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22話 ランクアップ試験 終了?

キャラが迷走中


 闘技場の中に設けられた医務室、そこに俺達はいた。何故なら、リクルースとの試合に勝利した矢先にジェノが気を失って倒れたからだ。なので慌ててジェノの首根っこを掴んで試験官の案内で医務室へとやってきた次第だ。


「ふぅ、一時はどうなることかと思った」


 安堵のため息を付くと、カーテンの向こうを見やる。その向こうにあるベッドにはジェノが寝かされていて、闘技場に詰めてる医者の診察を受けてるところだ。今この部屋には俺とコノミ、そして何故かリアクースとリクルースがいる。試験官は案内だけして戻っていった。まぁ次の試合とかもあるしな。


「のう、スプリはいつまでその格好でいるのだ?確かに我に似て非常にかっこいいのだがの」


 自分で言って何故か照れつつまんざらでもない顔をしているコノミ。可愛いけどなんか若干のうざさを感じさせ、そこがまた可愛い。まぁ確かに龍神の力を前面に押し出す為に龍神と融合したような見た目だし、今のコノミの姿からも少し要素をもらったからな。髪をまっすぐ下ろしたり金色の毛を一房混ぜてみたりと。


 そして言われて気づいたけど、まだスキルを解除してなかった。リアクースやリクルースもそういえば、みたいな顔をしてるしきっとみんなも忘れてたはずだから大丈夫。恥ずかしくない。【融合躍進】を解除すると俺の身体が眩く発光し、光が収まるといつもの姿に戻っていた。


「魔力が元の量まで減った・・・?」


「まるで龍と一体化したような姿に見えましたが、あのスキルは一体なんなんですか?」


 少し時間が経ってようやく落ち着いてきたからか、リアクースとリクルースが俺のスキルに食いついてきた。そりゃそうだ。Fランクの従魔にああも一方的な力を見せ付けられたら、気にならないはずがない。なのでこのスキルに関する話をしようと思ったところで、カーテンが開いて俺と同じくらいの身長のお爺さんが出てきた。白衣とかは来ていなくて、医者というよりは普通に魔法使いっぽい。まぁ魔法の存在するこっちの世界では当たり前の話ではあるけども。


「治療と診察は終わったぞ。全身ボロボロだったが特に右肩が酷かった。肩の関節が砕けてたからな。今は治療薬と治癒魔法で全身悪いとこなんぞありゃせんし直に目を覚ますじゃろうが、次の試合は棄権して安静にしといた方がいいじゃろ」


「ありがとうございます。そうさせます」


「うむ。試験官にはワシから伝えておいてやるから、傍についていてやりなさい。ではお大事にのう」


 魔法使いのおじいさんに頭を下げると、健康そうな足取りで部屋を出て行った。仕事中はこの部屋につめているはずなんだけど、きっと俺達だけにしてくれたんだろう。腕も良いみたいでよかった。


 頭を上げてこれで本当に安心だとほっと一息つきながらベッドの方へ向かうと、リアクースとリクルースが付いてきた。さっきの話もまだ途中だしな。コノミは適当な椅子に腰掛けて足をぶらぶら振っている。話にもジェノにも特に興味は無さそうだ。


「良かった・・・リクちゃんが人殺しになったらどうしようかと思ってたのよ。しかも私が恩のある人を・・・」


「人聞きの悪いことは言わないでください姉さん。試験で死んでしまっても僕は罪には問われません」


 違う、そういう問題じゃない。殺されてしまったら俺のヒロイン物語が終わっちゃうじゃないか。まだ大して始まってもいないのに。一応俺の中でのスキル縛りとして蘇生のスキルは取りたくない。取れるのかはわからないけど。治癒系のスキルは便利だとは思うけど、なるべくなら取りたくない。その他は臨機応変に。


 えっ、ていうかこの二人姉弟だったのか。道理で仲が良さそうだと思った。そう言われるとリクルースもリアクースに負けず劣らずの美形だということに納得できる。よく見ると似てるし。耳が髪に隠れてたからまさかエルフが二人もいるとは思わなかった。


「とはいえ、殺してしまわなくて良かったです。別に試験や姉さんを舐めていた訳ではなく、貴女のあの力をなるべく使いたくなかったんだと理解しましたし。後で謝らないといけませんね」


