121話 鋼鉄武人サンダージェノガイサ
今回短いです。すみません
「いくぜ美少年、テッカイザーの恨み晴らしてやる!」
「そんな、消えないなんて有り得ないよ」
テッカイザーのパーツを装備して一回り大きく、サンダージェノガイサへと強化されたジェノガイサは宙へ浮かぶ魔王トリアへと地面を蹴って一直線に跳び上がる。魔王トリアはスキルで迎撃しようとするも、ジェノガイサが消滅するようなことは起きない。
テッカイジェットと同じくスキルが通用しないと分かると、魔王トリアはたまらず距離を空ける。空中を滑るように後退していくが、ジェノガイサはそれを許さない。
「逃がすかよ! サンダァァァァァパァァァンチ!!」
「ぐぶっ!?」
サンダージェノガイサの格パーツは、金属の塊であるためとてつもない重量を誇る。しかし、そのボディに宿った【浮遊】によって一時的に宙に浮いた状態にすれば、移動の際にその重量を感じさせなくすることが出来る。そして攻撃に移る時には【剛力無双】により強化された膂力でその超重量を叩きつけることで、無類の破壊力を実現できる。
まさに今ジェノガイサの軽やかな跳躍と豪腕で振るわれた鉄拳は、魔王トリアの周囲に張り巡らされていた【滅空】をものともせず、唸りを上げて魔王トリアを捕らえた。魔王トリアはピンボールのように勢いよく吹き飛び、自身を覆う【滅空】によって壁が消滅し叩きつけられることもなく穴を空けて壁の向こうへと消えていった。
「あーあ・・・」
「・・・やべぇ、思い切りやりすぎて逃がしちまった」
その光景を時間が止まったかのように呆然と眺めた後、ジェノの従魔であり相棒でもあるスプリの口からやってしまったなといった具合の呟きが漏れる。それに釣られるようにジェノも失敗を自覚して困ったような笑みをスプリに向ける。
スプリがその苦笑いを受けてしょうがないなと苦笑を浮かべると、テッカイザーのパーツがジェノガイサから分離し声が空中に響いた。
「ジェノ、オレガカタリカケラレルノハココマデダガ、イツデモトモニタタカウ。ヒツヨウナラバヨンデクレ」
「・・・ああ、ありがとな。オレ達はこれからも友達だ。これからも世話になるぜ、テッカイザー」
ジェノが戦闘機形態テッカイジェットに合体したパーツに言葉を返すと、テッカイジェットからうっすらテッカイザーのような姿をした光が立ち上って宙へ溶けて行く。やがて光が薄まると、テッカイザーは空間に空いた穴へと飛び込んで消えていった。
テッカイザーの魂は天へと昇っても、テッカイジェットはジェノの呼ぶ声に応え、空間を引き裂いて現れるだろう。ジェノは友の熱い魂を受け取り、次の戦いへと望む。
「とにかく追いかけないと」
「そうだな。けど穴が小さ過ぎんだろ」
魔王トリアが消えていった穴は小柄な魔王トリアが周りの壁を消滅させて出来た道である。つまり、魔王トリアが身体をくの字に曲げて通り抜けていって出来た穴なので大きさもそのままのサイズになる。スプリはともかくジェノガイサは四つんばいになって通れるかどうかであり、サンダージェノガイサの状態ではどう足掻いても追いかけることは不可能なのだ。
ジェノガイサならば四つんばいになればかろうじて追いかけることは出来るが、立つことも出来ない狭い場所で襲われればろくに身動きすら出来ないまま消される恐れもある。それは、どう考えても危険だった。
ジェノが悩みつつも行こうと口にしようとした時、突如空間に黒い穴が空いてそこから見覚えのある人物が降り立った。
「地上が大変なんですの。急いで、来てくださるかしら!」
それは、コノミの妹にして美女の姿に身を窶したドラゴン、フィスタニスだった。




