【弱体化】を解除するんじゃなくて【融合躍進】を選んだ。幻影の龍が吠えながら俺の目の前まで来ていたヘキサの横合いから現れると、警戒したヘキサは跳び退って距離を取った。


 そのまま龍が俺のと一つになって、龍人態(命名俺)へと変化した。


「どうせ誰も見てないし、さっさと片付けてやんよ」


 ヘキサはその身に纏っていたローブを放り投げると、その身体が黒い瘴気のようなものに覆われていく。そして見る見る内に変質していき、細い身体に細い手足、だけど全身真っ黒で角や翼まで生えている、立派な悪魔へと変貌した。


 身体の各所からは真っ黒い薄緑色の炎が噴出している。なにこれかっこいい。


「何だその魔力は・・・! 下級悪魔じゃなかったのか! お前は、一体・・・!?」


 なるほど、下級悪魔っていう設定で魔力やらスキルで隠密行動をこなして、戦闘は強くないふりをしてたのか。ヘキサの真の姿のかっこよさはは明らかに下級悪魔で済ませてよいレベルじゃないし、オルトロスがあっさりやられたことを考えても猫を被っていた可能性が高い。


 っていうかオルトロスは暗示でもかけられたみたいに気をつけの体勢のまま驚いた顔で床に転がってる。実にシュールだ。


 多分あの眼が光ったやつだろうな。俺に効いてないのはなんでだろう。対象は一人までとかあるのかな。


「俺は魔王連合“六芒星ヘキサグラム”の一柱、ヘキサ・セクス・ヘクスだ。暇で遊んでるんだから邪魔するんじゃないよまったく」


「六芒星だと・・・!?」


「ああそうさ、お前らなんかじゃあ足元にも及ばない存在ってことだよ。もちろん、あのダメドラゴンのフィスタニスすらな。理解出来たんなら、さくっと退場してね。俺のゲームにお前らは邪魔だ」


 なんかかっこいい名前とか出てきた。魔王連合?ってことは魔王複数いんのこの世界。しかもその一人ってことは超強いってことか。なんか突然大物出てきたな。俺は全く知らないけどオルトロスは気をつけのまますっごい冷や汗流してるし本物なんだろうなきっと。


「お前らを消したら暇つぶしの続きに戻らないといけないから俺って忙しいんだよね。それじゃ、殺すか」


 ヘキサは尋常じゃないプレッシャーを放ちながらゆっくりと歩いてくる。ボスってどうしてこうもったいぶるんだろうね。それにしても突然魔王とバトルとかこの世界どうなってるんだ。このイベントのボスはフィスタニスだと思ってたのに、こいつはジェノじゃ荷が重いぞ。


 となると俺が相手していなかったことにしてやるしかないか。いやほんと、魔王とか予想外だよ。


 まぁ、負ける気はしないんだけど。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