表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/130

127話 VS魔王トレスリー 雷の驚異


「ジェノガイサ、もはや恐るるに足りぬのである! くらえぃ!」

「野郎、調子に乗りやがっぐうぁあ!!」


 トレスリーの操る黒球から放たれる雷がサンダージェノガイサの装甲を越えて内部にまでダメージを届かせる。状態を一切変えることのない【鋼の信念】というスキルによってトレスリーが持つ最大の脅威であるスキルに対しては無敵となっていたジェノガイサであったが、膨大な魔力によって放たれる赤黒い雷撃の前には無防備であった。


 サンダージェノガイサの備えるスキルの一つである【スキル遮断バリア】もその名の通りスキルは完璧に防ぐことが出来るが、純粋な魔法の前には意味を成さない。


 全身を焼く痛みで動きが止まったところをトレスリーは自慢の怪力で殴り飛ばした。ほぼ鉄塊と化しているサンダージェノガイサを吹き飛ばすその膂力は正に怪力である。


「くそっ!」

「負けを認めれば命だけは助けてやるのである」

「ふざけんな! 助けに来た息子を簡単に犠牲にするようなクズを見逃してたまるかよ!」


 地面を転がる前に【浮遊】のスキルで地面スレスレを飛びながら体制を整えて着地しながら勢いを殺すサンダージェノガイサに、トレスリーは余裕を取り戻した様子で降伏を促した。しかし、ジェノガイサは即座にこれを蹴った。


 魔王トレスリーは己を封印から魔王トリアから力の全てを奪い取り、そして吸殻同然となった彼をゴミのように投げ捨てた。身内ですらそのように扱う者が、人間をまともに扱うとはジェノにはどうしても思えなかった。だから、放っておけば世界中の女の子達に、いずれ出逢う運命の女性を傷つける可能性のある存在を野放しにすることは、例え分が悪くとも絶対に出来なかったのだ。


「ならば死ぬのである!!」


 ジェノの返答を聞いたトレスリーは自身に向かって走り出していたサンダージェノガイサの周囲を囲っていた黒球から雷を放つ。幾条もの雷は狙い通りにサンダージェノガイサの巨体に吸い込まれていき、


「そこだぁ!!」

「なにっ!?」


 弾けて消えた。


「っぐ・・・ちぃっ、しくった!」

「油断も隙も無いのである」


 トレスリーの雷の魔法を魔法防御力向上のお守りを【使い捨て】にして防いだサンダージェノガイサだったが、ダメージが災いして僅かに動きが鈍り、狙いも逸れてしまった。動揺していても近接格闘の経験の豊富なトレスリーはサンダージジェノガイサの拳を回避し、胸部装甲を蹴りつけてその反動で大きく距離を取ったのであった。


「どうすっか・・・」

「ふぅ、もう安易に近づくのはやめるのである」


 今の奇襲で捉えることの出来なかったジェノの落胆は大きかった。それでも目の前の魔王を倒す為に諦めるつもりはなかった。しかし、今の攻防で警戒度合を大きく上げたトレスリーは距離をとったまま再びサンダージェノガイサの周囲に黒球を集め始める。

 ジェノが魔法を防いだ方法をトレスリーは知らなかったが、回数制限もしくは連発出来ないことは何となく察していた。故に、防ぎ続けられない距離を保てば敗北はないと考えた。


 それは恐らく間違いではない。ジェノガイサが一人であったなら。しかし、彼には仲間がいる。


 両者の間を遮るように爆炎が炸裂した。


「くっ、目くらましであるか!」

「まったく情けないの。回復してやるからこれで頑張ってくるのだぞ」

『ジェノ殿、足が!』

「コノミ!? それにみんなもいつの間に・・・」

「駆け出しの冒険者一人に全部任せてたらウチの冒険者ギルドの名が廃れちまうからな」

「そうです。笑顔無限大、行きますよ!」

「「「応!」」」

「あと一息だぞ、頑張れジェノ!」


 サンダージェノガイサを淡い光が包み込む。その光が薄れる数瞬の間には、サンダージェノガイサのダメージは消え、体力は完全に回復していた。それどころか魔王トリアによって消滅した両足まで完治していた。


 もちろん、コノミだけではない。スウェイにネーコ、冒険者ギルドの面々。そしてジェノの相棒であるスプリ。展開してある【スキル遮断バリア】ごとジェノガイサに接近していたのだ。

 それはジェノを回復する為、そして、共に戦う為に。


「時間稼ぎにもならぬのである!!」

「ワタクシの攻撃があんなに簡単に・・・あんなの卑怯ですわ!」


 トレスリーを包み込むように発生していた爆炎は穴が空くように消えていきすぐに視界を遮るものがなくなってしまった。【空間転移門】のスキルによって開いたゲートから己の得意とする爆裂黒球という魔法を連続で叩きこんでいたフィスタニスが苛立ったような声を上げた。


 ジェノガイサに接触するための時間稼ぎが目的だったとはいえ得意技をあっさりとかき消されたフィスタニスとしては納得出来る光景ではなかったのだ。しかし、その活躍によってサンダージェノガイサは回復し、冒険者ギルドのメンバーと作戦を共有することが出来た。


「よっしゃあ! 頼むぜ、キバ! コノミ!」

「こちらこそよろしく頼むよ、ジェノ!」

「やっと我の出番だの!」


 サンダージェノガイサの背中部分はゴツゴツしており、足をかける場所には困らない。そこに冒険者ギルドの幹部である顔に大きな傷のある神官風の服に身を包んだ男、キバが立っていた。背中の装甲も少し変形してキバをガッチリホールドしており、ちょっとやそっとでは落ちそうにない。


 コノミは愛銃を両手で構え、サンダージェノガイサの右肩に腰かけている。同じく装甲に固定されている。


「一体何の真似であるか?」

「さぁて、第二回戦だ!」


 半ば呆れ気味のトレスリーを余所に、ジェノは高らかに宣言した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