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82話 沢山のワニに囲まれて

今回かなり短いです

すみません


「おっとと、どうやら僕だけ別の場所に飛ばされてしまったみたいですね」


 突如空間に空いた穴から飛び出してきたのは羊の頭を持つBランク冒険者、ナムカラであった。先程のように遥か上空から落とされるということもなく、大した衝撃も無く着地する。獣人故に普通の人よりは身体が丈夫とは言ってもナムカラは魔法使いであり身体能力は決して高くないのだが、流石に50cm程の高さならば難なく衝撃を殺す事が出来る。


 そして辺りを見回したナムカラはポツリと呟いた。まばらにある森を有する平原にいたはずのナムカラは、百メートル四方程の広い空間の真ん中に立っていた。五メートル程の高さには天井があり、床も壁も天井も、綺麗に均された土で出来ているようだった。


「ふむ、これは地下ですか・・・。分断するためと、何かしらの罠があると考えるのが妥当ですかね」


 しゃがみこんで床を触ったり指で土を摘んでみたりしてみたナムカラは、自分の置かれた状況を冷静に分析していた。その表情と声にはどこか楽しそうな色が含まれている。


「さて、どちらに行きましょうか。ここがあの拠点の中だとすれば、普通に考えてどちらかが奥に通じていてどちらかが出入り口に繋がっているはずですが・・・」


 ナムカラは、自身から見て丁度左右の壁の真ん中に一つずつ扉があるのを発見していた。そしてナムカラの推測の通りこの空間は地下に広がるフィスタニスの拠点の中にある部屋で、一つは出入り口から続く扉で、もう一つは奥へと繋がる扉。この場所はその間に存在するとある罠の部屋であった。


「わざわざこんな所に転移させるっていうのがまず

怪しいんですよね。邪魔な僕を飛ばしたのならその邪魔者を排除する何かが必ず存在するはず・・・」


 ナムカラはしばし考え込むが、すぐに止めた。その顔は実に晴れやかだ。


「考えても仕方ないし何か起きてから考えますか」


 そう言って何となく目に付いた左の方へ一歩踏み出した瞬間、四方の壁際に沢山の魔物が召喚された。壁を埋め尽くすように現れたそれは、アノリアンと呼ばれるワニ型の魔物で、鋭い牙と強靭な鱗に覆われた身体を持っている。


 更に、武器や防具を扱う器用さとある程度の知能を有している。この世界では獣人やケモミミと同じく亜人として扱われるリザードマンの一部が、遥か昔に魔物化した存在と言われている。危険度のランクはEランク。しかし、それは何の特徴も無い一体に対しての評価である。


 アノリアンの中でも上位個体は得意とする戦闘スタイルによってアノリアンウォリアー、アノリアンメイジ、アノリアンアーチャー等に分類され、それらのランクはDランク。これももちろん一体に対しての評価である。


 そして更に、アノリアンを統べる者として、アノリアンロードという上位種も存在している。そのランクはBランク。これは、アノリアンロードがほぼ間違いなく群れを率いていることから、このランクが設定されている。


 即ち、アノリアンロードが率いるアノリアン達の群れは人間の中でも上位の実力を持つBランク冒険者が四人のパーティーで連携してやっと安全に倒せる程の強さを持つということである。そして今まさにナムカラを囲うように部屋の壁際に現れたアノリアンの群れの中にチラホラとアノリアンウォリアーの姿が見てとれた。


 ナムカラの位置から確認する術は無かったが、後方にはアノリアンアーチャーとアノリアンメイジが控えており、前衛のアノリアンとアノリアンウォリアーが攻撃を仕掛けたならば一斉にナムカラへ遠距離攻撃を仕掛ける手はずを整えていた。


「なるほど、こういう罠でしたか。となると当然・・・いますよねー」


 ナムカラが己が放り込まれた罠の性質をしっかりと理解して周囲のワニ達を見渡してみれば、一際大きな身体を持ち、立派な鎧を着込んで大きな剣を携えた個体を捉えた。それこそがアノリアンロードであり、アノリアン達の指揮を執ることでその群れは恐るべき力を発揮する。


 この拠点に侵入して奥を目指すべく部屋の真ん中を通り一歩踏み出した瞬間、アノリアンロード率いる群れが突如として現れて一斉に襲い掛かる。これこそがこの拠点の誇る罠の一つ、四面楚歌の間である。



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