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全員共通 早くも仲間割れ

ここは死神の世界“ニヴァエル”

天界や冥界、魔界や地界とも、人間界とも異なる孤立世界。

主に様々な世界の魂を管理する死神族が住んでいる。


「退屈、何か面白い事はおきないものか……」


私はケィクを口に運びながら、代わり映えのない日々に憂鬱になった。



蓮紅(ファンリィ)様、先代が及びです」


城仕えの女官が部屋の戸を叩く。


「お呼びかしらお婆様」


――――私の祖母は先代の“死王”だ。


死王とは古くから人間の魂を管理して来た死神族の長の事。


厄李(やくり)の屋敷までこの手紙を届けてもらいたいの」





厄李が一週ほど前に新たな王となり祖母は隠居したのだ。


私は華洋(かよう)族、向こうの城は東和(とうわ)族である。この城と彼等の屋敷は近くにありながら遠くにあるように感じる。


転生したことのない元来死神同士でありながら、家風は別れており仲はよくない。

婚姻も禁じられているほどで、それは魔力と妖力では、基質が合わないためらしい。

よろしくない考えが頭を過る。



祖母に言われた通り、東和族の屋敷に、手紙を届けにいく。


「何者だ!」

「華洋の姫、蓮紅よ」


首に下げた赤い石を見せる。


「はっ、失礼いたしました」


門番達は道を開く。


「死王様はいる?」


ただ厄李は死王、たとえ私が先代の死王の孫でも、そう簡単に会えない。



それにしても、東和の屋敷には初めてくる。

外観は華洋と似ていたが内部の作りはまったく違う。



「誰だてめぇは、服装を見るに華洋のモンか」

「貴方こそ、私を誰だと思っているの?」


「知るか、だから聞いてんだよ」

「なら貴方から名乗るのが東和の礼儀、でしょ」


「俺様は死長の息子‘サダル’だ」「私は‘蓮紅’先代死王の孫よ」


私が名乗ると向こうは押し黙った。


「お前が噂の……東和の屋敷になんの用だ」

「祖母に頼まれて手紙を持ってきたの」


噂とはなにか、気になるがここに来た経緯を簡潔に説明した。



「死王サマー失礼すんぜー」


サダルが戸を叩く。


「入れ」


戸を開くと長い髪の青年が緑の床に座っていた。

彼が新しい死王、細身で威厳が感じられない。


「失礼――――」


入ろうとすると、死王は向こうからこちらへ瞬時に移動した。


「靴は脱いでくれ」

「は、はあ……?」


なぜ床で靴を脱ぐのかわからない。


「用件は」

「祖母からの手紙を持って参りました」


私は袖口から封筒を取り出して彼へ近づく。


「待て、あまり私に近づかないほうがいい」


私は東和と華洋の混魂なのだが、華洋族で暮らしているのでそちらに傾いている。


「死王の気は強いからな、俺が受け取ろう」


王の補佐をする死長でありサダルの父親ハザルだ。


「お久しぶりです」


彼はお婆様が王のときにも補佐をしていて息子のほうとはほとんど会っていなかったが、よく知っている。


「ああ、しばらく会わない間に大きくなったな」


彼は手で小さかった頃の背丈を再現した。


「……それでは、私は失礼します!」


気恥ずかしくなり、さっさと封筒を手渡し、力を背と足に集中させながら窓から屋根へ飛び降りた。

久々にパン屋にでもいこう。私は軽快に靴音を鳴らしながら米仮異まで向かう


「おうおう嬢ちゃん金もってそうだなあ~」


粗野な男が絡んできた。

さて、どうしてくれようかしら。


「おらぁ!」



粗野な男が、私が手を下す前に地に伏した。


「パン屋とケンカすんなって、カーチャンに教わらなかったのか?」


パン屋のアルバイトの‘キクリヤ’が現れた。


「丁度よかった。キクリヤ、今日のおすすめは?」

「おーパン買いに来たのかファンリィ様!」


いつも購入しているドクロ型のパンと新作のコウモリ型のパンを買った。