 おやおや?何だかいい方向に誤解してくれてるみたいだ。まぁ別に訂正することでもないし。にしても、ジェノにやたら憎しげな視線を向けてたからどんなやつかと思えば、普通にいいやつだった。屋台で会った時も最初は普通に謝ってたしな。あ、でも俺達キモメンからしたらイケメンは敵だった。


「そうね。あれだけの力だとDランクの試験でも目立っちゃうし仕方ないわ。けれど、勝ったけど次を棄権するとスプリちゃんと一緒に戦ったのがリクちゃんとの試合だけになるわね。合格出来るかしら・・・」


「仮にも僕に勝ったんですからね、合格してもらわなくては困ります」


 と言葉を返すリクルース。その顔にはさっきまでの間ずっとリクルースが浮かべていた不機嫌そうな表情はもはや無い。微かな、しかし確かな微笑みを浮かべていた。


 おおう、なんて破壊力だ。これがイケメンスマイルというやつか。26歳無職のキモオタすら一瞬とはいえ魅了するとはイケメン恐るべし。俺が女だったら危うく惚れるところだぞまったく。あ、俺今女だった。


 まぁ中身はただのおっさん間際の無職童貞なので何の問題も無いんだけどね。きっと何の問題も無い。


「あー、さっきの話だけど、あのスキルね。あれ実はこの街の龍神にもらったんだ」


 色々な思考を頭の隅に追いやって話を結構前から引っ張ってくる。魔法使いのおじいちゃんが出てきたから話が途切れちゃったんだよな。きちんと龍神からもらったという話を広めておかないといけない。


「え、この街の龍神様に!?すごい!どうやったらあんな力を授けてくださるの?」


「なるほど、それならFランクの君にアルクスがああも一方的にやられたのも納得がいきますね。まさか龍神様のお力とは・・・」


 驚きと興奮でハイテンションのアルクースと、冷静に聞いてるように見えてやっぱり驚いてるリクルース。やっぱりこの街では龍神ってすごい崇められてるんだな。そこでふとコノミに目をやると、偉そうにふんぞり返って俗にいう“ドヤ顔”をしてらっしゃる。うわぁ、見た目ロリであの顔はちょっと・・・。でもあれはあれで可愛いんだからやっぱロリ万歳。


「実は昨日召喚されたんだけど・・・」


 昨日あったことを二人に話していく。分かりやすく簡単に。そして二人組の男達に絡まれたというところで、リアクースとリクルースはそれぞれ同じように反応した。話を聞くと、なんと二人も登録した直後に絡まれたらしい。なんとまぁ、地味に治安が悪いのかもしれない。


 二人はどうしたかというと、二人ともそれなりに実力がついてから登録しにいったらしく、片方は適当にあしらって逃げ出し、もう片方は油断して近づいてきた男の足を滅多切りにして仲間が駆け寄ったところを逃げたそうだ。どっちがどっちなのかは怖いから忘れることにしよう。


「う・・・うぐ・・?はっ!試験!オレの試験はどうなった!?」


 そしてジェノが呻き声を上げ、数秒後に勢いよく飛び起きた。倒れたことは理解していても、結果は頭の中に残ってはいないようだ。リアクースやリクルースがいるのを不思議がりながらも試験の結果を俺に問いかけてくる。しかし俺が口を開くより先に、答えたやつがいた。


「試験なら棄権になったらしいの」


「がはっ!?」


 話をあまりちゃんと聞いていなかったコノミが誤解されそうな言葉で答えた。それを聞いたジェノは余りにもショックだったのか、ベッドの上で飛び跳ねてそのまま床に叩きつけられる。


「ジェノー!?なんてこと言うんだコノミ、ジェノがせっかく起きたのに!」


「違うのか?」


「結果的にはそうだけど、そうじゃない!」


 ビクンビクンしながらも若干落ち着きを取り戻すジェノ。しかし思わぬところから追い討ちが入る。


「まぁ、結果的にはそうよねぇ」


「ええ、結果的にはそうですね」


「ぐへぁ!?」


 さらにのた打ち回るジェノに、うっとうしく感じたのかコノミが立ち上がって蹴っ飛ばした。ジェノはそのまま壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。それを見てエルフの姉弟は笑っている。なんか怖い。


 まぁでも、試験もなんとか終了したってことでいいのかな。あれ、そういえば試験って二日かけて行われるんじゃなかったっけ?



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