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102話 偉い人からの直々の依頼


「なるほど、つまりスウェイさんはサブマスターってことか」


 ようやく落ち着いたスウェイの説明を聞いたジェノが納得したように頷いてる。そう、なんと今話してる立派な腹筋を持つ男スウェイは、ギルドマスターではなかったらしい。じゃあギルドマスターはどこにいるのかというと。


「zzz」


 部屋の隅で寝てるお面の女性がギルドマスターなんだとか。マジか。とても話に聞いたような立派な人には見えないし、偉い人にも見えない。


「あれがうちのマスターのネーコさんだ。一日のほとんど寝てるし何かしててもいつの間にか寝てたりする。とにかく寝てるからギルドの業務は主だったメンバーで分担してこなしている」


「リベルタムのギルドマスターさんは会ったことなかったので私もスウェイさんがギルドマスターさんかと思ってました」


「あんな女の人がギルドマスターとは思わないって。さっきもロビーの方で寝てたし」


 スウェイがため息を吐いてからお面の女性、リベルタムのギルドマスターを紹介する。そんなに寝てるのか。ターナが素直な感想を言うから俺も便乗した。


「まぁ仕方ないな。分担してるとは言ってもサブマスターとして責任の大きな業務は俺が担当しているし。だが俺達はみんな猫さんに拾われた身だ、このくらい構わないさ。本人に言うと本気で起きなくなるから言わないがな」


 スウェイは苦笑を浮かべながらも、その表情は決してネーコを嫌っているようなことはなかった。むしろ言葉の通り好きでやってるんだろう。


「じゃあ、話で聞くこの街を作った人はそこのネーコさんなのか?」


「ああ、それは猫さんのことで間違いない。じゃなければこの街のギルドマスターになんてなれる筈もないからな」


 ジェノが確認するようにスウェイに問いかける。なんと意外なことにネーコがこの街を作ってギルドマスターになったっていうのは本当のことだったらしい。ジェノがビックリしてるけど俺もびっくりだ。


 ちなみに、スウェイの言う猫さんとはネーコのことだ。他のメンバーよろしくあだ名だそうな。よく寝てるし気まぐれで気分やでおっちょこちょいで名前も似てるから付けられたんだとか。適当な感じだけどあだ名ってそんなもんか。翻訳されてるだろうからまた微妙に違うんだろうし。


「猫さんも俺達もこの街の近くにある遺跡を調べに来た冒険者だった。そんな中猫さんが仲間を探してて、キャンプを作って、過ごす内に猫さんがどこからか冒険者を拾って来て、気付いたらこんなことになってた。あの人には不思議と人を引き寄せる何かがあるみたいでな」


 ほへー。人徳だけで街作ってギルドマスターなんて、実はすごいのかもしれない。『鉄壁』とか呼ばれてるSランク冒険者もネーコさんがどこからか連れてきた知り合いだったりして。


「すごい人なんですね」


「前はもう少しマシだったからな。今じゃほぼ寝てるし起きてても能天気すぎて仕事なんざ出来る状態じゃない。っと、本題からずれてしまったな。猫さんが連れてくる連中は癖があるやつらばかりだからな、困ったもんだ」


 ようやく本題に入れると気を取り直したスウェイに、思わず心の中であんたもその中の一人だよ、とそっとツッコんでおく。上半身裸で強靭な腹筋を見せ付けてあだ名が腹筋とか正気とは思えない。他の人達と比べても十分ぶっ飛んでるからな。


 ジェノは何も考えてないし、ターナはタンポポみたいに脳内も陽気だし、コノミは満腹になってネーコと一緒に寝てて何故かフィスタニスも一緒に寝てるから誰もつっこまないけど、自分だけマトモみたいな言い方をするんじゃない。まぁうちのメンバーも十分濃いけど。ちくしょう。


「本題と言うのは、実は最近遺跡で異変が見られているということでギルドから調査依頼を出した。条件がBランク以上の冒険者、もしくはCランク以上のパーティーとなっている。これを受注して欲しい」


「どうして態々オレ達に? 冒険者の街って言うくらいなんだからゴロゴロいるんじゃねぇのか?」


 ジェノの疑問も最もだ。俺も不思議に思うところだしな。毎日遺跡に潜ってるようなのが沢山いるんじゃないのか?


