56話 コノミの装備を作ろう!
実はスプリはロリコンです
ジェノから追加のお小遣いをたんまりともらった俺達は、満足するまで露店で食べ歩きをして、街のゴミを片付けて、装備の素材を探して街を歩いた。
そしてお店や露店を巡って、色んな素材を買い漁って再び龍神の広場へとやってきた。布や金属、木材等、そこには結構な成果があった。けど宝石類は数個あるだけでほとんど無いし、モンスターの素材なんかも今回は少しだけにしてみた。何が良いとか分からないし余らせても仕方ないからな。
「これで装備を作るんだな?」
「そうだよ。コノミはどんなのが良い?」
テンション高めのコノミに、どんな装備にしたいか聞いてみる。買った素材は少しの追加料金で買った木箱に突っ込んでコノミに運搬してもらった。だからまずはコノミが欲しい装備を作ってみよう。
「んー・・・やはり可愛い装備かの。防御力はこの際無くても構わん。どうせ我の魔力はほとんど残っておらんからスプリに任せた方が良いだろう?」
「そんなこともないけどな」
コノミは龍神としての力をほとんど失った。だけど、普通の人間に比べたら十分に強い身体を持ってる。さっきも弱体化した俺が持てないような荷物をコノミは軽々と運んでたんだから。
しかし、可愛い装備か。コノミをマジマジと眺めてみる。可愛い。今のコノミの格好は、白いワンピースに頭に田吾作を乗っけてる。可愛い。白い帽子とかだとお嬢様って感じになっちゃうな。
それはおいといて、正直俺に装備を作るようなセンスは無い。しかし、【アイテム作成】は俺と比べてすごく出来る奴だ。多少曖昧でもイメージさえすれば細かいところは修正したりそれっぽくしたりして、ちゃんと形にしてくれる。だからコノミの装備だってなんとかなるはず。
「うーん・・・でもやっぱり多少は戦えるようにしたいよな」
というわけで、コノミの装備を作るに当たって、まずはコノミの戦闘スタイルを考えるところから始めることにした。俺、ジェノ、コノミ、田吾作で旅に出るとしたら、役割はどうなるか。
ジェノ:前衛。ガイサを装備した時の強さが未知数
俺:遠距離攻撃も出来るし近接戦闘も出来る
コノミ:魔力はほとんど無くて、身体能力は普通の人よりかなり高い
田吾作:遠距離攻撃が強い。近づく前に相手は死ぬ
こうなる。うん、別にコノミが無理して戦わなくてもいい気がしてきた。普通のパーティーで考えると支援系が欲しいのかな。シーフやレンジャーみたいなのも欲しいし。田吾作を戦わせる気もあんまり無いしいっそ遠距離攻撃の手段を増やすか。武器さえ強ければ腕力はいらないし。
んー。でもやっぱり回復要員は必須だよね。俺自身は縛りプレイをするとしても、コノミが使えるのは便利だしいいんじゃないかな。一応攻撃方法も用意しとくとして。
「じゃあ白い聖職者っぽいのにするか」
俺は服屋で買ってきたシルクを取り出す。高級品だったけど、買っといて良かった。あとは薄水色の布もっと。全身真っ白は色々まずいだろうし、龍神の色も混ぜとこう。
「【アイテム作成】」
思い浮かべるのは、可憐で清楚なシスターのような服。ああでも旅をするなら聖騎士っぽいのもありか。ええいどっちも混ぜてしまえ!布と金属も一緒くたにして、さらにはイメージもシスターと聖騎士も一緒くたにして、装備が出来上がった。うん、さすが出来るスキルは違うね。うまいことつじつまを合わせてくれてる。
特別なスキルは特につけてない。防御力アップくらいか。へそ出しだけど。
「出来たのか!?来ていいのかの!?」
「さすがにここじゃまずいから、後でな」
お披露目はまた家に帰ってからするとして、次は武器か。メインは杖で確定だな。回復要員だし。あくまで俺のイメージだけど。
うーん、じゃあサブ武器は銃にでもしてみるか。弾丸と銃は別にして、装填方法は中折れショットガン式にするか。かっこいいし。ポンプアクションとかはいらないから片手でも扱えるようなコンパクトなのにしよう。拳銃サイズの。
「田吾作、ダイヤ出せる?」
「タゴ!」
「ん、ありがと」