気分よく帰宅する筈が――――――


「蓮紅、またパンなんて買っているの?」

「げっ」


幼馴染みで黄新キシン族の長の息子‘悪蘇あくそう

彼はプライドが高くやたら身分に固執している。

そして嫌みったらしいので私は苦手だ。


「ひどい」

「なんの用?」


黄新族は魔力を使う華洋、妖力を使う東和とは違い神力を使う一族。

華洋や東和、どちらとも婚姻ができるため、一族が多く存在する。

死神の夫婦は魔力もしくは妖力を七日七晩【魂錬成器】に与えつづけ、49日で子が誕生するものだ。


「特に用はないが、君が混魂でなければなあ……」


昔からやたらと言われてきたが、私は身分が高いので、彼の条件その1に合うらしいが、私は華洋と東和の魂の混ざった“混魂こんるい”なのでだめらしい。

華洋のみが理想らしいがそんなの私の知ったことではない。



私の母は華洋族でありながら東和族の父と婚姻した。

どういうわけか、私は産まれることが出来た。

両親は私が生まれたときに他界したらしい。


本来死神は、死王が死を命じるまで、死なないようになっている。

すべての魂の寿命を決めるのは死王だから。

両親の死因は詳しくは聞かされていない。

だが、もしかしたらそれは―――――


この世界では稀有で強い者が偉いのだ。



悪蘇は黄新一族の中でも力が弱い。

彼の母親が人から成る魂だからだ。


力のない人間界で死んだ人間の魂はこの世界でも突出した力を持たない。


ということで、彼が身分、純なる魂に拘るのはそういう理由だろう。


不必要に関わるのも面倒なので、私は瞬間移動した。



部屋に戻り、ゆったりしていると、窓が割れた。


「貴方は一体……!?」


紫の髪の男が狂った眼で私を見ている。



「―――――君を殺しに来た」


男から私と同等に強さを感じる。

殺すとは、どういうことだろう。


死は命を管理する死王が定めるもの。

この男がどんな力を持とうとも死なない。


私はなにを動揺したのだろうか。

人の世界で言う暗殺、毒殺、勢力争いはこの世界には無いからだ。


どんな立場にあるものでも、殺害による死など無い。

だから門番は在れ、警備などする必要はない。


けれど、勝手に私の部屋を荒らしたことは許せない。



「殺すなど、思い上がりも甚だしいわ」



私は窓から外へ飛び、無礼者を誘導した。



この世界には三つの死神一族があるが、男は三つの内のどの一族でも無い。

そんな気がしてならない。


生業とする力の雰囲気が、妖でも魔でも神でもないのだ。


それに紫の髪など見たことがない。

死神は赤や青や黄、希に緑で、人魂じんこんが黒髪や茶髪だ。


ということは他所の世界から紛れて来たのだろう。



「……なぜ逃げない」


男は濃紫色の槍を私に向けた。


「必要ないからよ」


目障りな槍を、短鞭ではじく。

暇だがこれ以上、遊びに付き合う気はない。



一羽の魂蝶こんちょうが、男に向かって飛んできた。

男はそれを軽々、槍ではじく。


死などないはずなのに、魂蝶が今にも息絶えそうになっているのだから、目を疑った。



「……その銀髪、赤に染めてやる」

「一体なにが……」


驚いている隙つかれた。

槍から飛ぶ衝撃波を私は避けられない。


それを打ち消すように、予期せぬ波動が起きた。


「やれやれ、敵前で油断はいけませんよ」

「……夂鎖ちぐさ先生!」


彼は私の教育係で、死長の弟。

今日は用事があるから来られない筈だったのに、どうしてここへ来たのだろう。



「先生、彼は何者なんでしょう

先ほど魂蝶があの槍に弾かれ、とうとう影も形もなく消えました」


「紫の髪……」


先生は何か知っている素振りだ。


「知っているんですね?」

「いえ、珍しいなと思って」


―――――oh。



「君はどういう理由があって、彼女に攻撃をするんですか」

「ボクはその人を殺さなくちゃいけない」


“しなければならない”


