51話 キラキラネームは嫌だよね
最初の召喚は逞しい四肢が生えたみかんとかいうとんでもないもんだったけど、気にせず次に行こう。一人称が被ったとかでこの世の終わりみたいな顔してるコノミもこの際無視だ。
「【従魔召喚】」
俺は再び召喚スキルを発動する。魔力は45%、数は一体。え、もしかしてこれって複数一気に呼び出せるってこと?でも今はとりあえずペット・・・じゃなくて従魔が欲しいから一体でいいや。決定、っと。
さっきと同じく空中から光があふれ出して、段々と形を作っていく。頼む、次こそは俺好みのモンスター来い!
祈りが通じたのか、光が収まってそこに居たのは一羽のフクロウ・・・いや、耳のようなのが頭の上についてるからミミズクか。確か違いはそれだけらしいんだけどね。大きさはアフリカオオコノハズクくらいか。
ちなみに、アフリカオオコノハズクっていうのは丁度今の俺の頭くらいの少し小さめのミミズクだ。
そのミミズクは不思議な色をしていた。ベースは銀色でところどころが黒い。そして全体的にキラキラと煌いている。目はパッチリ真ん丸で、くちばしは黄色っぽい。そして凛々しくそそり立つ羽角は完全に水晶のような煌く羽で出来ていた。なにこれ可愛い。そして綺麗だった。
「きた!ミミズク来た!」
「おお、こいつは可愛いの!」
さっきとはうってかわって綺麗で可愛いモンスターの登場に俺もコノミも大興奮だ。だって俺フクロウ好きだし、ミミズクはもっと好きだし。可愛いよねミミズク。けど、この子は契約してくれるんだろうか。多分喋れないだろうし。
「うちの子にならないか?」
困った挙句に直接聞いてみることにした。モンスターなら普通のミミズクより知能高そうだし、俺と同じように翻訳が働いてたらリスニングだけは出来るかもしれないし。でもそれなら普通に話せそうだけど・・・まぁ細かいことはよく分からないし気にしないでおこう。
「クー!」
ミミズクは俺に返事をしたかのように鳴いた。そして音も無く飛び立つと俺の頭の上に着地した。おお、なんかパスみたいな何かが通じてる感じがするし、契約完了ってことだな。ジェノや、一瞬だったけどさっきのみかんともあったし。けど、契約したんなら名前を付けないとだ。
「コノミ、この子の名前何にしようか?」
「んー、キラキラ光ってキラちゃんとかどうだ!?」
なるほど、非常に可愛らしい回答だ。けどキラかぁ・・・。元居た世界では新世界の神だったり最強のコーディネーターだったりしてあんまりペットに名づけたい名前じゃないなぁ。あくまで個人的な話だけど。
「他に何かないかな?」
「じゃあ、鶏肉!」
「ピュギーー!」
「わわっ!?」
さすがに鶏肉はないだろ。非常食じゃないんだから。頭の上のミミズクも気に入らなかったらしく、抗議の雄叫びをあげている。契約してる影響なのか、なんとなく意思が伝わってきてる気がする。あくまでもなんとなくでしかないけど。
コノミは以外と大きかった雄叫びに驚いてビクッとしてる。可愛い。フクロウやミミズクって意外と声でかいんだよな。モンスターなら尚更か。
「却下だってさ」
「んむー、名付けとは以外と難しいの」
コノミは難しい顔をしながら考え込んでしまった。可愛い。こうなったらいっそ直感で名付けてしまおう。
「よし、じゃあお前の名前は田吾作だ!」
「田吾作・・・どうかの?」
「ピュイ!」
「気に入ったってさ。おいで田吾作。これからよろしく頼むな」
「クー」
田吾作は名前を気に入ってくれたようで、コノミの問いに短く鳴いた。左手を地面と水平にして胸の高さに構えると田吾作が手の上に降り立ってこっちを向いてくれた。ミミズクらしくすごく軽くて、まるで重さを感じない。指の背で頭を撫でると目を細めて返事をしてくれた。すっごいモフモフ!フクロウカフェで触ったどの子よりもモフモフ!
「よし、これからはお前もスプリの僕だの。よろしくな田吾作!」
「クークルルルル!」
「わっ、軽い!軽いな田吾作!もっと肉食べないとだの!」
コノミもすっかり田吾作の虜になったらしく、満面の笑顔で田吾作に挨拶をしていた。可愛い。っていか僕ってなんだ。そんなつもりは無いんだけど。どうやら先輩気取りのコノミはどことなくドヤ顔だ。可愛い。
そんなコノミにこちらも機嫌良さそうに田吾作が柔らかく飛び立って、コノミの頭の上に着地した。そしてコノミは更にはしゃぐ。ああ、可愛い。どっちもすごく可愛い。召喚を試してみて良かった。あのみかんのことは忘れてしまおう。
街を歩きながら、行き交う人々を眺める。そこには普通の人間だけじゃなく、先日一緒に戦ったレルカのように動物の耳や尻尾が生えてる以外は普通の人間から、テッペのように二足歩行する動物みたいなのまで様々だった。そして、周りの人々からも注目されていた。
そりゃあね、美少女二人が手を繋いでるだけでも目立つのに、俺の頭の上には可愛くも美しいミミズクが乗ってるんだから。俺だって立場が違えば間違いなくガン見する。間違いなく。
「あれ、スプリちゃん?その子妹さん?そっくりだね!わ、何この子どうしたのすっごく綺麗なミミズク!」
ふと、声をかけてきたのはピクピク動く犬耳を頭に生やしたわんぱくそうなCランク冒険者、レルカだった。噂をすればなんとやら?俺とコノミ、そして田吾作に大興奮だ。この人犬耳ついてるし普通に可愛いんだよな。背丈も俺と同じくらいだし。20前半らしいけど。
「昨日ぶり。こっちはまー、妹みたいなもので、コノミっていうんだ。こっちは田吾作。さっき召喚してみた」
「わ・・・我はコノミだ。よろしく頼むの」
「ピュイー!」
俺の雑な紹介にそれぞれが自己紹介と挨拶をする。田吾作のは鳴いたようにしか聞こえないけど。
「私はCランク冒険者のレルカだよ、よろしくね。召喚したってことは、これから登録しに行くのかな?」
「登録?俺はジェノの従魔だしテイマーにはならないよ?」
「あー、そっか、スプリちゃんは知らないよね。召喚しても冒険者にはならなくてもいいけど、召喚したモンスターは絶対に従魔登録しなくちゃいけないんだ。街中を野生かどうか分からないモンスターがうろうろしてたら普通の人は嫌でしょ?」
「たしかに」
全くだ。試験の時は飛び交ってたけど、事前に告知してただろうしな。じゃあ面倒だけど登録しないとだな。
「ありがとうレルカ。じゃあさっそくギルドに行って登録してくるよ。行こう、コノミ、田吾作」
「うむ」
「ピュイ!」
「はーい、またね!」
こうして俺達は田吾作を登録する為に、もう一度ギルドへと向かうことにした。