「それなんだが、依頼の内容が遺跡の最下層まで行くことなんだ。近頃安定した稼ぎさえあればいいと深くまで潜らない連中ばかりでな。下へ行くほど魔物や魔法の罠の何度が上がっていく遺跡の最下層に行きたがる奴はほとんどいないんだ」


「なるほど」


「コウロのギルドマスターが言っていた君達なら実力も十分だろうしな。俺達が行ければいいんだが仕事も溜まってるし猫さんは役に立たないし、主戦力は出払ってるところだ。王都を目指してることも聞いてるが、なんとか頼めないか?」


 スウェイの依頼にジェノはじっと黙り込む。どうするんだろう。俺としては願ったり敵ったりだから是非受けて欲しいんだけど。


「そもそもあの遺跡ってのはなんなんだ?」


「正直詳しくは分かってない。魔法具や素材の宝庫としか見なしてないから誰もが発見したアイテムの価値にしか興味を持ってない。独自に調べた結果では太古の神殿のようなものが何かの要因でダンジョン化したんじゃないかと推測している。そしてその何かが、最下層にあるんじゃないかとも」


 なるほどねぇ。ダンジョンっていうのは魔力が溜まったりして土地そのものがモンスター化したものだってターナが教えてくれた。だから成長もするし、特性としてモンスターを召喚することが出来るんだとか。あとは溜まった魔力で鉱石やアイテムを変質させて魔法的な価値を持たせる。


 それによって人間が入ってくるのを本能で知っているからだ。その欲に駆られた人間達を、魔法の罠や召喚したモンスターで殺して養分にする。そしてまた成長する。この世界のダンジョンはこんな感じの仕組みになってるらしい。


「よし、分かった。その依頼受けるぜ」


 しばらく考えたジェノは、はっきりとそう答えた。よっしゃきたこれ。それでこそ主人公だ。


「そうか、有難い。では早速遺跡の詳細を教えよう。参考にしてくれ」


 そうしてスウェイは既に分かっている情報を俺たちに教えてくれた。その中でもいくつかの情報は公にはされていないものや、噂の域を出ないものもあった。さくっとまとめよう。


 その遺跡、トゥルヌヴィス遺跡は、地下に広がる十階層からなる遺跡だ。発見した当初は実力が足らず四階層までしか調査することが出来なかったが、五年前に最下層である地下十階に到達した。何故そこが最深部なのかと言うと、厳密には最深部ではない。


 地下十階の奥には開けた空間があり、その奥には扉のような物があった。しかし、その前に3m程の金属製のゴーレムが置かれており、激しい戦闘になった。幸い犠牲者はいなかったがネーコがこれ以上進むのは危険だと判断して引き返した。そして、以後その向こう側の調査を禁じた。


 極稀にこの地下十階の大ホールへ辿り着いたものもいたが、いずれもゴーレムにズタボロにされてダンジョンから這い出てきた。そして危険な下層へ行くよりも、比較的安全な上層で狩りをすることを選んだ冒険者達は下層へ降りることはほとんど無くなった。


 冒険者ギルドを運営する側の冒険者、スウェイ達だけは定期的に大ホールまでの調査を行っていたが、成長するはずのダンジョンは依然変わりなく、扉の向こう側が更なる下層へと繋がっていてそこから先が成長し続けているのでは、という憶測も出ているらしい。


 そして異変というのは、最近ダンジョンでの死亡者が増えているとのことだ。いくら上層とは言っても危険なダンジョンに変わりはなく死人もそれなりに出るものなんだけど、それでも急激に増加してるらしい。

その原因究明を頼まれた訳だ。


 さて、とりあえずそのゴーレムとやらをぶっ潰してくればいいのかな?



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