言い方が義務的、つまり誰かに命じられている。

彼の意思ではないのだろう。



「誰が私を殺すと?」

「それは――――――」


答えようとした男の首筋に、鎌が当てられる。


「よう、死王サマの庭でなにしてんだ迷子の犬っコロが」


その正体はサダル、恐らくは世界を管理する者の通達で駆けつけたのだろう。


「……ボクは命じられた通りやっただけ」

「お前ら紫化為しかい一族が朝日なんて浴びられると思うな」


「今は夕日ですけどね」

「先生、ここは彼に任せて、一先ずは城でお話を……」



後ろ髪をひかれるきがしたが、私はその場を去った。



城に戻ると、すぐに祖母からの呼び出しがあった。


夂鎖先生も共に話があるという。


「お婆様」


謁見部屋に入ると、4人の顔見知りがいた。


「あなたたち……」

「おう」

「ふん」

「よ、ファンリィさま」


サダル、悪蘇、キクリヤが声を発した。

そして、静に佇む死王の厄李までもがいる。



「集まって貰ったのは他でもないわ」


祖母が話しはじめた。



「蓮紅、このニヴァエルに、種族がいくつあるかわかるわね」

「華洋、東和、黄新の三つでしょう」


「ええ、そういうことになっているわね」

「……どういうこと?」



「わたしが納めていた5000年前くらいまではね、四の種族があったのよ」

「……え?」


私だけでなく、他の皆も驚いている。



「さっき、あなたを襲った者がいたわね」

「ええ」


「髪はどうだった?」

「紫だったわ」


「そう、それが葬られた“紫〈し〉一族”

彼らは5000年前、ある大戦をきっかけに、存在を葬られてしまったの」


5000年、私もこの世界に長く存在しているけれど、到底届かない年数。



「彼等は私たちに強い恨みを持っている

そして二度、全ての世界を巻き込む

大戦が起きようとしているの」


「……その先は言わなくてもわかっているわ

私が紫一族をなんとかすればいいんでしょう?」


「そう、この世界を護れるのは若く、そして強さを持つあなたたちよ」


「つーことは、俺様も戦うんだな?」

「しかたないな、僕のピストルを愚か者に喰らわせにいこう」

「よし、いっちょパン生地をぶん殴りにいくか」


「さっそく敵の所に乗り込むわ!」

「蓮紅さん、まずは準備をしないと」


「先が思いやられるな……」


====


「先代、次の星大戦〈スターダストラグリオン〉をどうするか」

「あらもうそんな時期なの?」

「早いものだ。揃った役者は黒の妖精姫、魔女姫、刀姫〈とうき〉、星救世主〈プラネター〉、全界の覇者ラウル……」

「それにマーベルやエルタノルタも目覚めたようね」


「いくらなんでも早すぎる」

「そうね大魔女神マデェールが目覚めれば戦いが再びおきるでしょう」


「影の一族を仲間にすれば、あるいは……」

「はたして彼等が戦力になるかしら」


========



「おいテメー!」

「……なんだ貴様、僕にぶつかっておいてその態度は」


サダルの肩が悪蘇の肩にぶつかり、一触即発のようだ。


おそらく両者は初対面なのだが、遠慮なくガンをつけている。



「ちょっと二人とも、これから私達は仲間として敵を倒すんだから、喧嘩なんてしないで」


「お前は黙っていろ!」

「なによやる気!?」

――――ついつい私もカッとなってしまった。


「はいはい、皆さん死王様の御前ですよ。お静かに」

夂鎖先生が手を叩き、我に返る。


私たちは種族が違うので皆バラバラだ。


本当にやっていけるだろうか―――――


◆誰と組もう?


【サダル】

【悪蘇】

【キクリヤ】

【夂鎖】

【死長】

【一人で】

【やっていけない】

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