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128話 VS魔王トレスリー 魔王討伐作戦


「うおおおおお!!」

「もう近づけさせぬのである!」


 背中にキバ、右肩にコノミをマウントしたサンダージェノガイサは【スキル遮断バリア】を出てトレスリー目掛けて真っ直ぐ走り出す。そうはさせじとトレスリーは強力な風属性の魔法である蘇芳色の雷撃が周囲の黒球から次々と放たれる。


「【強靭なる不可視の防御結界】」


 だが、もはや背中に装備されているキバのスキルによって完全に防がれていた。

 スキルは各個人の持つ才能のようなもので、その効果も強力なものから大した効果でないものまで様々であるが、強力であればあるほど取得している人数は少ない傾向にある。その為、ただ一人だけ獲得しているスキルはユニークスキルと呼ばれ、それだけで才能の有無を表している


 その中でも多くの人が取得していると言われているのが基本スキルであり、キバのスキルもその中の一つである【障壁】だった。だが日々使い続けるうちに進化し、今ではドーム状の結界を発生させるスキルにまで進化していた。

 スキルの進化自体は珍しいものではないが、ここまで別物と呼べるものにまで至るのはゼロではないが相当珍しい。


 ちなみに、スキルの進化とは元になったスキルが消えることはなく新たに習得する為、派生進化と呼ばれることもある。


「やるなキバ! どんどん頼むぜ!」

「おう、任せ、といて、くれ」

「小癪な! それならばまずは貴様からだ!」


 足を止めるどころか更に勢いを増して走り続けるジェノガイサと、振動で途切れ途切れながらも答えるキバにトレスリーはキバへと狙いを定めた。サンダージェノガイサやサンダージェノガイサが展開したバリアの中の相手には【滅空】は通じないが、外に出てしまっているキバやコノミには通じる。そう考えたのだ。


「ぬぅ、貴様にも通じないのであるか!」

「甘いぜ魔王! くらえ!」


 トレスリーはキバの身体が消滅するように【滅空】のスキルを発動したが、サンダージェノガイサに放った時と同じく何の効果も発揮しなかった。その理由は、ジェノの友となったテッカイザーの残骸から誕生したサンダージェノガイサの鎧が内包していた【鋼の信念】の効果によるものだ。

 このスキルは、鎧そのものと、更には着用者とその装備品、攻撃を守護するスキルであり、背中と右肩にマウントもとい装備されたキバやコノミも対象となったからである。


 つまりそれは、こうしてキバが背中に装備されてスキルを常時発動している限り、サンダージェノガイサにはトレスリーの誇る【滅空】も、魔法も、通じないということだった。


 そうして【滅空】を不発させた隙に拳の届く距離にまで接近したサンダージェノガイサはその剛腕を振るう。一度目の激突で力では敵わないことを知っているトレスリーはバックステップでの回避を試みた。

しかし、その行動は読まれていた。


「隙あり!」

「【聖なる光線砲ホーリーレーザーキャノン】!!」


 すかさずコノミの愛銃とキバの必殺スキルが火を噴いた。至近距離でサンダージェノガイサの右肩からは複数の魔力弾が、左肩の辺りからは極太の白いビームが放たれトレスリーに迫る。

 しかしトレスリーは焦ることはなかった。自身の周囲には【滅空】が展開してあり、その極薄での展開ですらあらゆるものは消滅し己が身に迫ることはないと。


「ぬぐぉぉおおおおおお!!?」


 しかしそれが間違いであると悟ったのは後ろに跳んで拳を回避したことによる油断から晒されていた無防備な身体にC級の魔物ですら一撃で仕留めるに足る威力の魔力弾が何発も直撃し、胸から上を極光とも呼べそうな光に呑まれてからであった。


 【鋼の信念】の効果は、身体から離れた遠距離攻撃にまで及ぶ。勿論状態の変化を無効にするだけで普通に防ぐことは可能なのだが、【滅空】による絶対防御を過信していたトレスリーには絶大な効果を発揮した。


「ぬぐぁ!!」

「よう、待ってたぜ!」

「き、【強固なる障壁】! ぶぐるふぁ!?」


 上半身を焼く痛みに堪らずキバのスキルの射線上から逸れようと横に飛び出したトレスリーの前には、拳を引き絞り待ち構えていたサンダージェノガイサの姿があった。そして、その姿を確認して放たれた鉄拳はトレスリーの腹部を捉えて水平方向へ打ち出した。


「ぶ、ぐっぞがああああ!!」


 油断していたとはいえ派手にダメージを負ったトレスリーだったが、まだ敗北するとは考えていなかった。コノミとキバの攻撃もダメージはあったが致命傷には遠く、サンダージェノガイサの攻撃も咄嗟の防御スキルが間に合った。粉々に粉砕されたとはいえかなりのダメージを軽減したことは間違いない。


「よう、また会ったな!」

「ぶぐるしゃあっ!?」


 あらゆるものを貫く砲弾と化していたトレスリーを、吹き飛ばされて数秒と経たず【浮遊】のスキルの力を借りて体制を整えようとしたところで更なる衝撃が襲った。何故かトレスリーを吹き飛ばした先で待ち構えていたサンダージェノガイサが拳を繰り出したのだ。

 先程の一撃とは違う、軽く小突く程度の一撃。【滅空】を無視するといっても強靭な肉体を持つトレスリーに通じるような攻撃ではない。だが、【剛力無双】を最大限発揮して渾身の力超重量の拳に込めた一撃によって猛スピードで吹き飛んでいたところに真逆の方向に殴られたのだ。その威力は、先の一撃とほぼ同等かそれ以上である。


 同じように全力で殴って魔王トリアを取り逃がしたジェノガイサが再び全力で殴ったのは、フィスタニスの力で先回りし、追い打ちを掛ける為であった。スウェイ達と立てた作戦でのとどめは別にある故に、二撃目は吹き飛ばないように配慮されている。

 その甲斐あってか、全身の骨が砕かれて深刻なダメージを負っていたトレスリーは倒れている状態で地面から少し上に浮いたまま、ゆるやかに空中を滑っていた。


 だが、流石と言うべきか、魔王トレスリーの肉体はすでに再生が始まっており、憤怒に突き動かされて立ち上がった。




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