田吾作が奇怪な返事をすると、手のひらくらいの大きさで平べったくて形も手のひらを鋭くしたようなダイヤの刃が数本空中に現れてから地面へ突き刺さった。それを抜いて目の前に並べる。これがあるから、今回宝石はあんまり買わなくてすんだ。こういうのって統一性があったほうが見栄えがいいし。
あとは適当に金属や木材を用意して、準備完了だ。では早速。
「【アイテム作成】」
今回は思考を割いて弾と銃本体を同時に作っていく。弾の方は単純で、ショットガンの弾くらいの形とサイズで金属でほとんどを作って、先端部分には半球のダイヤが付いている。そのダイヤの部分に一定の量の魔力を溜め込む機能と、特殊な合図を受けると許容量の二十分の一の魔力を弾丸の魔法に変えて発射する機能。合図は三種類あって、一つは通常弾、一つは拡散、一つは収束という風に対応した状態で発射される。
本体の方は金属の短い筒に木製のトリガーとグリップ、そして切り替えスイッッチのようなもの、セーフティーがついた簡単な作りだ。引き金を引くと中の弾丸の後部に持ち主の魔力を変換した特殊な合図が流れる機能、その合図を切り替える機能、セーフティーは言わずもがな。
あとは中折れ式で弾を直接筒状の銃身にセットする方式だ。グリップ部分にはこの機能の付与に耐えうる素材として、見えないようにダイヤモンドが埋め込まれてる。
この機構ならわざわざ弾と本体に分ける必要も無い。銃の形をしたものに直接魔力をぶっこんでぶっ放せばいいだけの話だ。じゃあ何故分けたのかというと、中折れ式にしたのは趣味だけどちゃんと理由がある。
一つは、弾と本体が二つ揃わないと使用が出来ないようにすることで、奪われにくくした。まぁあんまり意味は無いのかもしれないけど、手に持ってない時は別々に保管すれば確実に奪われにくくはなる。別に装填シーンがかっこいいとか思ってないよ。
もう一つは、ジェノの能力を活かす為だ。ジェノに【使い捨て】のスキルを使ってもらえば込めた魔力全部を一辺に解き放つことが出来るようになる。しかし、銃と弾が一体化してると、一回使えば全部砕け散る。そうならない為に、発射機能自体は弾につけた。弾なら砕けても替えが効く。
安全の為に最初は許容量少な目の弾丸しか作るつもりが無いから、万が一の切り札があった方が良いっていうのもある。そっちの方がかっこいいとか思ってないよ。
主な理由はこの二つだ。じゃあどうして20発に制限したのかと言うと、万が一奪われた場合でも保管する時は弾と銃を別々にしておけばリスクが減るのはそうだけど、戦闘中に奪われでもしたら弾が装填されたままだ。使用回数を少なめにしておけば敵もすぐに弾切れになるということだ。別に装填シーンがかっこいいとかは思ってないよ。ほんとだよ。
というわけで武器が出来上がった。コノミは大興奮を抑え切れなくてキラキラした目を向けてくるけど、あくまでこれはサブウエポン。危ないし一通り作業が終わってから触らせることにして今はコノミを放っておく。
杖は木製のものにしよう。なんか生命力の象徴みたいなイメージだ。数少ないモンスターの素材である手頃な太さの枝を手にする。なんとも小学生男子が振り回したくなるような枝だ。これに宝石でもはめ込めばそのまま杖になるな。
こちらも数個買った内の一つである青い宝石と合わせて、目の前に置く。
「【アイテム作成】」
ほんとに宝石をはめ込んだだけの簡素な杖が出来た。対象を回復させるスキルを付与したからこれさえあれば治療し放題だ。盛大に魔力を込めて作ったから起動にかかる魔力もごくわずか。これってひょっとしたら伝説級の装備かもしれない。だけどまぁ、回復はコノミの回復魔法っていうことにすれば問題ないだろ。多分。
「ほら、コノミの杖だよ」
「おお、杖だ!こうか?」
杖を振ると、はめ込まれた青い宝石が煌いて癒しの光が俺の身体を包み込む。おお、何か出た。なんとなく回復した気がする。うん、ダメージないからわかんないね。俺はとりあえず愛想笑いで誤魔化しつつ、杖を手にしてはしゃいでるコノミを見つめていた。可愛い。




