3.暖炉
小さな手が、その家の戸をたたいた。
風の音にまぎれそうな小さなノック。
それでも、おばあさんは小さなお客に気付いて、肩にリスとスズメを乗せて、戸を少し開けた。
戸をたたいたのは、ウサギだった。
木の上では、白いカラスがウサギを見ていた。
雪に埋もれて誰もカラスに気付かない。
戸をたたいたウサギが頼んだ。
「おばあさん、こんばんは。あたたかいおうちへ、いれてください」
「そうかい。じゃあ、薪を持っておいで。そしたら入れてあげるよ」
ウサギは森へ走り、おばあさんは戸を閉めた。
しばらくして、ウサギはおばあさんの指の太さの小枝を一本、くわえて戻った。
おばあさんはウサギを家へ入れた。
ウサギはおばあさんの膝の上に乗って、暖炉にぬくぬくあたった。
一本の小枝をくべると火は赤々と燃え、薪はパチパチ音を立てた。
おばあさんは、毛糸と編み棒を手に取って、編み物の続きをした。
木の上では、白いカラスがウサギを見ていた。
雪にまぎれて誰もカラスに気付かない。
しんしんと、更ける冬の夜、しんしんと、凍える森。
ぐぐぐっと、冬芽は閉じて、もくもくと、耐える樹。
あかあかと、灯る家の灯火、あかあかと、燃える炉。
ぬくぬくと、互いに持寄る。あたたかな家の楽しみ。
◆
灯の漏れる窓をコツコツコツと叩く者があった。
おばあさんが雪に埋もれた窓を見ると、ヤマバトが一羽、ふるえていた。
木の上では、白いカラスがヤマバトを見ていた。
雪に埋もれて誰もカラスに気付かない。
ヤマバトは小さなくちばしで、この家の窓をたたく。
風の音にまぎれてしまいそうに小さなノックだった。
おばあさんは小さなお客に気付き、肩にリスとスズメを乗せ、ウサギをだっこして、窓辺に立った。
窓をたたいたヤマバトは頼んだ。
「おばあさん、こんばんは。あたたかいおうちへ、いれてください」
「そうかい。じゃあ、薪を持っておいで。そしたら入れてあげるよ」
ヤマバトは森へ飛び、おばあさんは暖炉の前の椅子に戻った。
しばらくして、ヤマバトは小さな箒のような柴の小枝を、くわえて戻ってきた。
おばあさんはヤマバトを家へ入れた。
ヤマバトは、おばあさんの肩にスズメと仲良く並んで、暖炉にぬくぬくあたった。
小さな箒のような柴の小枝をくべると火は赤々と燃え、薪はパチパチ音を立てた。
おばあさんは、カゴから毛糸と編み棒を出して、少し進んだ編み物の続きをした。
木の上では、白いカラスがヤマバトを見ていた。
雪にまぎれて誰もカラスに気付かない。
みんなでぬくぬく、暖炉を囲み、おばあさんの編み物を見る。
みんなでぬくぬく、火が赤々と燃え、薪はパチパチ音が鳴る。
みんなでぬくぬく、それぞれの薪で、ぬくもりを分かち合う。